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【中小企業経営者 事業承継・M&A意識調査】8割超が後継者候補未定も、事業承継を「重視している」は1割超にとどまる

広報室だより
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日本M&Aセンターは、2022年11月に40代以上の中小企業経営者400名を対象に、各社の経営状況や事業承継、M&Aに関する意識調査を実施しました。

◆調査結果サマリー

調査の結果、後継者候補が決まっていない企業は87.5%と8割を超えていますが、「事業承継を重視している」企業はわずか12.5%、「後継者不在を課題と感じている」企業も13.5%にとどまりました。多くの中小企業が後継者不在にもかかわらず、事業承継問題には十分に意識を向けられていないことが分かります。

さらに、58.5%の経営者はM&Aについて「良い・悪いどちらのイメージも持っていない」と回答しました。中小企業庁が2016年に「事業承継ガイドライン」、「中小M&Aガイドライン(2020年)」、「中小M&A推進計画(2021年)」の発表など積極的な啓発活動を行い、メディアで取り上げられることも増えていて、中小企業の事業承継問題やその解決策の一つであるM&Aについての認知は高まっているものの、M&Aの浸透はまだ十分とは言えない状況です。

「現在の経営において重視していること」としては、約半数となる49.8%の経営者が「現状維持」を選択しました。「右肩上がりの成長」を重視する企業はその半分以下の22.5%という結果で、コロナ禍や物価高、円安など日々激変する経営環境の中、成長より現状維持に意識を向ける経営者が多いことが推察されます。

◆調査概要
調査日: 2022年11月11日~2022年11月15日
調査方法: インターネットによる選択・記述式回答
調査人数: 40代以上の全国の中小企業経営者 400名
調査会社: 株式会社アスマーク
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計が100とならない場合があります。

■経営で重視していることは「現状維持」が約半数

「Q:あなたの経営方針において重視されていることを教えてください」という質問で「現状維持」と回答したのが49.8%、次いで「右肩上がりの成長」が22.5%となりました。「次世代への経営の承継」を重視しているのは12.5%、「人材育成」を重視しているのは11.5%という回答となりました。

■後継者不在を課題と感じている経営者は13.5%

「Q:あなたが現在、会社・団体の経営において、困っていることを以下の中からすべてお知らせください」という質問では、「売上が伸びない」と回答した経営者が33.3%と最多。「事業承継できる後継者がいない」を選択し、後継者不在を課題と認識している経営者が13.5%という回答となりました。

■8割を超える経営者が後継者を決められていない

「Q:あなたが経営している会社・団体では、後継者が決まっていますか」という質問では、「決まっていない(候補者もいない)」と回答した経営者が67.0%と最多となりました。また「決まっていないが、候補を考えている」が20.5%となり、今回の調査では、87.5%の経営者が後継者を決められていないという回答となりました。

■M&Aにイメージを持っていない経営者が約6割

「Q:あなたの「M&A」に対するイメージで当てはまるものをひとつ選んでお知らせください」という質問では、良いイメージと回答した経営者が16.6%(「良い(5.3%)」「どちらかと言えば良い(11.3%)」)、「どちらでもない」と回答し良いイメージも悪いイメージも持っていない経営者が58.5%となりました。悪いイメージと回答した経営者が18.3%(「悪い(6.3%)」「どちらかと言えば悪い(12.0%)」)となり、良い・悪いどちらもほぼ同数の回答となりました。

■3割以上の経営者がM&Aを「事業承継・後継者不在問題の解決策」と認識

「Q:あなたが「M&A」と聞いて思い浮かぶイメージを以下の中からいくつでも選んでお知らせください」という質問では、32.2%の経営者が「事業承継・後継者問題の解決」と回答しました。また、「経営基盤の整備」(19.3%)や「事業の発展」(19.0%)など成長戦略の一つというイメージを持つ経営者も約2割程度いました。一方、悪いイメージで回答が多かったのが、「企業の身売り」(35.9%)や「企業の乗っ取り(敵対的買収)(23.9%)」となりました。

最高のM&Aをより身近に

【株式会社日本M&Aセンター 東日本ダイレクトマーケティング部 シニアチーフ 大澤卓也 コメント】

「物価高の影響を受けている」「円安の影響を受けている」「売り上げが伸びない」等のお悩みから、円安・為替の影響を受けている企業様も多くいらっしゃることが想像できます。「成長」よりも「現状維持」を重視する企業様が多いのは、それらの影響もあるでしょう。

事業承継は、会社の将来を大きく左右するテーマで、「重要性」は極めて高いものの、「不急」の経営課題であるため、検討自体を先送りされる傾向があります。「最初に頭をよぎってから気づけば5-10年が経ってしまった」というお話もよく耳にします。また、「経営の承継(=次世代の経営)」は検討されていても、「財産の承継(=オーナー保有の株式等)」については顧問税理士の先生から相続税評価を聞いたことがある程度ということもよくあります。
現場で経営者の皆様と対峙する中で、M&Aについて、「周囲の経営者仲間の方々が経験されている」、もしくは「話を聞いたことがある」とおっしゃる方は増えていると感じます。しかしながら、本調査ではM&Aのイメージが「良い・悪いのどちらでもない」という回答が58.5%を占めています。中小企業経営者の”M&Aリテラシー”の格差は拡大している可能性があります。「M&A後の姿・経営」について、我々ももっと情報発信していく必要があります。
実際の中小企業のM&Aでは、本調査で回答されているような「身売り(35.9%)」「乗っ取り(23.9%)」「リストラ(11.5%)」ということはほぼありえません。この結果も、本当の中堅・中小企業のM&Aが広く世に知れ渡っていないことによるものです。

日本M&Aセンターでは『最高のM&Aをより身近に』というパーパスの下、M&Aの成功に向けて企業様と伴走しています。多くの経営者の皆様にM&Aを”より身近に”感じていただけるよう、さらなる努力を続けてまいります。

本コラムの内容の転載に際しては、「日本M&Aセンター調べ」とご記載ください。
本件に関するお問合せ:日本M&Aセンター 広報担当
mail:pr@nihon-ma.co.jp

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M&A マガジン編集部

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