コラム

身売り・乗っ取りは本当か?「正答率10%未満クリニックM&A5つの誤解」

横山 朗

著者

横山朗

日本M&Aセンター医療介護支援部(2020年7月時点)

西山 賢太

著者

西山賢太

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

M&A全般
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M&Aという言葉を聞くとどのようなイメージを皆さんは思い浮かべるでしょうか?

「身売り」や「敵対的買収」というマイナスイメージを持つ方も少なくないと思います。 医療業界におけるM&Aはほとんど公にならないため誤解をされている方が多くいらっしゃいます。本稿では「正答率10%未満、クリニックM&A5つの誤解」と題して、医療業界におけるM&Aの真実をお伝えいたします。

1.身売り・乗っ取りは本当か?M&Aが今注目される理由

M&Aと聞くと条件反射で「身売り・乗っ取り」をイメージする方は未だ多いのではないでしょうか。筆者が日本M&Aセンターに入社する前、病院に勤務していた時は、「M&A=邪悪なもの」として認識をしていました。自分が誤った認識をしていたのに気づいたのは入社から数ヵ月経った頃です。ドラマや報道で見る大企業の派手な買収劇は医療機関のM&Aにおいては全くなく、日本国内のM&Aにおいても99%が友好的なものであると言えます。M&Aは身売りや乗っ取りではなく、後継者問題の有力な解決手法であるほか、企業同士の成長を実現するためのパートナーシップの実現として用いられる手法なのです。 昨今、医療機関である病院やクリニックでもM&Aを通じて後継者を探したり、経営基盤を強固にするためのグループ化を図る手法としても用いられています。

2.「子供が継ぐ」は本当か?子供が後継者という言葉を信じてはいけない理由

日本医師会総合政策研究機構が2019年に調査した結果をまとめた文献*によれば、無床診療所の後継者不在率が89.3%という驚きの結果が公表されました。子供が家業を継ぐのが当たり前だった昔とは異なり、「今や子供が家業を継ぐほうが珍しい時代」になったと言えます。

「親子で専門診療科が異なるための引継ぎは難しい」 「急性期病院の臨床医として生涯のキャリアを築きたい」 「承継後に院長として労務管理や経営に携わるのは不安」 「結婚をして都心に家を買った、子供を私立の学校へ通わせたく、生活圏を変えるつもりはない」

このように子供からクリニックの承継を断られてしまったという相談も増えてきています。医師という専門性が承継の障壁となっているだけではなく、医師が抱く価値観が変わってきているのは間違いありません。 しかしご安心ください。子供が家業を継がなくてもこの日本には毎年7,000人も開業したいと思っている医師がいます。その医師達の中で、誰かのクリニックを引き継いで開業したいと思っている方も数多くいるのです。

3.法人名・施設名が変わってしまうは本当か?

M&Aをすると「法人名や施設名が無くなる、変わってしまうのか?」というご質問を多く頂きます。 結論としては、法人名や施設名は、多くの場合、すぐには変わりません。 クリニックの施設名に現院長の名前が入っていることもありますが、この場合もすぐに施設名を変えるケースはほとんどありません。せっかくその地域で視認性があり認知されている施設名を変えることの方が集患に影響を与え経営的なリスクにもなるからです。新しい先生が着任してから患者さんが慣れるまでは名称はそのままとする方が多いです。どうしても法人名や施設名を変えてほしくない・残したいという場合は引継ぎ時の契約条項で定めることも可能です。

4.従業員が辞めさせられるは本当か?

従業員が辞めさせられることはまずありません。M&Aにおいて従業員の雇用や処遇は維持されるのが基本です。特にクリニックのM&Aでは従業員が大切に扱われます。なぜなら、新しい院長は初めての経営を任されながら診療も行わなくてはいけません。慣れない環境で仕事をしなければならず不安ななか、フォローしてくれるのが従業員です。患者様毎の癖や要望、書類の場所から問い合わせ対応の方法まで院内の全てを知り尽くしている従業員は新しい院長になっても大切な存在です。事業承継は経営者だけでなく、従業員も含めての承継ですのでご安心ください。

5.M&Aをした後に理事長・院長は辞めなくてはいけないのか?

M&Aをしたら必ずクリニックを辞めなければならないのかというと必ずしもそうではありません。「3年間後に引退をしたい」「週2だけ非常勤として勤務したい」このような希望を出して叶えられた先生もこれまで多くいらっしゃいました。また、理事長や院長として、クリニックに残るケースもあります。事業承継を検討する際は、現院長がこれからどのような働き方・暮らし方をしたいかまで具体的にお聞きします。そのご要望を叶えられる相手を探すのが私達、医療機関M&A専門コンサルタントの役割です。

M&Aを事業承継・拡大戦略・経営課題解決の選択肢の一つに

本稿では、「正答率10%未満、クリニックM&A 5つの誤解」と題して、特に質問の多い5つの疑問に関してお答えをしました。M&Aに対するイメージは、日に日に変わって来ておりますが、まだまだ誤解が多いのが実情です。M&Aを選択するかしないかは別として、事業承継や今後の拡大戦略、経営課題解決の選択肢として有効であるため、医療機関経営者の皆様にも適切にご理解頂きたく本稿を書かせて頂きました。クリニックM&Aをもっと知りたい・理解したい方はお気軽に日本M&Aセンターまでお問い合わせください。医療機関の事業承継・M&Aを専門とする専任メンバーが誠心誠意対応させていただきます。

著者

横山 朗

横山よこやま りょう

日本M&Aセンター医療介護支援部(2020年7月時点)

外資系大手製薬会社出身。在職中にMBAを取得し、ヘルスケア領域の経営者に貢献すべく日本M&Aセンターに参画。 クリニックの事業承継を多く手掛け、地域医療の存続に尽力している。

西山 賢太

西山にしやま 賢太けんた

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に携わる。その後大手医療法人グループにて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営支援に取り組んでいる。

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