先行きが見えない今こそ真剣に考える クリニックの事業継続・承継方法3箇条

横山 朗

著者

横山朗

日本M&Aセンター医療介護支援部(2020年7月時点)

西山 賢太

著者

西山賢太

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

M&A全般
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[表示]

新型感染症が猛威を振るうなか、あらゆる業界で景気の見通しが一段と厳しくなり、法人、従業員とその家族、そして患者を守るために事業継続・承継に関しての相談が全国のクリニックから寄せられています。 世間がこのような状況の中、クリニックの事業継続・承継方法の一つの手段として多くの医療機関に注目されている第三者承継について、正確な情報を本稿にてお伝えいたします。

事業継続・承継を考え始める『ベストタイミング』は、 体力・気力・業績も順調な55歳から

まずは、下記のイメージが貴院に当てはまるか確認をしてみましょう。1つでも当てはまれば、クリニックの事業継続・承継を考えるベストタイミングを迎えているかもしれません。

(1)開業から数十年が経過、患者も安定して来院し経営も順調 (2)臨床・診療の腕にも自信あり、若い医師には負けない、まだまだ第一線でいける (3)長男は勤務医、次男は医学部在学中、後継者候補も万全だ

クリニックの事業継続・承継を考える時期はいつが最適なのか、それは「55歳から」と断言できます。開業してから十年、数十年が経ち、クリニックの業績も順風満帆、診療の腕にも磨きがかかり、息子は勤務医として働き、次男は医学部在学中。先行き不安がほとんどなく余裕のある時は、様々な情報を整理整頓し、時間に余裕を持って検討・決断ができるからです。

世間では定年退職を迎える65歳が第二の人生のスタートと呼ばれ、新しいライフプランを考えるタイミングでもあります。長年付き添い支えてくれた奥様が好きな旅行を一緒に楽しむ、趣味の釣りを毎週楽しめる場所でゆっくりと暮らす、孫の世話を間近で見てあげるなど色々な場面が思い浮かびます。

65歳という節目を見据え、今だからこそ事業継続・承継について真剣に検討してみませんか? 早いと感じるくらいが丁度いい。これが実態であり、事業継続・承継は「検討は早めに、決断は慎重に」が鉄則です。

適切な『相談先』とは?正解は情報と経験を持ち秘密保持を徹底できる企業

事業継続・承継を真剣に検討しようと思い立った時、悩ましいのは相談相手です。親・親族・友人・先輩後輩・金融機関・会計事務所・出入り業者など様々な候補が上がると思いますが、むやみやたらに誰にでも相談を持ち掛けることは避けてください。

クリニックという単体の事業でも様々なステークホルダー(利害関係者)が関与しているため、情報管理は徹底する必要があり、その相談先は限定するのが鉄則です。

最初の相談先として適切なのは、「情報と経験を持ち秘密保持を徹底できる企業」です。具体的には、(1)初回面談あるいは電話口で秘密保持に関する説明と契約をしっかりと行う企業、(2)クリニックにおける事業承継の成功事例を豊富に提供できる企業、(3)昨今の医療情勢や医療制度、トレンド、スキーム(事業承継の方法)を押さえている企業です。

日本М&Aセンターは、設立30年で累計5,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業継続・承継の支援をしてきた会社です。相談の段階でも秘密保持を徹底するのはもちろん、病院・クリニック・介護事業の第三者承継を毎年100件近く成功させてきた医療・介護分野の専門集団、医療介護支援部があります。

最初の相談先に悩むことがあれば、気軽な相談窓口として日本M&Aセンターの医療介護支援部までご連絡ください。下記のようなご質問にも誠心誠意ご回答差し上げます。

(1)相談をすべき相手・してはいけない相手 (2)事業継続・承継のメリット・デメリット (3)後継者候補に確認すべき事項とタイミング (4)創業者利益(譲渡対価)の算出方法とその金額

事業承継や第三者承継(M&A)を生業とする会社が昨今非常に増えておりますが、株式会社とは違う「医療機関の事業承継」に慣れている企業は限られます。くれぐれも相談先にはご注意いただければと思います。

逆転の発想で考える、まず先に第三者承継を検討するメリット

クリニックの事業継続・承継において最も大きな課題は、託せる誰かが近くにいるか?という後継者問題です。事業を継続する・承継を実行するということは経営を委ねるだけでなく、「ヒト・モノ・カネ」を引き継ぐことになります。 長年当院に勤めてくれた従業員、患者の診療記録を綴ったカルテ、借入金や運転資金などのお金も含まれます。目には見えない患者との信頼関係や地域における認知度、近隣医療機関の医師との関係も、数字では測れないクリニックの財産として重要視されています。これらを託せる後継者候補がいるか、ご子息・ご親族含めて冷静に考えてみましょう。

一昔前、後継者候補といえば子供や娘婿などの親族から選び、いなければ最後の手段として第三者への承継を検討するのが一般的でした。しかし、子供や娘婿が医師としての経験を十分に積み、経営者としての素質があるかどうかまで判断を待っていると、事業継続・承継のタイミングを逃してしまうケースが散見されてきました。

いざ承継の話を持ち掛けようとした時には、子供や娘婿から「臨床医として病院で腕を磨きたい」「結婚相手と都心部で暮らしたい」「全国・海外を回り様々な医療を経験したい」など、想定しえない回答が返ってくる事例も実際にありました。

そこでお薦めしているのは、まず先に第三者承継から考えるという逆転の発想です。クリニックの事業価値の評価や事業継続によるメリット・デメリットを可視化し、子供や娘婿も交えて家族会議を行い、それぞれの意見や希望を聞いた上で第三者承継に舵を切るか、子供や娘婿が適齢期を迎えるまで待つかの判断ができます。

「私のクリニックを継ぐか?継がないか?」の二者択一の質問を投げかけるのではなく、現状と選択肢を、定性的に定量的に整理し、共有した上でなければ、正しい検討がご家族もできないのです。

仮に第三者承継に至った場合でも落ち込む必要はありません。経営が順調なクリニックを時間・精神的に余裕のある状態でお相手探しを始められるため、法人の評価も高くなりますし、納得のいく相手が見つかるまで待つという選択も可能です。

開業した医師であれば、いつか必ず来る事業継続・承継の壁、世間がこのような状況下だからこそ今真剣に考えてみるのはいかがでしょうか。

本稿では、事業継続・承継を検討する上で大事な『タイミング』『相談先』『承継方法』の3箇条を特筆すべき重要なポイントとしてお伝えいたしました。新型感染症が猛威を振るうなか、事業継続・承継を考えたいという声を多く頂き本稿の執筆となりました。 まだまだ余談を許さない状況下ではございますが、これを機に情報収集を始めて頂くきっかけになれば幸いです。私達は、直接医療行為は行えませんが、医療機関の経営者である皆様を、経営面からサポートすることで、「地域医療を守り、永続・発展させるために医療を繋ぐ。」この使命のために、当社だからできることを全うしたいと考えております。

著者

横山 朗

横山よこやま りょう

日本M&Aセンター医療介護支援部(2020年7月時点)

外資系大手製薬会社出身。在職中にMBAを取得し、ヘルスケア領域の経営者に貢献すべく日本M&Aセンターに参画。 クリニックの事業承継を多く手掛け、地域医療の存続に尽力している。

西山 賢太

西山にしやま 賢太けんた

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に携わる。その後大手医療法人グループにて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営支援に取り組んでいる。

この記事に関連するタグ

「事業承継・医療介護・業界再編・経営者」に関連するコラム

徹底比較!「新規開業」VS「承継開業」

M&A全般
徹底比較!「新規開業」VS「承継開業」

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

承継開業をおススメする3つの理由

M&A全般
承継開業をおススメする3つの理由

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

事前に知っておきたい!「クリニック開業の落とし穴」

M&A全般
事前に知っておきたい!「クリニック開業の落とし穴」

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

身売り・乗っ取りは本当か?「正答率10%未満クリニックM&A5つの誤解」

M&A全般
身売り・乗っ取りは本当か?「正答率10%未満クリニックM&A5つの誤解」

M&Aという言葉を聞くとどのようなイメージを皆さんは思い浮かべるでしょうか?「身売り」や「敵対的買収」というマイナスイメージを持つ方も少なくないと思います。医療業界におけるM&Aはほとんど公にならないため誤解をされている方が多くいらっしゃいます。本稿では「正答率10%未満、クリニックM&A5つの誤解」と題して、医療業界におけるM&Aの真実をお伝えいたします。1.身売り・乗っ取りは本当か?M&Aが今

準備が必要なお金は半額以下? クリニックの承継は高値案件こそが狙い目?

M&A全般
準備が必要なお金は半額以下? クリニックの承継は高値案件こそが狙い目?

クリニックの譲受けを検討されている際、後継者を探しているクリニックの譲渡希望価格を見て「これほど高額であれば、新規に開業した方がいいのでは」と感じた経験を持つ方は、少なくないのではないでしょうか。クリニックの開業を検討する際に「新規開業と承継開業を金額で単純比較することは危険」という点に留意が必要です。本記事では承継案件における、譲渡希望価格の捉え方、検討ポイントについて事例を交えてお届けします。

不安・労力・費用を少なく。承継開業のメリット

M&A全般
不安・労力・費用を少なく。承継開業のメリット

更新日2020月3月9日1\.開業の新しい選択肢、承継開業が選択され始めた理由クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めていますが、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。本稿では、「承継開業」が注目をあびる理由と共に、そのメリットをお伝えいたします。承継開業が注目を浴びた背景には、全国のクリニックで跡継ぎが見つからないという後継者問題に起因しています。医

「事業承継・医療介護・業界再編・経営者」に関連する学ぶコンテンツ

「事業承継・医療介護・業界再編・経営者」に関連するM&Aニュース

ニシオホールディングス、子会社サコスの建設機械レンタル事業を子会社の西尾レントオールに承継

ニシオホールディングス株式会社(9699)は、連結子会社であるサコス株式会社(東京都品川区)の建設機械レンタル事業を、連結子会社である西尾レントオール株式会社(大阪市中央区)へ承継する吸収分割を実施することを決定した。サコスを吸収分割会社とし、西尾レントオールを吸収分割承継会社とする吸収分割方式。サコスは、一般停電用・非常用発電機や鉄道軌陸工事用機械等の特殊機のレンタル事業、仮設・本設電気工事事業

オカモト、ガソリンスタンド運営などのアスクラフトを買収

株式会社オカモト(北海道帯広市)は、2024年9月30日付で、株式会社アスクラフト(岩手県奥州市)の全株式を取得、事業承継し子会社化した。オカモトは、「株式会社オカモト」「株式会社ヤマウチ」の純粋持株会社として、オカモトグループ全体の経営管理を行っている。アスクラフトは、ガソリンスタンド・車検整備・板金塗装を展開する。日程株式取得:2024年9月30日

東北新社、放送送出事業を放送・配信運用代行のプラットワークスに譲渡

株式会社東北新社(2329)は、、2024年12月1日を効力発生日として同社の放送送出事業を、新たに設立する会社(以下:新設会社)に吸収分割(以下:本会社分割)で承継させたうえ、新設会社の全株式を株式会社プラットワークス(東京都江東区)に譲渡すること(以下:本株式譲渡、本会社分割及び本株式譲渡を以下:本取引)を決定した。東北新社を吸収分割会社、新設会社を吸収分割承継会社とする吸収分割方式。また、本

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース