関連会社とは?関係会社・子会社との違いや、メリットなど解説
⽬次
- 1. 関連会社とは ?
- 1-1. 関連会社の判定基準
- 2. 「関連会社」と「関係会社」の違い
- 3. 「関連会社」と「子会社」の違い
- 3-1. 子会社の判定基準
- 3-2. 関連会社と子会社の決算
- 4. 関連会社のメリット
- 4-1. 経営の効率化
- 4-2. 経営戦略の強化
- 4-3. 技術革新
- 4-4. 節税効果・財務リスクの分散
- 4-5. 事業承継のしやすさ
- 5. 関連会社のデメリット・注意点
- 5-1. 経営統制の難しさ
- 5-2. 利益の分配
- 5-3. 経営リスクの連鎖
- 5-4. 関連会社間の意見の対立
- 5-5. 経済的負担
- 6. 関連会社と混同されやすいその他の会社
- 6-1. 1. グループ会社
- 6-2. 2. 持株会社
- 6-3. 3. 兄弟会社
- 6-4. 4. 完全子会社
- 6-5. 5. 連結子会社
- 6-6. 6.特定子会社
- 6-7. 7. 特例子会社
- 7. 終わりに
- 7-1. 著者
関連会社に該当するかどうかは、議決権の割合によって定められています。本記事では関係会社や子会社との違いも含め、関連会社の概要についてご紹介します。
関連会社とは ?
関連会社とは、親会社が議決権の20%以上を所有し「経営方針の決定に重要な影響を与えることができる会社」を指します。
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」で以下のように定義されています。
出典:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 (第一章第八条十の二)
関連会社の判定基準
前述の通り原則20%以上の議決権の保有が条件ですが、20%未満での場合でも「一定の要件」にあてはまると関連会社になります。
具体的に「一定の要件」とは、以下の内容を指します。
一定の要件:議決権保有比率が15%以上20%未満で、以下➀~⑤項目のいずれかに該当する場合 |
---|
➀(親会社の社員等が)役員等に就任している |
②親会社が重要な融資を行っている |
③親会社が重要な技術を提供している |
④親会社と販売や仕入などビジネス上の重要な取引がある |
⑤財務や事業の方針決定において重要な影響があると考えられる事実が存在する |
「関連会社」と「関係会社」の違い
関連会社と似ている言葉に「関係会社」があります。 関係会社とは、「親会社・子会社・関連会社をまとめた総称」です。
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」で以下のように定義されています。
出典:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 (第一章第八条八項)
親会社と資本的な関係がある会社の株式は、出資額によって親会社の貸借対照表上に「関係会社株式」という勘定科目で計上されます。
出資比率や条件などによって、「子会社株式」と「関連会社株式」とに区分されるだけでなく、会計処理も異なります。
「関連会社」と「子会社」の違い
そのほか関連会社と類似している言葉に「子会社」があります。
会計上の子会社とは、「議決権の50%以上を親会社が所有している会社」です。関連会社は、親会社が「経営に影響を与えることができる」会社であるのに対し、子会社は親会社と完全なる「支配関係」にあります。
子会社の判定基準
子会社は原則 「50%以上の議決権の保有 が条件になりますが、50%以下でも一定の要件にあてはまると子会社として判定されます。
また子会社判定における「一定の要件」とは、以下いずれかの内容を指します。
一定の要件 |
---|
①他の会社の取締役などに準ずる役職に自社の役員等が就任している |
②他の会社に対して重要な融資・重要な技術提供・重要な販売・仕入などのビジネス上の取引が存在している |
関連会社と子会社の決算
関連会社と子会社では、連結決算における会計処理の方法も異なります。
関連会社は「持分法」にもとづき会計処理することから、親会社の影響力に対応する形で按分した部分のみを親会社の財務諸表に反映します。
一方、子会社は「連結法」にもとづき会計処理することから、親会社と子会社の財務諸表が合算されます。したがって、子会社の財務諸表は親会社の財務諸表に直接的に反映されます。
関連会社のメリット
関連会社を設立する主なメリットは、以下の通りです。
経営の効率化
関連会社を設立することで、複数の企業が経営資源を共有することができます。例えば、生産設備や技術、人材などを共有することで、経済的な効率性を向上させることができます。
経営戦略の強化
関連会社を設立することで、経営戦略の幅が広がります。異なる企業が協力してシナジー効果を生み出し、競争力を高めることができます。また、既存の事業を拡大するだけでなく、新たな事業領域に進出することも可能です。
技術革新
関連会社を設立することにより、技術やイノベーションの共有が促進されます。異なる企業が協力して研究開発を行い、新しい製品やサービスを生み出すことができます。
節税効果・財務リスクの分散
関連会社の設立によって親会社の利益が分散されれば、親会社も関連会社も法人税の軽減税率を利用できるため、税務上、資本金額に応じて法人税・地方法人税・消費税などの軽減措置や免税措置を受けられる可能性もあります。
例えば、多額の投資を必要とする研究部門を別の関連会社として設立することで、財務リスクを分散できます。親会社に、万が一不祥事など不慮の事態が起きた時に、関連会社が存在していれば、事業停止の影響も限定的になる可能性があるためです。これは子会社にも同様のことが言えます。
事業承継のしやすさ
親会社で行っていた事業を分割し、関連会社を設立することで事業継承にもつながります。後継者教育として関連会社で経営を任せることは、将来的に親会社を引き継ぐ際に役立つでしょう。また、兄弟など後継者候補が複数いる場合に親会社、関連会社とそれぞれ継がせることができます。
これらのメリットを活かすためには、関連会社の設立と運営には慎重な計画と管理が必要です。適切なパートナーの選択やリソースの適切な配分、コミュニケーションの円滑化などが重要な要素となります。
関連会社のデメリット・注意点
一方、関連会社で注意すべき点は以下の通りです。
経営統制の難しさ
関連会社の経営を統制することは、複雑な課題となる場合があります。異なる企業間での意思決定や意見の調整が必要であり、意思決定プロセスが遅延する可能性があります。
利益の分配
関連会社間での利益の分配は、協力関係や出資比率によって決まります。利益の分配に関する意見の相違や不公平感が生じる可能性があります。
経営リスクの連鎖
関連会社間での経営リスクは相互に影響し合います。一つの関連会社の経営不振やリスク、不祥事などのトラブルの影響が他の関連会社に波及する可能性があります。
関連会社間の意見の対立
異なる企業や経営陣が関連会社で協力する場合、意見の相違や利害の対立が生じることがあります。これにより、関係が悪化し、円滑な業務遂行が妨げられる可能性があります。
経済的負担
関連会社の設立には、一般的に会社を設立する場合と同様に費用や手続きが必要となります。また、関連会社の運営や経営支援にもコストがかかる場合があります。
これらのデメリットは、関連会社を設立する際に考慮すべき要素です。関連会社の設立や運営には、適切なリスク管理やコミュニケーションの確保、細心の注意が必要です。事前の計画や評価を行い、デメリットを最小限に抑えることが重要です。
関連会社と混同されやすいその他の会社
最後に、関係会社や子会社のほか、関連会社と混同しやすい呼称について見ていきます。
1. グループ会社
グループ会社は、一般的には関係会社と同様に 「親会社や子会社、関連会社の総称」 として用いられます。ただし、関係会社とは異なり法的に定められた言葉ではないため、取引や契約の場面において用いられる際は注意が必要です。
2. 持株会社
持株会社とは、「事業を支配することを目的として子会社の株式を保有する会社」です。ホールディングカンパニー(Holding Company)とも呼ばれます。
持株会社は、事業は行わず、株式保有による支配だけを目的とする「純粋持株会社」と、株式保有で他社を支配しながら、自らも事業を営む「事業持株会社」の2種類が存在します。
1997年に日本で持株会社が解禁となってから、国内では金融系を中心に、複数の幅広い事業を営む企業が経営効率化を目的に設立されました。
持株会社の例としては、 みずほフィナンシャルグループ、 野村ホールディングス、 セブン&アイホールディングスなどが挙げられます。
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3. 兄弟会社
兄弟会社は、一般的には 「同じ親会社を持つ子会社同士」として用いられます。よって、兄弟会社がある場合には親会社は2つ以上の子会社を保有することになります。
また兄弟会社がともに連結子会社になるケースも見られます。ただし、グループ会社と同様に法的に定められた言葉ではないため、解釈に注意が必要です。
4. 完全子会社
完全子会社とは、「 株式の100%を親会社が保有する子会社」を指します。ただし相互会社や、法人ではなく個人に株式を100%保有されている会社は完全子会社ではありません。子会社の株を100%保有する会社は「完全親会社」と呼ばれます。完全子会社は、親会社に完全に経営を掌握される反面、「責任が明確」「意思決定が迅速」などのメリットが挙げられます。
5. 連結子会社
連結子会社とは、「親会社の連結財務諸表に合算される対象となる子会社」 です。原則として、子会社はすべて親会社の連結対象になりますが、一部の子会社は連結の対象外にするケースもあります。こうした子会社が非連結子会社です。
連結対象外となる条件は、親会社の支配が一時的である場合や子会社の損益が親会社にとって重要ではない場合などが挙げられます。
連結会計を実施することによって親会社と連結子会社を一体的な1つのグループとして捉えることが可能になるので、会計不正を防止できるようになります。連結子会社は、発行済み株式の保有比率が50%超であるか、あるいは40%超の株式保有比率でも実質的に経営を支配している子会社を指します。
6.特定子会社
特定子会社とは、主に会計上用いられる用語で 「親会社の売上高の総額または子会社からの仕入高の総額が10%以上に該当」、「親会社の純資産額の30%以上を保有」もしくは「資本金の額または出資の額が10%以上」の子会社のことを指します。海外への積極展開を進める日本の上場企業の子会社などが該当するケースが見られます。一方、親会社が子会社からの仕入に対する依存度が高い場合には、特定子会社の対象外になります。
7. 特例子会社
特例子会社とは、 「障害者の雇用を促して雇用の安定を図ることを目的として設立された子会社」です。「障害雇用の促進・安定が達成される見込みがある」など一定の要件を満たした場合に特例子会社として認められます。
設立によって「社会貢献度が高い企業」であるという評価を得られる反面、障害者を雇用するための設備や制度の見直しにコストがかかる点に注意が必要です。
以上概要をまとめると以下のようになります。
会社の呼称 | 概要 |
---|---|
関連会社 | 親会社が議決権の20%以上を所有し、 経営方針の決定に重要な影響を与えることができる会社 |
関係会社 | 親会社・子会社・関連会社をまとめた総称 |
子会社 | 議決権の50%以上を親会社が所有している会社 親会社とは完全なる「支配関係」にある |
グループ会社 | 親会社や子会社、関連会社の総称 |
持株会社 | 事業を支配することを目的として子会社の株式を 保有する会社(ホールディングス) |
兄弟会社 | 同じ親会社を持つ子会社同士 |
完全子会社 | 株式の100%を親会社が保有する子会社 |
連結子会社 | 親会社の連結財務諸表に合算される対象となる子会社 |
特定子会社 | 「親会社の売上高の総額または子会社からの仕入高の 総額が10%以上に該当」、 「親会社の純資産額の30%以上を保有」、 「資本金の額または出資の額が10%以上」 のいずれかに該当する子会社 |
特例子会社 | 障害者の雇用を促して雇用の安定を図ることを目的として設立された子会社 |
終わりに
関連会社に限らず、会社同士の関係を表す言葉は非常に多く存在しており、それぞれの言葉の定義や意味を明確に把握しておくことは非常に重要です。
明確に定義されている言葉もあれば、特段定められている言葉ではないものもあります。それぞれどのようなルールや法律などにもとづいて定められている言葉なのか、それとも一般的に利用されるケースが多い言葉なのかなどを踏まえて、正確に使用することが大切です。それぞれの会社形態のメリットやデメリットを十分に検討した上で、目指している事業の成功に近付ける形態の会社を設立することをおすすめします。