コラム

M&A対象国としての魅力が多いマレーシア

尾島 悠介

Nihon M&A Center Malaysia Bhd. Sdn.(マレーシア現地法人) Managing Director(代表取締役)

海外M&A

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日本M&Aセンターのマレーシア拠点は、新型コロナウイルスの影響が大きく出始めた2020年3月に、4番目の海外拠点として開設されました。ロックダウンや渡航制限の影響を大きく受けながらも、2021年は既に成約件数が4件となり、当社の海外拠点では年間ベースで最大の成約件数となりました。マレーシアは、日本の中堅・中小企業が海外進出するために適した環境が広がっています。今回は、ASEANではシンガポールに次ぐビジネス環境の良さと多民族国家で魅力的なマレーシアをご紹介します。(※本記事は2021年11月に執筆されました)

多様性と消費市場が魅力的なマレーシア

日本のロングステイ財団の調べでは、マレーシアは何と13年連続で「ロングステイしたい国」のトップを走ります。物価水準、治安、インフラ、気候、医療、現地の人のフレンドリーさなどが項目として挙げられ、マレーシアはその総合評価で高得点をたたき出しています。

また、首都クアラルンプールには、近代的な高層ビルが林立しており、ランドマークであり観光スポットとなっているペトロナスツインタワーは、高さ452メートル、88階建ての大型ビルで、展望フロアからは近代化に成功した市内を見渡すことができます。

国の特徴は何といってもその多様性です。もともとマレー系住民が主体でしたが、現在中国系も人口の3割程度暮らしており、比率は低いですがインド系もいて、多民族が共存しています。民族各々が固有の食習慣を持っており、マレーシア料理、中国料理、インド料理、さらには韓国料理、日本料理の店が点在、それらを一部ミックスしたものもあるので食の選択肢は幅広いです。

1人当たりGDPは、約1万ドルとASEANではシンガポールに次ぐ経済大国であり、インドネシアの2・5倍、ベトナムの4倍以上の堂々たる経済力を誇ります。シンガポールと比較すると見劣りしてしまうかもしれませんが、国の大きさを考慮すると優等生グループの一員といっていいと思います。経済指標の面から言えば、過去20年間安定的に5%程度の成長を続けでおり、目を見張るほどの急激な成長は見せなかったものの、ブレることなく常に高めの伸びを保ったことが評価されています。

ビジネス環境の良さも、特筆すべき点があります。世界銀行グループの「Doing Business 2020」調査によると、マレーシアのビジネス環境の総合順位は世界で12番目。ASEANではシンガポールに次ぐ位置にランキングされました。評価が高かった項目は、「投資家保護の整備」「電力需給」「建設許可の取得」など。海外企業が進出しやすい土壌ができあがっているといえます。

マレーシアという国の魅力

次に、マレーシアでビジネスを行う上での魅力を挙げてみたいと思います。

若い労働力と、中間層の増加による魅力的な消費市場

年齢別人口は20代が最多。65歳以上の人口は中長期にわたって低いままと予想されており、若手労働力の増加と1人当たりGDPの増加という、2つの要素の掛け合わせが続くので、消費市場としての魅力にもますます磨きがかかるといわれております。 労働力の質については、日系進出企業の現地ワーカーの間では、「おとなしくて、真面目な人が多い。勤務態度は良好」との評判でほぼ一致。労使関係も安定しております。元来マレー人は温和で争いを好まないタイプが多く、それがフレンドリーな国民性として愛されています。ただし、国土面積の割に人口が少ないこともあって、外国人労働者を入れており、一部製造業の現場では外国人労働者の管理に目配りが必要となります。

トップレベルのビジネス環境

公用語はマレー語ですが、レストラン、タクシーなどほとんどの場で英語が使われています。
ASEAN内における市民の英語力の高さは、シンガポール、フィリピンに並ぶとさえいわれるほどです。英国の植民地だったため、仕事上のやりとりは英語で行う慣習ができており、ビジネスは英語だけで問題がありません。
道路、橋、公共交通機関、電力、水道、通信などの社会インフラはきちんと整備されており、少なくとも首都のクアラルンプールは、先進国の主要都市と比べて何ら遜色がないです。
観光地として売り出しているマラッカ、ペナンなどの他都市も同様で、マレーシア―シンガポール間は高速道路で往来することができます。

M&Aも含めて、会計、税制、法務などのルールは英国統治時代からの伝統を引き継ぎ、透明性が高く、ASEANの他国と比較して外資規制は緩いといえます。(流通や物流、防衛、インフラ関連など、国益に関わる事業は一部外資規制がある。)

日本に対して好印象

マハティール元首相が1981年に掲げたルックイースト政策は、経済発展の目標を西洋に定めるのではなく、日本など東洋に手本を求めたものでした。マレーシア政府は、経費を一部負担して継続的に日本に多くの留学生を送り、帰国後、日系進出企業の幹部などとして活躍する人材を育てました。日本からのマレーシア援助にも熱が入った影響もあり、両国間の友好の絆は強く、マレーシアでは日本に対して好印象を持つ人が多いです。

ハラル・マーケットの足掛かりに

近年、ムスリム向け市場が注目されています。ムスリムに「禁忌」とされている材料、原料などを使う食品、化粧品、医薬品などは、アラビア語で「合法的なもの、許されたもの」を意味するハラルの考えにもとづき、教義に沿って生産します。(これをハラル認証と呼ぶ。)
マレーシアは国家戦略としてハラル認証製品の普及を進めており、ハラル専用工業団地や投資優遇措置などもあり、国内のみならず、中東市場をにらんだ大きなビジネスとしてハラル産業を展開。マレーシア進出を起点に、中東やアフリカのハラル・マーケットを狙うことも可能といえます。

マレーシアのM&A事情

マレーシア国内のM&Aは、年間200~400件前後。案件規模は10億円以下の小型の取引が中心です。シンガポールは海外企業との間のM&Aが目立ちますが、マレーシアは国内企業同士の成約が多いです。それだけマレーシアではM&Aの土壌があるといえます。ちなみに海外M&Aの買い手としては、日本企業とシンガポール企業に集中しています。
日本とマレーシア企業のM&Aだけに絞ると、2000年以降で約200件、ここ数年では年間約20件のペースとなっています。日系企業の工場進出では50年以上の長い歴史がありますが、M&Aに限って言えばこれからの市場です。

これまで見てきたように、会計・財務の透明性が高く、M&Aの難度は比較的低いと言われているマレーシア。ハラルマーケットなど、新たな事業への挑戦も可能であり、M&A対象国として魅力の多い国といえます。今後、マレーシアのM&Aに関わるトピックを発信していきます。

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著者

尾島 悠介

尾島おじま 悠介ゆうすけ

Nihon M&A Center Malaysia Bhd. Sdn.(マレーシア現地法人) Managing Director(代表取締役)

大手商社を経て、2016年日本M&Aセンターに入社。商社時代には3年間インドネシアに駐在。2017年よりシンガポールに駐在しNo.2として現地オフィスの立ち上げに参画。以降は東南アジアの中堅・中小企業と日本企業の海外M&A支援に従事。2020年にマレーシアオフィス設立に携わる。現地経営者セミナーを多数開催。 「ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く」編著者代表

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