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業界M&Aトレンド2019

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前回コラムでは2018年~2019年のM&Aの全体動向について執筆しましたが、M&Aは業界ごとにもそれぞれトレンドがあります。 ここではM&A件数が特に多い業界について、2018年~2019年の最新動向をお伝えします。

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食品業界のM&Aトレンド2019 「30店舗の崖」をどう乗り越えるか

ここ数年では、当社で仲介させて頂いた、トリドールとアクティブソース(晩杯屋)やラーメンチェーンZUNDなどが特徴的な提携であり、特に外食業界のM&Aが急増しています。 日本M&Aセンターでは、外食業界においてだいたい30店舗くらいの規模が経営のひとつの分岐点になることに着目し、これを「30店舗の崖」と呼んでいます。30店舗近くの規模になってくると、社長のワンマン経営体制から脱却し、「本部機能」や「経営の組織化」が必要になってきます。 「経営者の勘」をもとに出店や採用活動をしてきたところから、本社に人事部・出店開発部を作ったり、上場を目指すケースでは会計士・弁護士などの採用をしたりするため、ここで一気に収益力が落ちていきます。 出店ペースの加速によりコストもかさみ、具体的には、営業利益が2~3億円から赤字あるいは1億円以下となって、プラスだったネットキャッシュがマイナスに転落することも珍しくありません。 この「30店舗の崖」を乗り越えることに時間が掛かると、流行が終わってしまったり、仕入れ値が高騰したりするなど、縮小を余儀なくされることもあります。 そこで、既に本部機能のある大手企業と提携することで、非常に良いシナジー効果が生まれるため、M&Aに進むケースが増えているのです。 最近では、InstagramやFacebookなどのSNSに食事の写真をアップする「食のファッション化」が進んできていることも注目すべき点です。今後は、アパレル企業と食品業界のM&Aが起きると予想しています。

  • 「30店舗の崖」をクリアする
  • 老舗の味を後世に残す
  • 食のファッション化が進む

IT/ソフトウェア/ベンチャー業界のM&Aトレンド2019 売上10~30億円のソフトハウスの譲渡が増加中

2018年はベンチャー企業のM&Aが活発化した1年でした。当社では、ベンチャー企業サポート室を立ち上げ、上場企業であるSHIFTと、A/Bテストツールを提供するアッションとの提携や、京セラコミュニケーションシステムによるAIベンチャー(ディープラーニング用いた画像解析)のRistの買収などのアドバイザーを務めました。 IT業界では2000年代に、NTTデータなど大手5社が「大企業にあるIT子会社やIT部門」をどんどん買収していきました。これらの大手企業は、リーマンショック後、海外企業を買収していきました。 近年では、売上10億円~30億円程度のソフトハウスの譲渡が目立ちます。WEB系と基幹系システム開発などの強みを活かし、人材採用や人材活用のためのM&Aが進んでいます。 また、大手企業の子会社売却や提携のアドバイスをすることも増加しています。東芝情報システムとデンソーの提携では、パラダイムシフトが起きている自動車業界において車載関連ソフトウェアの開発力強化を図るなど、大企業も「選択と集中」「本業加速」などのキーワードでM&Aを進めています。 なお、この業界では30代から50代のオーナー経営者が譲渡する事例が当社仲介の60%を占めており、「後継者不在型のM&A」とは違い、若手ベンチャー企業経営者のイグジット事例も目立ちます。若手経営者のイグジットの場合は、60%の経営者が株式譲渡後もそのまま社長を継続しています。 売却価額はEBITDAで5~6倍程度が一般的ですが、当社仲介案件には成長企業の売却事例も多く、全体の4分の1近くはEBITDAの10倍以上にて売却されています。

  • 売上規模10億円以上のソフトウェアハウスの譲渡が増加中
  • 組み込み開発業界では製造業・通信業界などの異業種との提携が加速
  • アップセル/クロスセルを実現するため、自社サービスを保有する企業同士の提携が急増

IT

建設・設備工事業界のM&Aトレンド2019 メガプラットフォーム企業を形成

これまで建設業界では新しい建物を建てることが主体で、発注者は「電気工事はA社、空調工事はB社、土木工事はC社」と各種専門工事会社に発注することが慣例でした。 今後は、リニューアル工事が増加していく流れの中で、発注者が「メガプラットフォーム企業(専門工事の請負のみならず、電気・ガス・機会設置からデータまでをインフラ企業としての総合的なサービスを提供する会社)」に発注する流れができていくでしょう。 大手通信工事会社などは、「通信インフラ」という枠を越えて「社会インフラ」へと脱皮し、その他業種においてもグループ形成が進んでいます。

  • 大手企業による「メガプラットフォーム」の構築
  • 売上5億~10億の電気工事会社の株価が上昇
  • 「採用ブランディング」により人材不足の波を乗り越える

建設業界

製造業のM&Aトレンド2019 垂直統合によりビジネスモデルを深化

2005年頃は液晶の需要が旺盛で、シャープが富士通ディスプレイテクノロジーズを譲り受けるなど、特定マーケットにおける提携が主でした。 リーマンショックで大きな構造転換を余儀なくされた2008年の終わり頃からは製造業全般で落ち込みましたが、新興国需要にも支えられ息を吹き返してきました。 近年では、生産ラインのIT化やネットワーク化が大きなテーマで、「部分最適から全体最適」を実現するための企画・設計力が注目されています。 特にオーダーメイドでの専門機械を設計・製作している企業にはM&Aにおいて高い株価がついています。 例えば、板金加工機械世界大手のアマダホールディングス(売上:約3,000億円)はプレス機向け自動化装置のオリイメック(売上:約90億円)を株価125億円で譲り受けました。 プレス機メーカーから自動化ソリューションメーカーへとビジネスモデルの変革を図っています。 また、旭化成や積水化成等の素材メーカーによる国内外の自動車部品メーカー(Tier1.2)の譲受が活発化しており、その理由としてはエンドユーザー(トヨタ・ホンダ等の自動車メーカー)により近いポジションをとることでより、企画・開発力を強化するためです。なお、「トヨタ」「ホンダ」「日産」などの系列を超えた提携も頻繁に起こっています。 製造業の現在のM&Aトレンドは、「本業加速型のM&A」がメインと言えます。 さらには中小の製造業においても、「後継者不在」という理由だけでなく、息子さんなど後継者がいても、株式を売却し、オーナーやオーナーの息子さんが譲り受け企業の子会社社長として勤務するケースが出てきています。

  • 優秀な技術者を抱える産業機械メーカーのM&Aが目立つ
  • 業界内での垂直統合を通じて顧客ニーズに応える
  • オーナー経営者が「第2の創業」のためのM&Aを選択

調剤薬局業界のM&Aトレンド2019 M&A件数は高止まり。IT化への対応が肝に

2018年最大のトピックスは、当社で仲介させて頂いた、大分県NO.1の地域薬局「永冨調剤薬局」と大手上場企業である「メディカルシステムネットワーク」の提携ですが、「中堅薬局×大手薬局」「小規模薬局×中堅薬局」などの組み合わせでM&Aが進行しています。 私たちは“6万店舗”が国内における拠点ビジネスの臨界点と定義し、「6万拠点の法則」と呼んでいますが、コンビニと同様に地域薬局も約6万店舗になり、ますます統合が進んでいます。2009年に大手10社のシェアはわずか9%でしたが、2018年には18%まで高まりました。 また、店舗のIT化が医療の質と経営の効率を高める肝となっており、カケハシの電子薬歴システム「Musubi」などのサービスが注目されています。 M&A件数が非常に多い調剤薬局業界では、過去に10社以上の買収経験がある買い手企業が数多く存在し、M&Aのレベルが非常に高い業界と言えます。価格のつけ方からPMIなどの買収後の統合までノウハウや知見が各企業に蓄積されています。一方で、ファンドや買い手企業、M&A仲介会社などが悪質なブローカーとして活動をするケースが増加しています。実際に業界内では、そういったブローカー会社が関わって「契約直前に売買価格が急落した」など、M&Aでのトラブルがいくつか起きております。日本M&Aセンター業界再編部では、そういったトラブルを未然に防ぐための「譲受け企業の格付け」や調剤薬局経営研究誌「Pharmaway」の刊行などを行っています。

  • 大手10社のシェアが2009年に9%→2018年には18%へ
  • IT化が調剤薬局経営の肝
  • 買収監査後に売買金額を下げるブローカーが増加

調剤業界

運送業界のM&Aトレンド2019 大手企業の物流子会社切り離しが進行

食品や機械などのメーカーでは、自社で物流部門や物流専門の子会社を保有する企業が多かったのですが、自社製品の運送だけでは成長力に乏しく、切り離して物流専門会社に売却するケースが近年増加しています。 これは2000年代のIT業界と同じ流れですが、専門企業のほうが採用力も強く、人手不足問題にも対応しやすいというメリットがあります。 また、運送業界の垂直統合としては、倉庫業界と提携することにより、自社の配送網の効率化を進めるためのM&Aが増加しています。 運送業界も調剤薬局業界同様に、約6万拠点あるため、今後統合が進んでいく業界と言えます。 例えばガソリンスタンドは1993年に6万拠点でしたが、2013年には3.5万拠点まで減少しました。街の電気屋さんは1980年には5.7万社でしたが、2010年には3.1万社とそれぞれ20年から30年かけて拠点数は半減しています。

  • 運賃値上げに成功する企業と苦戦する企業の二極化が進む
  • 実質債務超過でもM&Aの成立するケースが多い
  • 大手企業による物流子会社の切り離しが進む

業界再編部は、「調剤」「IT」「建設」「不動産」「食品」「製造」「物流」など業種ごとに専門特化したプロフェッショナルチームです。より詳しい動向を知りたい方は、各専門家までお気軽にご相談ください。

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著者

渡部 恒郎

渡部わたなべ 恒郎つねお

日本M&Aセンター 取締役

学生時代に起業を経験の上、日本M&Aセンター入社。2008年から2015年までの8年間で最優秀社員賞を3度受賞。 中堅・中小企業M&AのNo.1プレイヤーとしてM&A業界を牽引してきた。 トータルメディカルサービスとメディカルシステムネットワークのTOBは日本の株式市場で最大のプレミアムを記録した(グループ内再編を除く)。 2020年同社最年少で取締役に就任。2020年11月末時点において、 国内の時価総額1兆円以上企業における最年少の常勤取締役となった。 著書に「業界再編時代」のM&A戦略―No.1コンサルタントが導く「勝者の選択」』(幻冬舎、2015年)、「業界メガ再編で変わる10年後の日本」~業界・部署・技術の境界線がなくなる時代へ~(東洋経済新報社、2017年)がある。

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