コラム

食品企業と物流企業のM&Aについて

白鳥 雄飛

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 シニアチーフ

業界別M&A
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こんにちは。日本М&Aセンター業種特化事業部のの白鳥です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、食品卸領域から関連して、食品×物流に関わるM&Aのメリットや大切なポイントについて解説してまいります。

なぜ今この食品×物流の組み合わせが注目されているのか?

当社で成約も多い、物流関係と食品関連会社とのM&A

食品関連会社と物流系の企業とのM&Aについて皆様どのようなイメージがございますでしょうか?
件数で振り返ると過去10年間で25件以上の国内実績があり、また当社でも約10件以上の成約数があります。
年間約3,000件のM&Aが行われている中でみると少なく見えるかも知れませんが、私はもっと注目されるM&Aと認識しています。

なぜこの組み合わせのM&Aが実施されているのでしょうか?
私の過去のこの手のクライアントからの情報も含めて考察させて頂きます。

主にこの手のM&Aで実施される理由は、配送や倉庫保管に関わる内製化によるコストリダクションや、自社における倉庫、物流拠点を広げて賞味期限の早い商材を取り扱っている野菜生鮮加工系の会社であれば、商圏を広げられるため、と書くと非常にシンプルになってしまいますが、企業が非連続の成長を目指していくためには非常に有効な手段だと考察します。

まず単純な話ですが、自社で物流網を広げようとする際には、以下のような3つの方法があります。

  1. 外注して物流網を整備する。
  2. 設備投資して工場、倉庫を建設する。
  3. M&Aを会社ごと丸ごと取得する。

まず1に関しては、一般的に思いつく手段で手っ取り早いですが、その一方で当然物流会社の利幅分のコストが上乗せされること、また発注元が複数社あるため自社にカスタマイズした取引がしづらい点がデメリットになります。

また2については、土地探しから始まり、倉庫の設計、建設と進めていくため数年単位の時間と数億のコストがかかります。

また採用、地に根差したルール、配送ルートの知恵、入出庫管理などノウハウも必要であるため、よほど既存事業の超近隣でない限り現実的ではないと思います。
ここですべての上記問題を解決するのが、有効的なM&Aになります。

食品×物流M&Aの注意すべきポイントと重要な論点とは?

この領域のM&Aでのメリットを列挙すると下記のような点になってきます。
まず物流網を広げたいニーズは往々にして、現本社から遠隔地での物流拠点、倉庫機能の獲得です。

その時の懸念点は先にあげた、取引先の選定の問題、入庫出庫管理の個社カスタマイズ、建築にかかる時間とコスト、採用、地元のルール、配送ルートの知恵などがあがりますが、M&Aでは譲渡企業が持っている資産、取引先、人材などすべてを友好的に譲受けするため、このすべての問題が解決されます。

一方でこの領域のM&Aで買い手、売り手として気をつけないといけないポイントは何かを考えたいと思います。

M&Aの手順を簡単に記載すると下記の流れとなりますが、その途中で買収監査という買手企業が譲渡企業の様々なリスクを洗い出す作業が発生するのですが、その際の重要なポイントについて過去の経験で実際にあった話も踏まえて、列挙したいと思います。

1.冷蔵、冷凍倉庫業を営んでいる場合は商品在庫をしっかりみる必要がある。

実際にあった話では、過去冷蔵庫が故障してしまい、冷蔵商品が不良在庫になってしまった。一応適切な手順で廃棄したものの、簿価上数年以上、商品在庫に科目計上されてしまっていた。

2.配送業者の配送賃料のランクについて。

これは配送業者によって個数と重量、エリアでA、B、C、Dと単価設定の料金ランクがつきます。この一ランクの違いは非常に大きく、AとBのランクが違うと20%ほど配送費用が変わってくることもあります。

そのときに大事になるのが、積み荷段ボールに重量記載があるか?体積とのバランス、またベタ積みで対応可能かどうか?取引している業者ごとで対応や方針も変わってきますので注意すべきポイントです。

3.冷凍庫の冷却温度帯は重要なのは当然ですが、冷媒についてはしっかり確認を取るようにしてください。

例えばフロンのR22の冷媒素材は温暖化環境保全の観点で2020年から製造停止になっていますが、流通していて機能している設備は多くあります。これらは2035年までに完全入替えが必要といったニュースもありますので、この辺りの条例の変化への対応や設備投資金額等をしっかり見積ることが必要になってきます。

4.その他、業者との関係性でどれだけの常時補完が可能であるか?

入出庫料、冷却料の設定の仕方並びに改定方法、またニラやゆずなど他に匂いが遷移してしまうような商品を保管しているかどうかも双方事前に確認が必要になってきます。

今後どのようにパートナーを探していくべきか?

食品は賞味期限があり配送のスピードが大事になってくる業界であるため、お相手探しをする際に考えることは、大きく下記2つです。

  1. 中長距離遠隔地での拠点として機能すること
  2. 前段でのリスクを事前に洗い出したしっかりとした案件を検討する

この2点を重視してお相手を探していく必要があると考えます。

まず1の点で行くと、近距離でのM&Aはまず、仮に情報漏洩した際に既存取引先剥落のリスクが譲渡企業の不安材料です。
また譲受企業にとっては近距離の物流は既存取引先でカバーされることが多いため、やはり物流の中距離と言われる約300キロ以上離れた遠隔地同士のM&Aがポイントになります。

この距離感でのM&Aになりますと、譲渡企業が普段お付き合いしている地方銀行を活用したマッチング力ではいいお相手が探せないことが多いのではないかと思います。

一方で当社の場合は全国各地に情報網を張っております。仮に1社譲渡企業があった際には約100社以上のマッチング候補先をお出しできる強力な買手部隊が存在しております。こういった、しっかり全国規模でお相手を探せる専門仲介会社に依頼することを強くお勧め致します。

また2の点に関しては、我々は常時年間約10,000社の譲渡企業との相談を受けており、その中から着手金をお支払いしても譲渡を希望する約1,000社と当社と専属の仲介契約を締結しております。また譲受企業へ案件を提案する前に、当社社内で約30名の弁護士、公認会計士、社労士、司法書士など士業の専門家を通してリスクの洗い出しを実施しております。

従いまして、この2点の観点からも食品業界で部流麺を強化していきたいという企業様や、物流面で食品業界へバリューチェーンを伸ばしていきたい企業様、また事業承継にお困りの企業様はまず当社の方へお気軽に無料相談のご依頼を頂くことが第一ステップになるかと存じます。

いずれにしても食品、物流関係にかかわる皆様の中で、事業承継に困っている、どんな相手先が想定されるのか、譲渡対価はどれくらいの想定になるのか、どんな進め方になっていくのか、ご相談だけでもお気軽に下記の連絡先から頂けますと当社専門コンサルタントでご相談ください。

いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室松原よりお送りいたします。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

白鳥 雄飛

白鳥しらとり 雄飛ゆうと

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 シニアチーフ

1985年、宮城県仙台市生まれ東京工業大学卒業後、㈱リクルートにて、法人営業を経験。その後、㈱日本М&Aセンターに入社。食品業界支援室にて、食品業界を中心に上場企業から中堅・中小企業まで幅広くM&Aの支援を行っている。事業承継、成長戦略型のM&A、海外M&A、ファンドへのM&Aなど携わった経験があるが特に売手買手ともに40代の若い経営者のM&A支援に多く実績を持つ。

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