なぜPAPABUBBLEはファンドと組んだのか?8年前の決断と、いま振り返る成長の意味

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バルセロナ発祥のアートキャンディショップを展開するPAPABUBBLE(パパブブレ)は、2017年10月にジャフコグループが運営するファンドの資本参加を受けました。当時のオーナーの決断、またその時の迷いや決め手についてまずは動画をご覧ください。

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PAPABUBBLEに見る、次の成長カーブの描き方

「ファンドに会社を売る」という言葉には、今なおネガティブな印象を抱く経営者も少なくありません。しかし、PAPABUBBLE(パパブブレ)の事例は、その認識がすでに時代遅れであることを示しています。
成長の踊り場に立った企業が、次の成長カーブを描くためにファンドというパートナーを選ぶ。それは“出口”ではなく、“成長戦略の選択”です。

PAPABUBBLEが抱えていた構造的課題

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(1号店 東京都中野店)

PAPABUBBLEは、スペイン・バルセロナ発祥のアートキャンディブランドとして2005年に日本1号店を開業しました。職人が店頭でキャンディを製造するライブパフォーマンスを強みとし、都市部を中心に店舗展開を進めてきました。

他方、日本展開開始から10年以上が経過する中で、同社は以下のような課題を抱えていました。


• 事業の軸が来店・人流依存型の店舗売上に集中していた
• 職人技術を強みとする一方で、組織・管理体制が成熟途上であった
• ブランド力はあったものの、事業領域はキャンディ単一に近い構成であった

こうした状況下で、2017年10月、PAPABUBBLE JAPANはジャフコグループが運営するファンドの資本参加を受け、ファンドとのパートナー関係をスタートさせました。

ファンド参画後に進められた施策/経営基盤の強化と組織整備

ジャフコの資本参加後、PAPABUBBLEはブランドを維持したまま事業基盤の整備を進めました。公開情報によれば、ファンド参画後も創業来の「手作り」「店頭製造」「体験価値」を維持しつつ、経営管理や成長投資を実行できる体制を構築しています。

事業ポートフォリオの多角化

ファンド参画後の大きな変化の一つが、M&Aを通じた事業ポートフォリオの拡張です。

• 2021年:洋菓子ブランド「ヴィヨン」をグループ化
• 2022年:老舗スイス菓子ブランド「バッハマン」の事業承継
• 2025年:洋菓子事業「sLier」の譲受

これにより、キャンディに依存しない複数ブランド体制が構築され、ギフト需要や自家需要を含めた収益構造を持つグループへと拡張しました。

コロナ禍を経た再成長

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新型コロナウイルス流行期には来店型ビジネスとして一定の影響を受けたものの、事業継続と再成長を重視した取り組みが続けられました。

結果として、2022年から2025年にかけて売上高は約2倍に成長し、利益も改善していることが業界誌のインタビューで明らかにされています。

決算・公開資料によれば、PAPABUBBLE JAPANの売上高は2024年8月期で約16.3億円、従業員数は100名規模まで拡大しています。

JAFCO参画後、更なる成長を進めるための「次のM&A」

ファンド参画から約8年が経過した2025年8月、ジャフコは保有するPAPABUBBLE JAPAN HDの株式100%を、株式会社アカツキへ譲渡する契約を締結しました。

ジャフコはプレスリリースにおいて、2017年の資本参加以降、成長戦略をパートナーとして一貫して支援してきた同社が創業20周年を迎え、さらなる持続的成長フェーズへと移行したことを示しています。

この取引は、ファンドとのM&Aが企業の終着点ではなく、成長ステージを更新する一つの通過点であることを示す事例といえます。

次のパートナーと描く「100億宣言」

PAPABUBBLE JAPANは、新しいパートナーと次の成長フェーズとして売上高100億円企業への進化を掲げました。
同社は「100億宣言」を通じて、2030年に売上60億円、2035年に売上100億円という明確な中長期目標を公表し、売上高100億円実現に向けた下記のような具体的措置を公表しました。

• 直営リテール拡大:キッチン型旗艦店5店舗を出店
• デジタル成長戦略:EC売上比率を12%から30%へ引き上げ
• 高付加価値チャネル強化:外商売上を現状比15%から年6〜7億円規模へ拡大
• 中長期成長戦略:2030年にグローバルHQ化、商標権取得
• 人的資本投資:パフォーマー(飴職人)の待遇を5年間で給与総額2倍に引き上げ

PAPABUBBLEのM&A事例が示すもの

PAPABUBBLEは、

• ファンド参画により経営基盤を整備し
• M&Aを活用して事業領域を拡張し
• コロナ禍を経て再成長を果たし
• 次の成長フェーズに向けて新たな株主へバトンを渡した
• 2回目の譲渡により更なる急成長を目指している

という経路をたどっています。

ここで行われたのは「会社を売る判断」ではなく、ファンドを成長パートナーとして迎え入れ、持続的成長を実現するための戦略的意思決定です。

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