[M&A事例]コロナ禍でも業績好調な創業60年のWeb制作会社が譲渡した理由

株式会社エスケイワード

譲渡企業情報

  • 社名:
    株式会社エスケイワード(愛知県)
  • 事業内容:
    Webソリューション、クロスメディア事業、マルチリンガル事業
  • 売上高:
    約5.8億円(2022年1月期)
    従業員数:
    49名

愛知県名古屋市に本社を置く株式会社エスケイワードは、主にWeb制作を手掛ける会社です。戦略立案から構築、運用まで一貫で制作できる体制をもち、大手企業や官公庁との取引など豊富な実績があります。「個が輝き、調和を育む器であり続けます。」を経営理念に、人を大切にする社風で従業員の定着率も高く業績好調だった2021年12月、レンタルサーバー事業を中核事業とする京都のカゴヤ・ホールディングスに譲渡しました。現在もエスケイワードに残り経営の陣頭指揮を執る加藤啓介社長に、M&Aで目指す会社のビジョンをお聞きしました。

譲受け企業インタビューはこちら

(左)カゴヤ・ホールディングス株式会社  代表取締役 北川 貞大 様|(右)株式会社エスケイワード  代表取締役社長 加藤 啓介 様

(左)カゴヤ・ホールディングス株式会社 代表取締役 北川 貞大 様
(右)株式会社エスケイワード 代表取締役社長 加藤 啓介 様

「オーナー」の役割を第三者に委ねることで
「経営」に専念できる環境に

――1963年に印刷物の制作会社として創業されましたが、時代とともにニーズが印刷物からインターネットへと変わっていく中で、事業を現在の形へとシフトされましたね。

譲渡企業 株式会社エスケイワード 加藤様: IT技術の発展に合わせて印刷からWebメインに仕事は変わってきましたが、「言葉」と「デザイン」へのこだわりは変わりません。この2つの要素を戦略的に組み合わせることで、クライアント企業のコミュニケーションの価値向上に貢献してきました。

――コロナ禍でも需要を掴み業績好調のなかでM&Aを検討された理由をお聞かせください。

加藤様: 一番は自分の年齢と、社長としての年数です。60代になって社長としても30年近くが経過していました。自分の代で終わるのならずっと経営を続けていればいいと思いますが、会社は残していかなければなりませんし、さらに成長できる環境で次につなげていくことが重要だと思っていました。
日本M&Aセンターと提携仲介契約を結んだのは2021年ですが、次の代をどうするかということ自体を考え始めたのは5年ほど前からです。
選択肢としては、M&Aか社内で後継者を立てるかのどちらかだと考えていました。最終的にM&Aを選択したのは、自身の経験から「経営者」と「オーナー」の2つの役割を社内の誰かに託すのは負担が大きすぎると思ったからです。

<M&A スケジュール>

提携仲介契約の締結
2021年4月12日
TOP面談
2021年10月22日
基本合意契約の締結
2021年12月3日
最終契約日
2021年12月27日

――「経営者」と「オーナー」はどう違うとお考えでしょうか。

加藤様: 一番は責任の範囲が違います。これは私の考えですが、「経営者」の使命は業績にコミットメントして利益を最大化することです。先見性をもって事業の方向性を指し示さなければいけません。一方、「オーナー」は従業員の生活を守ることが使命です。そのためには給料を払い続けなければいけない。お金の工面をし、どこに投資すればいいかの判断も必要です。いずれも大きな責任を伴いますし、特に時代の変化が激しい中でこの2つの役割を1人で担うのは非常に難しい。そうであれば「オーナー」の役割は第三者に委ねようと、M&Aという結論に至りました。

――M&Aにどんなイメージをお持ちでしたか。

加藤様: 検討を始めた当時、どちらかというとマイナスのイメージを持たれている方のほうが周囲には多かったですね。後継者がいないからするもの、経営が非常に厳しい局面でするもの、といったイメージだったと思います。
ただ、私は最初からそうではなく、M&Aは会社の成長戦略の一つという認識でした。ですから、いい条件で交渉ができるよう、会社が成長基調で利益も出ているときにM&Aを決断しようと思っていました。そのタイミングが今回だったということです。
本当に経営が苦しくなってからのM&Aは、どうしても立場が弱くなってしまいます。そうならないために、事業分野も含め自社を最大限成長させておく努力は必要だと思って経営をしてきました。

自社の強みを発揮し続けるため
条件にこだわる

――相手企業に求める条件も明確におありだったのでしょうか。

加藤様: 最も重視したのは、当社を理解し尊重していただけるかどうかという点です。それは、従業員が変わらない環境で働けるということでもあるからです。そういう意味では、まったく違う業種は合わないと思っていました。M&Aによってシナジー効果が出なければ、M&Aをする意味がありませんから、当社が強みを発揮しやすい環境は重要です。逆に譲渡価額にはこだわりすぎないで検討を進めました。

――マッチング時には200社近い企業がリストに上がりました。まさにこれまでの経営努力の結果だと思いますが、どのように絞り込みを行いカゴヤ・ホールディングスに決められましたか。

加藤様: シナジーが生まれるかどうかでだいぶ絞り込みはしましたが、カゴヤ・ホールディングスに決めた最終的な決め手は実は直感です。どんな会社か説明を受けながら直感的に「この会社かな」と思ったんです。その後、北川社長に何度かお会いしましたが、最初に感じた通りの相手でした。私たちのことを非常に尊重してくださり、こちらの条件をすべて受け入れてくれました。

担当営業の岡部さんの存在も大きかったですね。岡部さんは、当社の成長や私の考えを深く理解した上で、より良いかたちでM&Aが実現するように当社に寄り添った交渉を進めてくれました。

社員の多様性を認め合う文化を育み、健康経営にも積極的に取り組む

社員の多様性を認め合う文化を育み、健康経営にも積極的に取り組む

――交渉を進める上で特に希望したことはありますか。

加藤様: 2つあります。1つ目はカゴヤ・ホールディングスの役員に加わることです。私が一番こだわったのは、M&A後も会社の独自性が保たれるかどうかです。今は方向性が一致していますが、ホールディングスの方針が未来永劫、絶対に変わらないとは言い切れません。そういう機会はないと思いますが、私が役員に入っていれば状況に応じて交渉もできます。このような希望をする人は多くないかもしれませんが、北川社長に快諾いただけて、私にとっては最終決断の大きな後押しになりました。

2つ目は当社のキーパーソンである優秀社員の継続雇用を条件として明記したことです。彼は入社以来営業の第一線で活躍している役員です。彼が抜けてしまえば大きな戦力を失うことになり、M&Aも成立しないだろうというほどの人材です。 当社は人がすべてなんです。M&Aによって離職者が出たということでは、企業の価値も変わってしまいます。ですから、彼にM&Aのことを伝えるときは非常に気を配りましたし、カゴヤ・ホールディングスに対しても彼が重要人物であることを伝えました。

新たなビジネスを見込むVR事業に
本格参入するきっかけができた

――2021年12月の最終契約締結から半年以上がたちました。社内外でどんな変化が起きていますか。

加藤様: 社内の業務環境については条件の通りで基本的には変わっていません。社長も交代していませんから取引先の動揺もありませんでした。むしろエスケイワードの仕事の幅が広がったと好意的に受け止められましたね。
新しい取り組みとしてはVR事業を始めました。今メタバースが注目されていますが、デジタルコミュニケーションが多様化し、仮想空間でのコミュニケーションが普及する可能性もどんどんひろがっています。新たなビジネスを見込んで当社も進出したいと思っていたんです。そんな時に北川社長から紹介いただき、著名な現代美人画の画家のVR展示会の制作機会を得ました。VR事業を本格的にビジネス展開するきっかけができたと思います。

――経営面はいかがですか。

加藤様: 特に経営面では非常にメリットを感じています。グループが関係する経営コンサルティング会社から社外取締役を迎えることで、管理体制を強化しました。業績や採算性、従業員の稼働率など、これまでチェックが甘かった部分もしっかり見るようになりました。
また、これまでは年に一度開催するかどうかだった取締役会も毎月開くようになり、チームで経営する体制ができてきました。これまではオーナー経営であらゆることを一人で決めていましたが、M&Aで新しい風が吹き込んだことで、利益を出す大切さや経営そのものを考えさせられましたね。

――最後に今後のビジョンをお聞かせください。

加藤様: カゴヤ・ホールディングスには当社のほか、業種の異なる5社(インタビュー時)が一緒になっています。個別にではなく、グループとして当社がどうシナジーを発揮していくかを考えていかなければなりません。これだけさまざまな条件を受け入れていただきましたので、よりグループのために貢献しようという強い気持ちで日々、経営をしています。

2022年1月5日の成約式では苦楽を共にしてきた奥様へ加藤社長から感謝の花束が贈呈された

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こちらのM&A事例インタビューは動画でもご覧いただけます。

日本M&Aセンター担当者コメント

西日本事業法人部 チーフ 岡部 諒平
(株式会社エスケイワード様担当)

西日本事業法人部 チーフ 岡部 諒平(株式会社エスケイワード様担当)

加藤社長はお父様が創業された欧文写植事業を行う企業を承継され、デジタルコミュニケーションを主力事業として行う現在の形へと第二創業されました。

当該業界は営業における切り口と、それを通じて得られた直接取引のお客様が重要で、企業の収益性に直結しますが、エスケイワードは大企業向けの「デジタルコミュニケーション支援」という切り口で、大手企業や官公庁などの優良顧客を獲得し、高収益を維持されてきました。
その中で成長戦略として資本戦略を検討され、「よほどいい相手がいれば」というお言葉通り、非常にこだわって相手先を選定されました。

結果的にご自身が代表取締役を継続することで独自性を維持し、親会社の役員にも就任してグループの経営にも携わるという非常に稀な形かつ、弱みであったインフラ面の強化も実現できる最良のお相手とのマッチングが実現できたと思います。

※役職は取材時

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