黒字倒産とは?原因・対策から企業事例までわかりやすく解説

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帝国データバンクの調査※によると2024 年に全国で休業廃業解散した企業は 69,019 件と、前年から16.8%増加し、2016 年以降で最多件数を更新しました。また、休廃業した企業のうち 51.1%が直近損益で黒字の企業でした。本記事では黒字倒産に陥る原因や対策、事例についてご紹介します。

※帝国データバンク・全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024年)

この記事のポイント

  • 黒字倒産の主な原因は売掛金の未回収や過剰在庫、過剰投資などである。
  • 黒字倒産を回避するためには、キャッシュフロー管理、回収・支払サイトの調整、在庫管理の最適化が重要である。
  • 経営者は常に企業の現金流状況を把握し、早期に対策を講じることが重要であり、専門家のアドバイスを受けることも有効な選択肢である。

⽬次

黒字倒産とは

黒字倒産とは、企業が利益を上げている(黒字)にもかかわらず、決済資金が不足して支払いが滞り、倒産することを指します。

例えば、製品の販売で利益を出していても、顧客からの支払いが遅れる、あるいは在庫を大量に抱えて手元の資金が不足し、仕入れや人件費などの支払いができず、最終的に経営が行き詰まるケースなどが該当します。

黒字倒産と赤字倒産の違い

赤字倒産は経営不振で赤字が続いた結果、倒産に至ることを指します。そのほか混同しやすい言葉に「黒字廃業」があります。黒字廃業は、利益を上げているにもかかわらず、後継者不在などを理由に「経営者が自らの判断で事業を終了する」点で異なります。

黒字倒産が起こる原因

黒字倒産の直接的な要因は、端的に言えば「入出金のタイムラグ」ですが、過剰な在庫や設備投資なども要因に挙げられます。ここでは黒字倒産に陥る主な要因をご紹介します。

売掛金の未回収

企業は売上があってもすぐに現金が手元に入るわけではありません。商品やサービスの提供後に売上が発生したものの、未回収の状態にある代金が売掛金であり、法人間の取引では、一定の期日にまとめて支払いを依頼することが一般的です。

この売掛金の回収が遅延、もしくは回収不能になると、当然ながら企業の資金繰りが悪化し、売上が立っているにも関わらず倒産に至る可能性が高まります。

過剰在庫

過剰在庫は、保管などの費用の負担や、在庫処分のための値引きが資金繰りを悪化させます。また、例えばトレンドに商品・サービスが影響されやすい業界では、長期保管する在庫商品が売れ残り、資金が回収できないリスクが高まります。こうした過剰在庫は、製造業や小売業、販売業において特に注意が必要です。

過度な投資

無理のない範囲で適切な投資を行うことは、長期的な企業成長に不可欠である一方、過度な投資は、黒字倒産が発生する要因につながります。特に大型の設備投資を計画する場合には、資金繰りの管理に注意が必要です。

負債の増加

上記の原因に加えて、企業が多額の負債を抱えていて、その返済に追われる場合、利益が出ていても経営が立ち行かなくなることがあります。特に、利息負担が重く、それが利益を上回ってしまうような場合には黒字でありながら倒産に追い込まれることがあります。
また、金融機関からの借入返済額や納税額の増加も、手元資金の大幅な減少につながり、黒字倒産発生のリスクになります。

黒字倒産を回避する5つの対策


黒字倒産を未然に防ぐ、5つの対策をご紹介します。

キャッシュフロー管理の徹底

企業の経営において、単に利益を出すだけではなく、資金繰りやキャッシュフロー(資金の流れ)の管理が重要です。具体的には、現金収入と現金支出のバランスをしっかりと把握し、現金収入が現金支出を上回る状態を維持する必要があります。

キャッシュフロー 概要 含まれるもの(一例)
営業キャッシュフロー 本業で発生したお金の流れを示す ・商品販売で得た現金
・仕入れにかかった現金
・人件費、販促費 など
投資キャッシュフロー 投資活動で発生したお金の流れを示す ・新しい設備の購入代金
・投資有価証券の売却代金 など
財務キャッシュフロー 資金調達や返済に関連するお金の流れを示す ・借入による収入
・返済や配当金支払いによる支出 など

資金繰り表やキャッシュフロー計算書で現金の流れを可視化しておくことで、あらかじめ対策を講じることができます。

回収・支払サイトの調整

当然ながら売掛金の回収をできるだけ早期に、買掛金の支払いをできるだけ遅くに調整できれば資金繰りは楽になります。入金・支払いの取引条件の見直しを交渉し、入金サイクルを短縮する努力が必要です。

在庫管理の最適化

損益計算書(P/L)では在庫は経費として計上されません。在庫を抱えすぎると資金繰りに影響を与えるため、適切な在庫管理が必要です。
特に小売・卸売業の場合には、一定の商品在庫を保有することになりますが、現金化されるまでに時間がかかるため、過剰在庫を減らし、適時適量の仕入れを行うことで、キャッシュフローを改善することができます。

資金調達力の強化

資金不足に陥る前に、資金を常に調達できる体制を整えておくことも重要です。具体的には、取引先金融機関との関係強化や、複数の調達先を確保が挙げられます。また、短期資金、長期資金の視点で資金調達の計画を中長期的に立てておくことも重要です。

M&Aの活用

M&Aも対策の1つに挙げられます。外部の第三者に会社を売却することで、譲渡益や譲渡先の資本力により資金繰りを解消し、さらには事業承継の問題も合わせて解決することができます。

以上ご紹介した対策は黒字倒産を防ぐためだけはなく、経営全般の改善策とも言えます。経営者は帳簿上の売上や利益だけでなく、常に現金の流れを正しく把握し、早めに対策を講じることが大切です。また、専門家によるアドバイスや、必要に応じて資金調達を行うことも重要な選択肢の一つです。

黒字倒産の企業事例

最後に、黒字倒産に陥ってしまった企業事例についてご紹介します。

不動産会社A社の場合

マンションや商業施設の開発を行う不動産会社A社は、2008年に民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約2,000億円を超えていました。
売上高約1,000億円以上、経常利益約500億円以上を計上していましたが、実態としては営業キャッシュフローがマイナスの状態にありました。

同社が黒字倒産に陥った主な要因には、サブプライムローン問題に端を発し不動産市況が悪化する中、事業拡大を急ぐあまり新規不動産に多額の投資を行い在庫が増加、資金が滞留したことが挙げられます。

商社B社の場合

化学品や合成樹脂などを取り扱う商社B社は、2015年に民事再生法の適用を申請し、同年に上場廃止になりました。
直前の2014年には売上高約2,000億円以上、当期純利益30億円以上と過去最高を更新していました。しかしその実態は、営業キャッシュフローが5期連続でマイナスの状態でした。

同社が黒字倒産に陥った主な要因には、積極的に展開していた中国の景気減速の影響を受け、中国取引先の売掛金回収が困難になったことが挙げられます。

黒字倒産を回避するために

以上、黒字倒産についてご紹介しました。黒字倒産を回避するには、経営を行う上での基本であるキャッシュフローの管理や在庫管理など、堅実な経営体制の構築が求められます。また、企業の長期的な発展を視野に入れるならば、M&Aも有効な一手になりえます。

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