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逆境に負けないお菓子メーカー「フジバンビ」のチャレンジ

広報室だより
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九州・熊本のお土産菓子として有名な「黒糖ドーナツ棒」。百貨店やスーパーマーケットなどで開かれる九州フェアや物産展で目にした方も多くいるはずです。外はサックリ、中はしっとりな食感と優しい黒糖の甘みが特徴で、熊本市に本社を構える菓子メーカー「株式会社フジバンビ」の主力商品です。創業70年を超える老舗は2018年、PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)である日本投資ファンド(J-FUN)と資本業務提携を結び、新社長を迎えて熊本のお菓子会社から「全国区のお菓子メーカー」になるべく挑戦を続けています。外部招聘でトップとなった田中三正代表取締役社長に取り組みと想いを聞きました。

コロナ禍の打開策は「新商品の開発」と「販路の拡大」

新型コロナウイルスの世界的な流行で、国内では外国人観光客によるインバウンド消費と観光需要が消滅し、観光産業は大きな打撃を受けました。観光土産が売上の8割以上を占めていたフジバンビも苦境に立たされました。ただでさえ会社は当時、三期連続で赤字が続いており、経営環境も緊急事態を迎えていました。コロナショック前の2019年に日本投資ファンドが外部招聘し、3代目社長となった田中社長は話します。「コロナの危機に勝つんだと、社員のモチベーションは高まっていた」と振り返ります。

大手菓子メーカーで取締役を務め、菓子業界に明るい田中社長は「新商品の開発」と「販路の拡大」で会社の難局に立ち向かいました。新商品の開発では、主力商品のドーナツ棒を九州のご当地味に仕立て、次々に新フレーバーを発売。福岡ならあまおう苺、大分はカボス、宮崎はマンゴーといったヒット商品につながりました。田中社長の人脈もフル活用し、誰もが知っている森永製菓のミルクキャラメル、ミルクココアとのコラボ商品も発表。市場調査を元にピスタチオを取り入れた新商品など時流とトレンドに合わせたラインナップを揃えて新たな顧客の開拓に成功しました。

ファンドのネットワークを活かした新規開拓

販路拡大にも大きな成果がありました。従来の九州エリアを中心としていた営業エリアを改め、関西と東京に営業拠点を新設。ドラッグストアやスーパーなどにも営業マンが出向き、地道な営業活動を続けました。小売で絶大な人気を誇るコストコなど大口の販売先を獲得し、一般消費者向けの流通でも広がりを見せました。日本投資ファンドの森沢雄太執行役員は「ファンドの強みとネットワークを活かし、ドラッグストア大手のウエルシア薬局の紹介や商品導入などを通して、今まで積み上げてきたお土産菓子のブランドイメージも損なうことなく、消費者の認知も高まりました」と語ります。

2割弱だった一般流通の売上比率は短期間で、半分程度にまで急成長しました。「我々は熊本でナンバー2の土産菓子メーカー。コロナで観光土産の売上を二倍、三倍にすることは難しいが、一般消費者向けのマーケットにチャレンジすることで道が開けた」と田中社長は語ります。コロナ禍の緊急事態にも経営判断で先手を打ち、「土産メーカーでいち早く一般消費者向けに販路を切り替えられた」と話します。一般的な中小企業の強みに挙がる迅速な意思決定のスピード感が危機で効果を発揮したとも言えます。田中社長は「大企業とは違い、思い付いたことがすぐに実行できる」と会社の強みを強調します。

着実な成果を生み出すハンズオン経営

企業の新たな成長戦略のための施策にも取り組んでいます。若手を積極的に登用し、新しくマーケティング室と商品開発室を設立。常に変化に対応できる組織改革も進めています。「業績中心の会社になっていくことが大事」と田中社長は企業の方向性を示します。商品の原価計算を一からやり直し、広告宣伝費など固定費の見直しにも着手。コロナの影響を受けながらも就任後に黒字経営に転換させました。「ものづくりが安定してきた」と会社の変化を語ります。黒字化によって従業員の自信にもつながり、「意識が変わってきた」と目を細めます。休日取得日数と昇給も増えたことで「従業員の満足度は上がっているはず」と、ハンズオンのマネジメントの成果も広がっています。

株式会社フジバンビの商品ラインナップ

またフジバンビのみならず、J-FUNの他の投資先でも田中社長の手腕は発揮されています。石川県小松市で観光土産菓子の製造を営む株式会社たくみやは、コロナ禍での観光客減により、大きなダメージを受けていました。業績挽回のため一般流通市場への参入を図るも、同じ菓子業界においても、観光土産市場と一般流通市場では商慣習が異なり、新規参入が難しく苦戦が続いていました。そこで田中社長をたくみやグループの取締役に招聘。フジバンビの営業網を活用しながら、たくみやの主力商品であるタルトを一般流通市場に展開させ、フジバンビ同様に森永製菓とのコラボ商品の開発等を進めました。その結果、わずか数か月で大きな売上を生み出し、業績挽回に寄与しました。フジバンビとたくみや両社で取締役を務める日本投資ファンドの安達公平副部長は「企業文化や商慣習が異なる環境下において、J-FUNグループとして大きなシナジーが生まれた事例」と語ります。

求められる変わり続ける力

ウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代には危機に対応し、変化する力が今まで以上に求められています。想定外のコロナ禍の苦境から脱するためには、企業や働き手は環境の変化を感じ取り、常に変化し続けなければなりません。田中社長も強調します。「コロナの時代には会社の戦い方も武器も変え、会社の見え方すらも変えなければならない。これからも茨の道が続きます」と気を引き締めます。「日本投資ファンドと二人三脚で、フジバンビをさらに業績中心の会社に変えていきたい」と語りました。

日本投資ファンドは日本M&Aセンターと日本政策投資銀行(DBJ)の共同出資によるファンド運用会社で、中堅・中小企業を中心とする未上場企業を支援するPEファンドとして、地域の金融機関とも連携して真の地域密着型ファンドを目指しています。これからも地方創生の実現に向けて企業と一緒に歩んでまいります。

著者

M&A マガジン編集部

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