自社株買いとは?上場、非上場企業が行う目的やメリット、仕組みを解説

経営・ビジネス
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近年、多くの企業が自社株買いを積極的に行うようになっています。これは、株主還元の一環として注目される手法であり、企業の資本政策や市場環境に大きな影響を与えています。

また、自社株買いは上場企業だけの話ではありません。非上場の中小企業では「株主が増えて意思決定がしにくい」「相続で株が分散した」「退職した役員・従業員が株を保有したまま」「後継者に株を集約したい」といった“株主構成の悩み”を解決する有力な手段になりえます。本記事では自社株買いを行う目的・メリット、リスクについてわかりやすく解説し、企業戦略としての重要性を探ります。

⽬次

まずは自社の企業価値を調べて見ませんか?株価算定シミュレーションでは、非上場企業がM&Aをする場合の株価(目安)を60秒で算出できます。

自社株買いを行うとどうなる?

自社株買いは、会社が株主から自社株を買い戻すことを指します。

上場企業は主に株式市場での取引、あるいは公開買付け(TOB)によって自社株買いを行います。

自社株買いの仕組み

一方、非上場企業の株式は市場価格がないため、実務では当事者間で交渉し、合意価格で取引を行うことが一般的です。

自社株買いの目的・メリット(上場企業の場合)

自社株買いを行う目的は、上場企業、非上場企業それぞれで異なります。

上場企業が自社株買いを行うと、市場に出回る株式の数が減少するため、既存株主の議決権比率が高まり、結果的に株価の安定が期待できます。
また、自社株買いによって、一株あたりの利益や株主資本利益率が上昇し、投資家へのアピールになります。そのため、株価上昇策としても実施されます。

買い戻した株式は一般的には「消却(無効化)する」もしくは「金庫株として保有する」などの扱いになり、金庫株は将来的に従業員などへのストックオプションとして活用することができます。

株主への利益還元、株価上昇

自社株買いを行うと前述の通り株式数が減り、株主にとっては1株当たりの利益配分が増えるため、間接的に 株主への利益還元 につながります。また、PERやROEの改善によって、 株価の安定・上昇 の可能性が高まります。
その結果、成長を期待した株主による長期保有や、継続的な株式の購入など、 投資家からの関心の高まり も期待できます。

財務体質の改善

株式数が減少することで将来の配当の支払い対象が減り、長期的なキャッシュアウトを抑えられる場合があります。また、株主名簿管理や通知、総会運営などの事務負担も軽くなります。その結果、企業の財務体質改善という効果が期待できます。

同意なき買収リスクの低減

市場から買い戻すことで自社株の持ち株比率を高め、想定外の相手から株式を買い占められるリスクへの対応策として自社株買いが行われる場合もあります。

ストックオプションへの活用

従業員は自社株を取得することで株主になり、業務をとおして企業価値を高められれば、個人資産を増やすことが可能になり、モチベーションの向上も期待できます。

そのほかM&Aや資本提携の場面では、株主構成が複雑だと手続きが増え、交渉も難航しがちです。事前に自社株買いで整理しておくことで、意思決定が早まり、交渉が進めやすくなる場合があります。

自社株買いの目的・メリット(非上場企業の場合)

一方で、非上場企業が特定の株主から買い戻す場合には、以下のようなことが目的に挙げられます。

相続・事業承継で現金化でき、後継者の負担を軽くする

非上場企業株式を保有する株主が、相続などにおいて株式を現金化したい場合、企業に対して株式の買い戻し請求を行い現金化することがあります。
企業側にとっては株主数が減少するため株主の管理がしやすく、株式の分散化を抑制できるという効果もあります。

そのほか、会社の後継者が株式取得の資金を十分に確保できない場合、後継者の負担減のために現経営者の株式を会社が買い取る場合があります。

株主構成の見直しによる経営の安定化

非上場企業の株式は経営者の親族など特定株主に保有されるケースが一般的です。株主が複数にわたる場合、経営の意思決定に支障をきたすことがあります。

そのため自社株買いにより、複数の株主に分散した株式を集約して株式の分散化を防止し、経営の安定化を図ることが期待できます。

「自社の株価はどのくらいになりそうか」をあらかじめ確認しておくことは、自社株買いを判断する上で有効です。まずは、自社の価値を調べてみませんか?

自社株買いのデメリット・リスク

手元資金や自己資本の減少

自社株買いは会社の資金を使います。買い取り額が大きいほど、手元資金が減り、資金繰りや借入の与信に影響が出ることがあります。特に景気変動や売上の季節変動がある業種では注意が必要です。

成長投資や運転資金を圧迫する

設備投資、人材採用、販促、DXなど、成長のための投資機会は常にあります。自社株買いに資金を寄せ過ぎると、将来の成長スピードが落ちる可能性があります。「買い戻しを急ぐべきか」「分割して段階的に進めるべきか」は、資金計画とセットで考える必要があります。

価格設定・税務・株主間トラブルのリスク

非上場株式は市場価格がないため、価格の妥当性が争点になりがちです。極端な高値・安値だと当事者間に不満が残ります。極端な高値だと「みなし配当」と見なされて、株主に多額の所得税負担リスクが生じる場合がある点に注意が必要です。(自己株式取得では株主側にみなし配当が生じる場合があり、譲渡所得と課税区分がわかれるケースがあります。)

適正な買取価額を設定するためには、専門家の意見を参考にしながら、市場価格や企業の財務状況の総合的な判断が必要です。

株価の目安を把握することで、関係者間の合意形成をスムーズに進めませんか?トラブル予防の第一歩としてシミュレーションをご活用ください。

自社株買いでなぜ株価が上がるのか

自社株買いを行うと、株価上昇の可能性が高まります。その背景には、ROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)の影響があります。それぞれについて見ていきましょう。

ROE(自己資本利益率)の向上

ROE(自己資本利益率)は、企業がどれだけ効率的に資本を利用して利益を上げているかを測る指標です。ROEの数値が高くなればなるほど、株主資本を効率的に使って利益を上げられていることを示すため、投資家からの期待や企業評価が高まります。

つまり自己資本を用いて自社株買いを行うと、自己資本(株主資本)が下がるため、ROEの数値は自然と高まります。そのことで投資家からの期待が高まり、株価上昇に影響を及ぼします。

PER(株価収益率)の低下

PER(株価収益率)は企業の株価が利益水準に対して割高なのか、割安なのかを判断するために用いられる指標です。PERの数値が低いほど株価は割安であり、短期間で回収できることを意味します。反対に高い場合は投資コスト回収が長期化し、割高とみなされます。

PERは、株価をEPS(1株当たりの純利益)で割るため、自社株買いをして発行株式数株が少なくなると、必然的にPERの数値が下がり「割安な株」として投資家から注目が集まり、その結果、株価上昇が期待できます。

自社株買いの注意点

自社株買いを行う際には、以下の注意点に気を付ける必要があります。

財源規制のルール遵守

自社株買いは、原則として会社の「分配可能額」の範囲内で行う必要があります。さらに、法的に可能でも、資金繰りが厳しくなるなら実行すべきではありません。
金融機関との借入条件(財務制限条項など)がある場合、自己資本の減少が影響する可能性もあるため、事前に確認しましょう。

実行前のミニチェックリスト

1. 株価の目安を把握([株価算定シミュレーション)
2. 必要資金と資金繰りへの影響を試算
3. 分配可能額・借入条件・税務の論点を専門家と確認

いますぐ結果がわかる!株価算定シミュレーションはこちら

取得割合の判断

どの株主から、どの程度の割合を買い戻すのかで、効果もリスクも変わります。少数株主を整理したいのか、承継のために後継者へ集約したいのか、目的を明確にしましょう。
また、買い戻した株を消却するのか金庫株として持つのかで、将来の活用余地も異なります。特定の株主から取得する形では、株主総会の特別決議や他株主の売却機会に関する通知・期限管理が必要となる場合があります。

終わりに:自社株買いは「目的→価格→資金→手続き」で考える

自社株買いは、株主構成の見直しや事業承継に有効である一方、会社の資金を使う重要な経営判断です。成功のポイントは、次の順番で検討することです。


目的:何を解決したいのか(承継、株主整理、退職者対応など)
価格:合意形成のための根拠(まずは目安→必要なら正式算定)
資金:必要額と資金繰り、分配可能額、借入条件
手続き:決議・契約・名義書換・税務の整理

まずは、株価の“目安”をつかむところから始めると、検討が一気に前に進みます。最終的な実行は税理士・弁護士など専門家と相談のうえで進めましょう。

会社の価値は、必ずしも売上高だけで決まるわけではありません。まずは、自社の価値の目安を把握してみませんか? 株価算定シミュレーションは今すぐ無料でお試しいただけます。

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M&A マガジン編集部

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