コラム

成長戦略としてのIN-OUT M&A

榊原  啓士

執行役員 九州チャネル部長

海外M&A
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IN-OUT M&Aという選択肢

M&Aの歴史を振り返った時、弊社を設立したころの1990年代では、バブル崩壊に伴い体力のなくなってしまった企業を、海外ファンド等が買いたたき「ハゲタカ」「身売り」などネガティブなイメージがありました。しかし、現在、日本国内でM&Aは後継者不在企業の存続と発展に寄与できる有効な経営の選択肢として認められるようになり、一転ポジティブなイメージが広がりました。

後継者不在型のM&Aを中心に、国内でのM&A件数は増加傾向が続いています。近年は後継者不在型のM&Aに合わせて、企業をアーリーステージで売却して、大手資本のリソースを活用して成長スピードを上げる成長戦略型のM&Aも増えてきています。
企業成長を促進できる手段としてM&Aは幅広く世の中に認知されるようになりましたが、我々、IN-OUT推進課が力を入れているのは、 IN-OUT(国内から海外へ)M&Aです。名の通り、 国内企業が海外企業を譲り受けるM&Aですが、文化や制度の違いがありM&A成約のハードルが高い反面、成約しPMIが上手くいけば、企業成長に大きく貢献できる有効な手段となっています。

現在、コロナ禍で海外渡航自体が難しい状況ですが、多数の企業から我々に海外M&Aの問い合わせを頂いており、海外に成長を求める企業が増えてきていることを実感しています。

縮小する国内市場と拡大する海外市場

日本は1990年のバブル崩壊以前は世界GDPにおけるシェアは14%もありましたが、2050年では2%まで下がると推測されています。今後、少子高齢化が進む日本と人口ボーナスを得る見込みであるアジアでは大きく立場が逆転し、アジアは2050年には世界GDPの約半数を占めることが予想されています。

アジア市場には世界が目を向けていますが、日本は地理的な位置(時差)やASEAN諸国の日本に対する親近感からも、欧米諸国よりは有利な立場にあり、進出する意義が今後益々大きくなってくると考えられます。既に多くの日本の大手メーカーやIT企業が安い労働力を求めて、海外進出し工場建設やオフショア拠点を作ってきました。今後はそれらの国の発展に伴い、中間層が増えて消費意欲が高まってくれば、小売・サービスなどの業界でもより進出ニーズが高まっていくかと思います。

中小企業海外M&Aの黎明期

上記のような背景から、大手上場企業はM&Aを活用し海外進出を果たし、業績の拡大を続けています。このようにこれまで海外M&Aというと、一部の上場企業が数百億円、数千億円という売買金額のM&Aにより進出することが多かったかと思いますが、中小企業においてもM&Aを活用しようというケースが増えてくると考えています。

M&Aのメリットの1つはやはり時間を買うことです。
特に海外M&Aの場合は、工場を建てるにしても許認可、人の採用など、準備に3~5年かかることもあります。そして新規で立ち上げた現地法人を黒字化するのに更に数年かかることが多い状況です。M&Aであれば、買収までの1年ほどで既に黒字化した状態の企業をグループに入れることが出来ます。

これまでは数億から数十億円程度のM&Aを組織的かつ他拠点間で行っているM&Aブティックはあまり存在していませんでした。我々は現地にネットワークを張り巡らせて、日本企業の存続と発展に貢献できるような案件を提供していきたいと思っています。

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著者

榊原  啓士

榊原 さかきばら 啓士けいし

執行役員 九州チャネル部長

電機メーカー、IT企業、大手金融機関を経て2012年日本M&Aセンターに入社。入社以来、企業譲受のアドバイザリーを中心に従事。 また、企業の成長戦略の提案について定評があり、多くの企業の業績アップに寄与。国内のみならず海外M&A案件での実績も多数。 証券アナリスト。

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