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人材確保に効く対策とは?人材採用・定着のポイントを解説

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人材確保
現代の日本社会が直面している最も深刻な課題のひとつが、少子高齢化です。少子高齢化は労働市場において供給不足を引き起こし、これが企業の人材確保を難しくしています。

しかし、人材確保が難しくなっているのは、これだけが理由ではありません。労働者の就業意識の変化や企業が求める人材がより高度になっていることなどをはじめ、さまざまな要因が複雑に絡み合った結果、多くの企業で人材の確保が難しくなっています。こうした傾向は特に中小企業に顕著に現れており、人材確保が思うように進まない結果、存続の危機に直面する企業も少なくありません。

本記事では、人材確保が困難になっている社会的背景を簡潔に整理したうえで、必要な人材を確保して定着させるための方法や注意すべきポイントについて解説します。

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人材確保できている会社、できていない会社の違い

中小企業の多くが現在抱えている問題は、「人手不足」に加え「人材不足」と言えます。
人手不足とは、単に働き手が足りない状態を表すものです。これに対し人材不足とは、「企業が求める業務に必要な能力やスキルを持った人材が不足している状態」を表します。

つまり、目まぐるしく変化する市場環境に対応するための業務改善や、事業の再構築に取り組むにあたり、事業や職務を遂行できる能力やスキルを持った人材が確保できないことが問題の本質です。

しかし、同じ中堅・中小企業であっても、求める人材の確保に成功している会社も数多く存在しています。
こうした会社は、人材確保に苦戦している会社と何が違うのでしょうか?

中小企業白書(平成27年度版第2部第2節)によると「人材が確保できている企業」と「人材が確保できていない企業」では、「人材確保のためのノウハウ・手段」や「労働条件」「賃金」「福利厚生」において特に大きな差が見られます。人材確保で悩む企業は、まずは基本的な人材獲得のためのノウハウ・手段などから見直す必要があると言えるでしょう。

人材確保が課題となっている背景


今なぜ人材確保が課題となっているのか、その背景について簡単にご紹介します。

生産年齢人口の減少

少子高齢化が長期化していることにより、15~64歳の生産年齢人口は減少し続けています。
生産活動の中心となるこの年齢層が労働市場へ参入してくる人数に対し、退出する人数の方が圧倒的に多いため、企業が必要とする人材の確保が年々難しくなっています。

人口構造上の問題は短期的に解決することが難しく、また企業の努力だけでは限界があるため、このような傾向は長期的に続くと考えておいた方が良いでしょう。

就業意識の変化

生き方や価値観の多様化にともない、若年層を中心に就業意識は確実に変化しています。仕事に賃金以外のものも求める労働者が増えているだけに、単に賃金を増やすだけでは、人材確保は難しいでしょう。

また、福利厚生の充実や仕事のやりがいに加え、ワークライフバランスの実現を重視する若年者が増えているため、こうしたニーズにも対応しなければ人材確保はいっそう難しくなるでしょう。

さらに終身雇用制度が終わりつつあることも、労働者の就業意識が多様化する背景のひとつにあると考えられます。

人材要件の高度化

企業の求める人材の要件が年々高度になっていることも、人材確保を難しくしている原因です。
たとえば、業務を効率化するにあたりDX化の推進は欠かせませんが、企業が求めるIT技術は年々高度化しているため、そのようなニーズに対応できる人材の確保が難しくなっています。

要件の高度化は、IT分野だけに留まりません。他分野で企業が人材に求めるニーズが高くなっているだけに、人材の確保は年々難しくなっています。

人材確保を実現するための対策


人材確保を実現するためには、採用管理、定着管理、就労条件、理念・価値観の4つの視点から対策を講じる必要があります。
これら4つの視点から、人材確保を実現するための具体的な対策を解説します。

【採用管理の視点】求人内容や媒体の見直し、選考時の丁寧な説明

採用管理の視点からは、求人における表現を工夫したり、求人の媒体を工夫したりすることが重要となります。具体的には、求職者視点での求人条件になるよう表示内容を見直す、求職者向けのウェブサイトを充実させるなどがあげられます。

また、採用面接時に仕事内容や労働条件の説明をできるだけ丁寧に行うことも、人材確保をするうえで大切となります。

【定着管理の視点】採用者への配慮、正当な評価

採用した従業員の定着率を上げるためには、採用者への配慮が重要となります。
内定後も定期的に面談を行うことで就業前から信頼関係を築いておいたり、先輩社員に採用者の受け入れ態勢を教育したりすることで、採用者が就業しやすい状況を作っておくことが大切です。

また、職場への適応と定着を図るために、必要な場合は本人と面談のうえ他の業務への配置転換を行ったり、従業員が納得できる正当な人事評価や成長できていると実感できる体制を構築したりすることも必要となります。

【就労条件の視点】労働条件・労働環境の見直し、良好な人間関係の構築

就労条件の視点からは、労働条件などの見直しや職場での人間関係の構築も大切となります。労働条件を整理したうえで適宜見直し、賃金形態が従業員にとって納得できる内容となるようにアップデートさせていくことが大切です。

また、業務での疲労を回復させるためにも、休暇が取得しやすい職場にするように心がけたり、職場内で円滑なコミュニケーションが生まれやすい環境が作れるように配慮したりすることも重要となります。

【理念・価値観の視点】経営理念の浸透、組織文化の醸成

最後に重要なのが、経営理念の浸透や組織文化の醸成です。社内アンケートを定期的に実施して、従業員の愛社精神や要望・不満などを把握するように心がけると良いでしょう。

また、ミーティングなどで会社の経営理念やミッション、ビジョンを従業員とともに検討し、従業員が十分に理解したうえで共感できるようにしておくことが大切です。

それ以外にも、従業員が働きがいや働きやすさを感じる環境を作り、お互いに尊重し信頼し合える組織文化を作り上げていくことも重要となるでしょう。

人材確保後の定着率を上げるポイント


優秀な人材をどれだけ採用できたとしても、定着せずに退職を繰り返していては、望むような人材確保はできません。そのためには、採用した人材の定着率を上げることが重要です。

離職防止やモチベーション維持を目的とした配属・配置転換を行う

確保した人材の定着率を上げるためには、まず従業員の離職を防ぎ、モチベーションを維持するための配属や配置転換を行うことが重要です。
従業員にとっては、会社が決めた配属先が必ずしも望み通りであるとは限りません。望まない配属先での勤務は労働意欲を低下させるだけでなく、離職を誘発しかねません。

そこで、定期的に部署を移動させ、職場の活性化や従業員の隠れた能力を引き出すきっかけを作るようにします。そうすれば、従業員の離職防止やモチベーションの維持に役立つでしょう。

ただし、配置転換を行う際には、従業員に対してこちらの意図が伝わるように十分な説明を行うことが大切です。会社側の一方的な押し付けにならないように、相互に納得できる形で行うようにすると良いでしょう。

社員が役割・貢献・価値を確認できるような評価・処遇を行う

従業員自身も納得できる公正で公平な評価方法を導入することも重要です。

どのようなことが評価の対象となり、どうすれば高い評価が得られるのかを明確にします。具体的には、社員のそれぞれが自らの役割や自身の貢献度、会社に提供している労働価値などが明確に確認できるような評価方法や処遇などを導入すると良いでしょう。

ただし、こうした新しい評価方法の導入は、従業員の理解がなければ上手く機能しません。そのため、従業員と話し合いを進めながら、お互いに納得できるものに作り上げていくことが大切です。難しいようであれば、専門家の意見などを取り入れながら進めていくのも効果的でしょう。

社員が自身の成長を感じられるような人材育成を行う

従業員の定着率を上げる3つ目のポイントは、従業員自身が仕事を通じて成長していることが実感できるような人材育成を行うことです。

自分自身が成長していることが感じられれば、働くモチベーションは維持され、離職を防ぐことが望めます。そのため、社員自身が自分の成長を感じられるような人材育成を職場ごとに行っていくことが重要です。

なお、職場に人材育成を導入するにあたり、どのようなプログラムを組めば良いのか分からない場合は、こちらも専門家などに相談し、客観的な意見などを取り入れながら進めていくと良いでしょう。

人材確保の成功事例

次に、医療、介護、運送、建築の4業界について、人材確保に向けた取り組みをどのように行い、どの方法が効果を上げられたのかを紹介します。

医療業界での取り組み


日本の医師数は、人口1,000人あたり2.4人とG7のなかで最下位であり、OECD加盟国のなかで見てもワースト5位(2019年)とかなり不足しています。一方で看護職員の就労数は毎年増加傾向にあるものの、少子高齢化による需要の急増に人材の供給量が追いつかず、その結果1人あたりの業務負荷が重くのしかかり、職員に大きな負担をかけている状況です。

こうした状況において、人材確保の方法として効果が見込まれる対策は以下の通りです

対策 概要
給与や残業代など賃金の引き上げ 離職率の上昇を防ぐための賃金の引き上げを実施する
医師や看護師の福利厚生制度の充実 寮や保育所の整備をはじめ、各種補助制度を充実させる
医療業務に関する研修制度や学習環境の充実 最新の医療情報の習得や、休職者が復帰する際の研修制度を充実させ、職場への復帰をフォローする
DX化の促進による業務プロセス効率化 カルテの電子化や定型業務の自動化を進め、少人数で業務に対応する

介護業界での取り組み


介護業界への就業者は増えているものの、高齢者の増加数に全く追いついていないため、人材不足は深刻な状態となっています。また、業務の大変さから離職者も多く、定着率が悪いことも問題をより加速させています。
こうした状況において、効果を上げているのが以下の対策です。

対策 概要
介護職員の待遇改善 主任級の介護職員を他業種と同等程度の待遇にするなど改善見直しを図る
多様な人材の確保 他業種からの参入促進や、介護業界未経験の中高齢者に対する研修制度の充実、ボランティアの募集などによる人材確保を行う
離職率の低下や定着率の向上 介護ロボットの導入やICT化を促進する
外国人材の受け入れ 介護福祉士を目指す留学生などの支援を行う

運送業界での取り組み


オンラインでの商品の売買が増えているため、運送業者の運搬物の量は年々増え続けています。しかし、いわゆる「2024年問題」により時間外労働時間に上限が設けられたため、運送業界は急激な人材不足に頭を悩ませています。
こうした状況において、効果を上げているのが以下の対策です。

対策 概要
女性ドライバーの採用 男性から女性にも対象を広げ、就業者数を増加させる
労働環境の改善 労働時間や賃金、休暇の取りやすさなど働きやすい環境を整え、人材募集で訴求する
採用方法の見直し 外部の職業紹介サービスだけでなく、自社の求人サイトを立ち上げたりSNSを活用したソーシャルリクルーティングサービスを導入したりする

建設業界での取り組み


建設業界では、若年層の就業率が低いことから従業員の高齢化が進んでいます。また、建設需要が拡大しているのに対し、従業員の定着率は低く賃金も上昇していないことから、人材確保が難しい状況となっています。
こうした状況において、効果を上げているのが以下の対策です。

対策 概要
待遇の改善 残業時間の減少や賃金の上昇、福利厚生の充実などにより定着率を上げる
DX化の促進による業務の効率化 ITやAIツールを積極的に活用することにより、少人数でも対応できる業務を増やす
採用手段の多様化 求人の媒体を多様化し、あらゆる場所から求職者がアクセスできるようにする
外国人労働者の採用 2019年からはじまった特定技能制度を活用し、積極的に外国人労働者を採用する

人材確保をM&Aで実現する

最後に、人材の確保をM&Aで実現させることも可能です。人材確保の基本は、求人募集や社員教育による定着率向上などによるものですが、賃金をはじめとする待遇などを改善しても、なかなか思うように人材を集められない企業も少なくありません。こうした課題を、M&Aで解決するのです。

譲渡先のブランド力や知名度を活用したり、企業グループ全体で効率的な採用システム活用したりできれば、必要な人材の確保が実現できます。もちろん、高度な専門スキルを持つ人材を有する企業を買収すれば、人材確保に関する問題をクリアできるでしょう。

また、経営のプロであるPEファンドへ譲渡できれば、ファンドのネットワークを活用して、経営人材を含め人材確保を実現することも望めます。

終わりに

人材確保を成功させるためには、人材を募集して入社してもらうことも大切ですが、入社したあとの評価システムや人材の育成、キャリア開発の機会の提供や研修プロフラムなどの整備を進め、離職防止の取り組みとセットで行わなければ効果は半減してしまいます。

しかし、多くの中小企業にはこうしたノウハウの蓄積が薄いため、せっかく確保した人材が流出してしまうケースも珍しくありません。そのため、中小企業が人材確保に取り組む際には、ノウハウを豊富に持っている専門家などの意見を取り入れながら進めていくと良いでしょう。

貴社の人材確保についてのお悩みはM&Aで解決することができるかもしれません。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。まずはコンサルタントまで、お話をお聞かせください。ご相談は無料、秘密厳守で対応致します。

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