コラム

事業承継の時期だけがM&Aの判断基準ではない

金子 義典

著者

金子義典

日本M&AセンターM&Aコンサルタント(2017年6月時点)

M&A全般

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後継者問題を抱える会社がM&Aで解決、というのは浸透してきました。 しかし事業承継のタイミングだけでM&Aを考えていると、ベストなタイミングを逃してしまうかもしれません。 たとえば食品流通業界では、川下である小売業者からM&Aの波が起こっています。 小売業者がM&Aを行う狙いの一つに、「仕入れの見直し」があります。コスト削減が見込めるからです。このように食品小売業界は各エリアのNo.1企業がM&Aにより同県および同地域の事業者を買収し、再編を進めながら競争を繰り広げています。 食品小売業界がM&Aで再編されていく中、その川上の食品流通業界はどうなっていくのでしょうか?今回はそんな食品流通業界のM&Aの事例を見ていきましょう。

業界再編の波は身近なスーパーにも起こっている

後継者問題を認識していても

食品流通業を営むA社がありました。 老舗であるA社は、地域密着型のスーパーマーケットへの納品を主軸に事業を展開してきました。業績は堅調で、景気の波に大きく左右されることもなく、ここ数年横ばいの経営状態が続いていました。 社長には息子がいないため、事業承継について「いつかは検討しなければならない」という意識はあったものの、「あと5年くらいは猶予があるだろう」と悠々と構えていました。

食品流通業界の今後を考えると猶予はない

社長には気になることがありました。 アベノミクスによる日経平均などの株価の指標等の好調とは反して、スーパーマーケットでの消費動向は良い動きをしていないこと―消費税増税もあるため、消費動向は悪化していくこと―が見込まれると考えました。 A社の主要取引先であるスーパーマーケットの経営状況も順調とは言い難く、コンビニやドラッグストアに徐々にシェアを侵食されていました。該当地域の人口も減少傾向なので、新店舗の出店がない状況に、社長は不安を抱えていました。

突然起こる変化、その時会社は―?

そんなある日のことです。 主要取引先のスーパーマーケットが、隣接地域のスーパーマーケットとのM&Aを発表しました。 社長にとっては寝耳に水でした。取引は当面継続ということでしたが、今後を保証するものではありません。隣接地域のスーパーマーケットの納入業者と商品力や納入価格の面で比較され、取引条件の見直しは避けられないでしょう。最悪の場合にはその納入業者にとって代わられることもあり得ます。 自社努力だけでは太刀打ちできない業界再編の波が、A社を襲ったのです。

業界再編の波に立ち向かうために、M&Aを活用

後継者問題の解決だけでなく、業界再編時代を乗り越えるためにも、M&Aは有効な経営ツールです。「業界の波を読む」ことこそ中堅・中小企業が長く続いていくポイントです。

業界別M&A動向について詳しくはこちら

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著者

金子 義典

金子かねこ 義典よしのり

日本M&AセンターM&Aコンサルタント(2017年6月時点)

銀行勤務を経て、2007年日本M&Aセンター入社。事業承継M&Aをはじめ、中小企業から大手上場企業までを対象に、企業のM&A戦略コンサルタントとして活躍中。特に食品流通、食品製造分野においては、多くの成約実績を有している。

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