コラム

小さく生んで大きく育てる ベトナムM&A投資の特徴

渡邊 大晃

プロフィール

渡邊大晃

Nihon M&A Center Vietnam Co., LTD (ベトナム現地法人) 代表 General Director

海外M&A
更新日:

⽬次

[表示]

本記事では、ベトナムでのM&Aの特徴と代表的な課題について解説します。

(本記事は2022年に公開した内容を再構成しています。)

比較的に小粒である、ベトナムM&A案件

ベトナムのM&A市場は、ここ数年は年間平均300件程度で推移、Out-Inが全体投資額の約6~7割を占め、その中で日本からの投資件数はトップクラスです(2018年:22件、2019年:33件、2020年:23件)。

興味深いことに、1件当たりの平均投資金額を見てみると、日本企業からの投資額は他のASEAN諸国と比較しても小さいことが分かります。3桁億の投資金額が当たり前である欧米企業の買収案件と比較すると、大企業でなくても手が届く範囲かと思われます。

ベトナムでのM&Aは10年後の業界トップへのチケット

ベトナム企業への投資はなぜ小粒なのか

ベトナム現地企業が比較的に小粒であるのは何故かというと、1975年ベトナム戦争終戦、1986年のドイモイ政策(市場経済導入)を経て、2000年に初めて証券市場が誕生し、ようやく資本主義が芽吹いた歴史的な背景を無視できません。
民営企業の歴史が短い分、第二次世界大戦後に生まれた財閥が巨大に成長して全て独占してしまう東南アジア特有の弊害がなく(集約化も進まない弊害もありますが…)、各業界トップ企業の規模は比較的に小さく、その分成長性があるのが特徴です。

ベトナム企業に投資して「勝ち馬」に乗る

言い換えると「日本の中堅クラスの企業でも、現地市場のリーディングカンパニーに投資する機会がある」というのがベトナム市場です。
若い経営陣に率いられた伸び盛りの有力企業に、日本から資本・ノウハウ・ブランドを補完し、その成長を加速させるM&Aは、異国の地でローカル市場を一気に取りに行くという有効な手法だと思います。

海外M&Aを成功させるためには「勝ち馬に乗る」のがポイントです。
日本M&Aセンターが過去にご支援したM&A案件は、業界10番手未満の勝ち組企業に出資するケースが目立ちます。
実際に早くも出資後2年間で、出資先が売上80億円から150億円に拡大して、業界No.1になったという大変うれしい声も届いております。

経済成長の著しいベトナムでは、年率10~15%の成長するのが当たり前です。
良い投資先を見極めることができれば、現地でNo.1を狙うことも夢物語ではありません。ベトナムM&Aは、これからますます面白いタイミングを迎えることを確信しています。

ベトナムM&Aの三大難関

ベトナムM&Aの魅力についてお話してきましたが、特有の難易度があります。最初に気を付けるべきリスクポイントは2点。
それは決算書の透明性(税務リスク)、そしてコンプライアンス問題です。

決算書の透明性

決算書問題ですが、上場企業でない限り、二重帳簿(管理用と税務用)どころか、三重帳簿(前述の二帳簿に加えて銀行提出用の帳簿)が一般的です。
買収監査の実施、また事業評価をするにあたり、そもそもどの決算書を正として行うのかということのスタートから論点となります。

コンプライアンス

一方コンプライス面でも、日本と大きく異なる法制度(そしてそのあいまいな運用)、および現地特有の商習慣も相まって問題は山積みです。
こちらも現地事情に詳しい専門家との助言を受け、入念な対応が必要となります。

競争環境

また3番目の論点としてリスクの観点からは異なりますが、ベトナムM&Aの競争環境が激しいことが挙げられます。
ベトナム市場自体の注目度の高さとあいまって、具体的に譲渡対象会社との交渉を始める前に、オファーの金額条件面だけで足切りされてしまうことが多々あります。
日系企業はもちろん、海外企業も非常に積極的ですので、優秀なアドバイザーと入念に打合せを行い、金額提示方法はもちろん買収当事者自体の魅力を伝えるプレゼンを準備して、まず国内予選(日本企業同士の競争を)通過することが交渉のスタートなります。

日本M&Aセンターの海外・クロスボーダーM&A支援

日本M&Aセンターでは、中立な立場で、譲渡企業と譲受企業双方のメリットを考慮にいれたM&Aの仲介を行っております。また、日本企業による海外企業の買収(In-Out)、海外企業による日本企業の買収(Out-In)、海外企業同士の買収(Out-Out)も数多く手掛けてまいりました。
海外進出や事業継承に関するお悩みはいつでもお問い合わせください。

「海外・クロスボーダーM&A」って、ハードルが高いと感じていませんか?  日本M&Aセンターは、海外進出・撤退・移転などをご検討の企業さまを、海外クロスボーダーM&Aでご支援しています。ご相談は無料です。

『海外・クロスボーダーM&A DATA BOOK 2023-2024』を無料でご覧いただけます

データブック表紙

中堅企業の存在感が高まるASEAN地域とのクロスボーダーM&Aの動向、主要国別のポイントなどを、事例を交えて分かりやすく解説しています。
日本M&Aセンターが独自に行ったアンケート調査から、海外展開に取り組む企業の課題に迫るほか、実際の成約データを元にしたクロスボーダーM&A活用のメリットや留意点もまとめています。

プロフィール

渡邊 大晃

渡邊わたなべ 大晃ひろみつ

Nihon M&A Center Vietnam Co., LTD (ベトナム現地法人) 代表 General Director

大手化学メーカーを経て、2004年日本M&Aセンターに入社。2010年以降、海外M&A業務(東南アジア、米国、中国、インド等)に従事。2019年ベトナム法人設立に伴い、同代表に就任。上場未上場企業のM&A支援実績多数。米国公認会計士(USCPA)、英ノッティンガム大学修士(MBA)。

この記事に関連するタグ

「海外M&A・クロスボーダーM&A」に関連するコラム

インドネシアM&AにおけるPMIのポイント

海外M&A
インドネシアM&AにおけるPMIのポイント

本記事では、クロスボーダーM&Aで最も重要であるPMIについて、インドネシアの場合を用いてお話しします。(本記事は、2022年に公開した記事を再構成しています)M&Aのゴールは“成約”ではありません。投資側の日本企業と投資を受ける海外の現地企業両社が、思い描く成長を共に実現できた時がM&Aのゴールです。特にインドネシア企業とのM&Aは、他のASEAN諸国と比較しても難易度は高く、成約に至ってもそれ

海外M&Aとは?目的やメリット・デメリット、日本企業による事例まで解説

海外M&A
海外M&Aとは?目的やメリット・デメリット、日本企業による事例まで解説

近年アジアなど成長著しい市場をターゲットに、海外M&Aを検討する中堅・中小企業は増えております。しかし、海外M&Aでは日本国内で実施するM&A以上にノウハウが不足していることが多く、海外M&Aを実施するハードルが高いと言わざるを得ません。そこで本記事では、日本M&Aセンター海外事業部の今までの経験を踏まえて、海外M&Aの内容や実施される目的、またメリットや注意点・リスクなどさまざまなポイントについ

タイでM&Aを検討する際に留意すること

海外M&A
タイでM&Aを検討する際に留意すること

本記事ではタイでのM&Aにおいてよく問題となる、タイ特有の留意点について解説します。(本記事は2023年2月に公開した内容を再構成しています。)※日本M&Aセンターホールディングスは、2021年にASEAN5番目の拠点としてタイ駐在員事務所を開設、2024年1月に現地法人「NihonM&ACenter(Thailand)Co.,LTD」を設立し、営業を開始いたしました。タイ王国中小企業M&Aマーケ

ベトナムM&Aの競争環境 引くてあまたの現地優良企業を獲得するには

海外M&A
ベトナムM&Aの競争環境 引くてあまたの現地優良企業を獲得するには

Xinchào(シンチャオ:こんにちは)!本記事では、ベトナムでのM&A投資における問題のひとつ、「厳しい競争環境」に関してお話させて頂きます。(本記事は、2022年11月に公開した記事を再構成しています。)独占交渉権とは「独占交渉権」とは、買手である譲受企業と売手である譲渡企業との間で、一定の間に独占的に交渉することができる権利の事です。一般的に買収ターゲット企業の選定後に、初期的な面談(対面/

海外M&Aにおける買収監査/DDチームの選び方

海外M&A
海外M&Aにおける買収監査/DDチームの選び方

本記事ではM&Aにおける終盤ステージである買収監査(デューデリジェンス)における留意点について解説したいと思います。ASEAN・中小M&Aにおける買収監査(デューデリジェンス)M&Aのプロセスでは基本合意契約を締結した後、最終契約に至る準備段階として買収監査が行われます。内容や期間はディールの規模や複雑性によって様々ですが、一般的に財務・税務・法務について専門チームに依頼します。また、場合によって

クロスボーダーM&Aにおける株式譲渡契約書の基本

海外M&A
クロスボーダーM&Aにおける株式譲渡契約書の基本

本記事では、クロスボーダーM&Aのスキームとして一般的な株式譲渡の場合に締結される株式譲渡契約書(英語ではSPA、SharePurchaseAgreementやStockPurchaseAgreementと表記されます。)について解説します。株式譲渡契約書(SPA)の一般的な内容一般的な株式譲渡契約書は概ね以下のような項目で構成されていることが多いです。売買の基本事項クロージング及びクロージング条

「海外M&A・クロスボーダーM&A」に関連する学ぶコンテンツ

「海外M&A・クロスボーダーM&A」に関連するM&Aニュース

ルノー、電気自動車(EV)のバッテリーの設計と製造において2社と提携

RenaultGroup(フランス、ルノー)は、電気自動車のバッテリーの設計と製造において、フランスのVerkor(フランス、ヴェルコール)とEnvisionAESC(神奈川県座間市、エンビジョンAESCグループ)の2社と提携を行うことを発表した。ルノーは、125の国々で、乗用、商用モデルや様々な仕様の自動車モデルを展開している。ヴェルコールは、上昇するEVと定置型電力貯蔵の需要に対応するため、南

マーチャント・バンカーズ、大手暗号資産交換所運営会社IDCM社と資本業務提携へ

マーチャント・バンカーズ株式会社(3121)は、IDCMGlobalLimited(セーシェル共和国・マエー島、IDCM)と資本提携、および全世界での暗号資産関連業務での業務提携に関するMOUを締結することを決定した。マーチャント・バンカーズは、国内および海外の企業・不動産への投資業務およびM&Aのアドバイス、不動産の売買・仲介・賃貸および管理業務、宿泊施設・飲食施設およびボウリング場等の運営・管

マイナビ、インドのHRスタートアップ企業Awign Enterprises Private Limitedを買収

株式会社マイナビ(東京都千代田区)は、ギグワーカーのリソースを活用して顧客へ成果物を提供するインド企業のAwignEnterprisesPrivateLimited(インドバンガロール、以下Awign)を2024年4月25日付けで買収し、子会社化した。マイナビは、社会や人々の有益となるようなサービス提供を目指した事業を展開している。Awignは、単発の仕事を請け負う労働者(ギグワーカー)が集うプラ

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース