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コロナ禍でも上場申請を選択できる 注目の株式市場“TOKYO PRO Market”とは

雨森 良治

株式会社日本M&Aセンター 上席執行役員 成長戦略事業部長/ 株式会社ネクストナビ 代表取締役社長

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2020年4月28日に、株式会社エージェント(以下、「エージェント」)という会社が「上場企業」の仲間入りを果たしました。

エージェント渋谷オフィスにて自主企画の上場セレモニーの様子

上段:日本M&Aセンター、下段:エージェント(中央:四宮社長)
注:撮影の直前まで全員マスクを装着しております。

本来であれば東京証券取引所(以下、「東証」)で大々的な上場セレモニーが行われるのですが、緊急事態宣言が発令され、東証への入館ができなくなってしまったため、“密”にならないよう最大限配慮しながら、エージェントの渋谷オフィスにて自主企画の上場セレモニーを開催。記念すべき上場を、ささやかながら、お祝いさせていただきました。

一般市場の相次ぐ上場申請の取り下げ

新型コロナウィルスの感染拡大によって、上場申請を取り下げる会社が3月から増えはじめ、4月末時点では累計約20社の取り下げが発生しています。 その原因は、やはり、株式市況の悪化-。 マザーズやJASDAQ、東証1部・2部といった一般市場へ上場する場合には、株式の売出や公募といった「株主からの資金調達」を行わなければなりません。そのため、株価が下落傾向にあるときには上場を控える傾向にあります。 この前例のない市況下で上場するのは“狂気の沙汰”だ、とおっしゃる経営者の方もいらっしゃいます。

“株価”を気にせず上場できるTOKYO PRO Market

一方、同じく東証が運営する“TOKYO PRO Market”では、予定していたスケジュールどおりの上場が実行されています。 「なんで、上場申請を取り下げないの?」 「TOKYO PRO Marketって、聞いたことないけど?」

東証が運営する株式市場の構成の図

東証が運営しているTOKYO PRO Marketは公開されている株式市場でありながら、上場の際の資金調達を行わないことが認められているのです。そのため、“株価”を気にせずに、上場することができます。もしかしたら、「資金調達ニーズはあまりないけれど、上場企業として信頼性を上げ、箔をつけたい」という会社には最適な市場と言えるかもしれません。 実際、東証が行った上場を果たした経営者へのアンケートでは、上場の目的・実感した効果ともに、第1位は「知名度や信頼度の向上」、第2位は「人材の確保」、第3位は「社内管理体制の強化」でした。 上場のメリットは資金調達以外のところに多くあります。それなのに、「株価がつかないから」と、上場のタイミングを先延ばししてしまうのは、とてももったいないと思っています。

将来の成長するために最適なTOKYO PRO Market

いったんTOKYO PRO Marketへ上場して、上場企業としてのメリットを享受しながら成長に加速をつけ、株式市況を見ながらマザーズ・JASDAQなどの一般市場へ市場変更する。TOKYO PRO Marketと一般市場で求められている実質基準(上場適格性要件)は基本的に同じです(※)ので、決して回り道ではありません。 東証も「TOKYO PRO Marketで経験を積んで、マザーズ・JASDAQ、東証1部・2部へステップアップしていってもらいたい」とコメントしています(2019/7/26東京証券取引所で行われた当社J-Adviser資格獲得セレモニー後の記者会見にて)。 (※)形式基準と言われる、利益の額や純資産、時価総額、株主数や流通株式数といった要件は各株式市場によって異なります。 いま、今後の会社の方向性について、多くの経営者の皆様が思案されていると思います。 景気や市況に左右されずに、将来の成長のための土台を作っておく。 それを可能にする、TOKYO PRO Marketへの上場を是非、貴社の企業戦略としてご検討ください。

別のコラムにて、今回上場された株式会社エージェントの四宮社長のインタビュー動画を掲載しております。 そちらも併せてご視聴ください。

「新・企業ステージアップサービス」提供開始。

日本M&Aセンターは、企業のステージアップの第一歩=TOKYO PRO Marketへの上場のための審査および、上場後のモニタリングや助言・指導を行うプロフェッショナル「J-Adviser」の資格を取得。
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著者

雨森 良治

雨森あめもり 良治よしはる

株式会社日本M&Aセンター 上席執行役員 成長戦略事業部長/ 株式会社ネクストナビ 代表取締役社長

西日本を中心に13年間M&Aを通じた事業承継の支援を行ってきた西日本を代表するM&Aプレーヤー。100件を超えるM&A成約実績を有する中で特に買い手企業のアドバイザーを務めるうちに、企業の成長戦略についてM&Aに続く支援ツールが必要であることを痛感。米国公認会計士(USCPA)ホルダーでもあることから非証券会社でも出来る上場支援を模索していたところ東証の新しい株式市場であるTOKYO PRO Marketに出会う。2019年7月に当社がJ-Adviser資格取得、2020年よりTPM上場推進の統括責任者として、全国の中小企業や会計事務所、金融機関向けにTPM上場啓蒙活動から上場準備支援活動に至るまで精力的にこなしている。現状50社程度の上場企業数だが、2030年には現マザーズ市場を上回る1,000社上場している成長市場に育てるべく様々なプロモーションを実施中。2023年4月より現職。

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