コラム

PMIの現場から ~「日本型PMI」とは?~

竹林 信幸

株式会社日本PMIコンサルティング(日本M&Aセンターグループ)代表取締役

PMI
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「PMIで実施すべきことは何ですか?」と聞かれて、どんなことを想像しますか? 「DAY1(統合初日)までに100日プランを考えて、システム統合や拠点の統廃合、組織再編も準備して、テーマごとに分科会を立ち上げて、統合推進委員会で全体スケジュールの管理をしなくては・・・あと制度の統合も忘れないように・・・」 ―このように、実施事項を並べて考える方が多いのでないでしょうか。 世に出ているPMI本にも、概ねこのようなことが書いてあります。 しかし、実際に当社のPMI支援室がお手伝いしている中小企業同士のM&A後の現場には、上述のような場面はほとんどありません。 中小企業のPMIでは分科会もつくりませんし、統合委員会も設置しません。 「PMIとは何か?」と聞かれて頭で思い描くイメージと、中小企業のPMIで実際に取り組む実態には、少しギャップがあります。なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。

PMIの概念を変える~PMIを正しく定義する~

PMIとは「Post Merger Integration」の略語で、直訳すると「合併後の統合」という意味です。当然外来語です。 PMIという単語が日本に入ってきた2007年頃は、M&Aのことを「企業の吸収合併」という言い方をしたり、「シナジー効果」という単語がにわかに脚光を浴びたりした時期でした。 「M&Aは大企業がするもので、未知の世界のもの」というのが、当時、日本社会のM&Aに対する認識だったと思います。 その文脈の中で「M&Aが終わった後は何かやらないといけないらしいぞ」と理解されたのが「PMI」という単語です。「買い手が進める統合作業」という意味合いやニュアンスで使われ始め、「M&A後にシナジーを創出するための取り組み」を総称するようになって、現在に至っています。

両社が力を合わせるためには第三者のサポートがポイント

しかし、日本のM&A、特に中小企業の場合は合併も統合もしないケースがほとんどです。そこに合併とか統合といった概念が入ってくると、具体的な取り組みイメージが湧かないばかりか、混乱を招くこともあります。 そこで私たちは、「海外ではスタンダードとされているPMIのやり方(買い手が進める合併後の統合作業)ではなく、従来とは異なった概念でPMIを定義して実施する方が、日本の中小企業にフィットするのではないか」という考えに至りました。 当社のPMI支援室は、PMIを「合併後の統合」ではなく、「資本提携後に売り手企業と買い手企業がともに成長する過程」と定義し、売り手企業、買い手企業の双方をサポートしています。

日本型PMI~実践的な方法と事例~

現在、日本のM&Aの件数は増加しています。事業承継型から業界再編型、成長戦略型へと類型を多様化させながら、中小企業のM&Aは今後さらに増加していくものの思われます。 M&Aが企業成長のための選択肢として身近な時代になり、また、M&Aのゴールに対する認識も「成約から成功へ」と変わってきました。

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著者

竹林 信幸

竹林たけばやし 信幸のぶゆき

株式会社日本PMIコンサルティング(日本M&Aセンターグループ)代表取締役

国内外コンサルティング会社にて経営コンサルティング業務に従事。オペレーション改善、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)、M&A支援、企業再生、経営者向けのコーチングなど、豊富なコンサルティング経験を有する。 株式会社日本M&Aセンター入社後、2018年に日本PMIコンサルティング設立時に取締役就任、2020年4月より現職。

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