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世界で加速するサイバーセキュリティ市場とマレーシア企業の需要

杉木 俊斗

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杉木俊斗

営業本部 法人チャネル IN-OUT推進部

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皆さん、こんにちは。
日本M&Aセンター の杉木です。 東南アジアを中心としたクロスボーダー案件を担当しております。

今回は、世界でも加速するサイバーセキュリティ市場と、今後も市場規模の急成長が見込まれるマレーシアにおけるサイバーセキュリティ事情にフォーカスを置いてご説明させて頂きます。

サイバーセキュリティ先進国のマレーシア

世界のサイバーセキュリティ市場

2020年の新型コロナウィルスの世界的流行により、一般個人の間だけなく、企業単位での経済デジタル化が世界で推進されるようになりました。

このデジタル化の加速により、経済活動の効率化が進む一方、情報漏洩や不正アクセス、サイバー攻撃といったセキュリティリスクも高まっています。

その結果、サイバーセキュリティの重要性が高まり、その需要が増加、 世界でのサイバーセキュリティの市場規模は2030年には現在の2~2.5倍の4千億USD規模の市場へと成長する事が予測されております。

サイバーセキュリティ業界におけるM&A

加速するサイバーセキュリティ需要に対応すべく、世界でもサイバーセキュリティを生業とする企業を中心としたM&Aが活発に行われております。2023年には、合計363ケースものM&Aが実施、もしくは発表されています。

代表的な例では、2023年9月にネットワーク機器の米国Cisco Systems, Inc.による、米国Splunk Inc.の買収発表が行われた他、2024年3月には米国セキュリティスタートアップのWiz Inc.が、同業のGem Securityを3.5億USDで買収すると報じられました。

サイバーセキュリティ先進国のマレーシア

このように、サイバーセキュリティ需要は増加トレンドですが、実は東南アジアの国であるマレーシアは、サイバーセキュリティにおける先進国なのです。

サイバーセキュリティの取り組み状況の総合スコアを示すグローバル・サイバーセキュリティ・インデックス(Global Cybersecurity Index : GCI)によると、2014年からの公表以降、一貫してマレーシアは194か国中のトップ10入りをしており、2021年には8位にランクインしています。(日本は12位)

高水準なインターネット普及率とデジタル化政策

ここでマレーシアにおける個人のインターネット普及率を見てみましょう。

International Telecommunication Unionによると、世界のインターネット普及率は2022年のデータで64%ですが、マレーシアは97.40%です。これは、米国の97.13%よりもやや高く、日本の84.92%と比べるとかなり高い水準であるといえます。

また、政策においても、デジタル化を推進するための「マルチメディア・スーパー・コリドー」が1996年に開始されており、2022年7月にはその後継戦略となる「マレーシア・デジタル」が立ち上げられました。

国を挙げたサイバーセキュリティ強化へ

ここまでインターネットやデジタル化が普及しているマレーシアにおいても、シスコシステムズによると、サイバー攻撃に対処する準備が出来ているマレーシア企業はわずか2%にとどまるとの調査発表がされております。

ただし、官民ともにサイバー攻撃への危機感を早くから募らせていたようで、2019年にはマレーシアの政府高官や民間企業のサイバーセキュリティ担当者、世界各地の専門家が参加した「Future of Cybersecurity Conference」が開催され、2020年には政府が「マレーシア・サイバーセキュリティ戦略(MCSS)2020-2024」を策定するなど、サイバーセキュリティ問題に対する取り組み強化を積極的に行ってきました。

そして、いよいよ2024年3月には、サイバーセキュリティ委員会の設立やセキュリティサービスプロバイダーのライセンス策定等を定めるサイバーセキュリティ法案の設立に向けての、第一読会がマレーシア議会で行われ、国を挙げたサイバーセキュリティ強化への道を歩みだしました。

マレーシアにおけるサイバーセキュリティ企業M&A事例

このような背景もあり、マレーシアのサイバーセキュリティ事情は国内外から注目を集めています。

2020年にはDeloitteがマレーシアのサイバーアドバイザリー会社、SecurePath Sdn Bhdの買収を発表しました。

日系企業による事例ですと、2017年にはマクニカネットワーク株式会社がNetpoleon Solutions Pte Ltd.を子会社しております。対象会社の本社はシンガポールですが、マレーシア子会社も保有しており、需要旺盛なマレーシア市場も見据えたものであると推測されます。

また、2023年には三井物産株式会社によるマレーシアのサイバーセキュリティサービス企業のLGMS Bhd.への追加出資が発表されております。

サイバーセキュリティ需要が高まるマレーシアをターゲットに置いたM&A傾向は、今後も世界的に増えていくものと考えております。

日本M&AセンターのクロスボーダーM&Aサービス

日本M&Aセンターでは、中立な立場で、譲渡企業と譲受企業双方のメリットを考慮にいれたM&Aの仲介を行っております。また、日本企業による海外企業の買収(In-Out)、海外企業による日本企業の買収(Out-In)、海外企業同士の買収(Out-Out)も数多く手掛けてまいりました。

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プロフィール

杉木 俊斗

杉木すぎき 俊斗しゅんと

営業本部 法人チャネル IN-OUT推進部

イギリスの大学を卒業後、大手鉄鋼商社にて海外営業と4年間のシンガポール駐在を経て、日本M&Aセンターに入社。海外事業部にてクロスボーダーM&Aに従事し、日系企業の海外進出をM&Aを通じてサポートしている。物流業・製造業が得意分野。

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