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後継者不足の現状とは?中小企業の事業承継を解決するカギはM&A

事業承継
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後継者イメージ

経営者の高齢化にともない「後継者がいない、見つからない」といった後継者不在の問題は年々深刻化し、社会問題として取りざたされています。本記事では、後継者不足の現状や事業承継を成功に導くための後継者育成のポイントなどについて解説していきます。

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後継者不足の現状

現在、日本は超高齢社会に突入し、経営者の平均年齢は60歳を超えています。経済産業省の発表によると70歳以上の経営者が245万人、その半分の127万社が後継者未定であり、10年間で60万社が黒字廃業の危機にあるとされています。
東京商工リサーチが公表したレポートによると、後継者不足を起因とする「後継者難倒産件数」は2021年上半期(4-9月)に181件と過去最多の件数を記録しました。中小企業の後継者不足は個々の企業だけの問題だけではなく地域経済に影響を及ぼすため、後継者不在、事業承継は大きな社会問題と捉えられています。

中小企業における後継者選び事情

後継者を選び、承継する方法は大きくは3つ挙げられます。

①親族内承継 現経営者の子どもや兄弟など親族から有望な人物に承継する
②従業員等への承継 親族以外の役員・従業員など社内から有望な人物に承継する
③第三者への承継 外部から候補者を選び承継する

中小企業では、経営者が自社の株式を保有しているだけでなく、自分名義の土地に会社の工場を建てたり、自身が会社名義の借入金の連帯保証人になったりすることがあります。このような場合、個人の資産と会社の資産が密接に絡み合い、事業承継と遺産相続が直結します。そのため、中小企業の事業承継では①の親族内承継が多数を占めていました。

事業承継の種類の推移グラフ
出典:中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)

しかし、近年ではその状況が逆転し、事業承継全体における①以外の「親族外承継」の割合が約65%程度にまで上昇しています。特に③の第三者への承継が伸びていることが特徴的です。 この背景としては次にご紹介する要因や、中小企業におけるM&Aに対する認知・理解が進み、M&Aによる事業承継が行われていることが理由として挙げられます。

昨今の後継者不足の主な要因

主な要因として次の3つが挙げられます。

親族内承継を希望する経営者の減少

中小企業の経営者は、自身が経営している会社の債務(金融機関からの借入金など)について、個人保証を選択している場合があります。この状態で親族に事業承継を行う場合、現経営者に代わって、後継者が引き続き債務の個人保証を行わなければなりません。しかし、個人保証を引き継いだうえで万が一会社の経営状態が悪化してしまったら、事業を承継した後継者は、個人資産をなにもかも失くしてしまうリスクにさらされます。このような経済的な負担やストレスを親族にかけたくない思いから、事業承継が断念されてしまうことがあります。
親族に継がせて能力的な問題や、経済・社会の変化によって経営が厳しくなり、経営責任が問われる事態になった場合に起こる「継がす不幸」を意識する経営者の方も増えていることも親族内承継を希望する経営者の減少の要因といえるでしょう。

事業承継に対する親子間のギャップ

経営者が自身の子供が継承することを願って「いつかは継いでくれるだろう」と思い込み期待する一方で、当人は「自分は経営者に向いていない」「承継については考えていない」というギャップが生まれているケースも多々あります。
後継者として会社を任せられる人がいない
後継者は単に職業技術上の能力が高いだけでなく、責任感が強く、社員を率いるリーダーシップに優れ、人格的に秀でた人物でなければ務まりません。しかし当然求める能力が高いと、後継者の人材を見つけることが困難になります。また昔と比べるとビジネスモデルも大きく変化を遂げ、既存のビジネスを堅持しながら新しい分野にも積極的に挑戦する、チャレンジ精神も不可欠です。後継者に求められる能力が増えていることも、後継者探しを難航させる要因だといえるでしょう。

後継者候補の育成方法


事業承継に成功した後継者は、はじめから後継者としての能力や資質が身についていたわけではないでしょう。どの会社の経営者も、後継者の育成に時間をかけ、じっくりと取り組んではじめて後継者としての能力や資質を身につけられるものです。育成方法は会社によってさまざまですが、経営者自らが直接実務を通じて伝える方法以外に、以下のような方法があります。

① 主要な部門や他社勤務を経験させる

製造・営業・財務・人事のような社内の主要部門を担当させ、一定期間ごとにローテーションをしていきます。さまざまな業務を経験することにより、会社の業務全般に対する知識が深まります。さらに、各セクションで働く社員とコミュニケーションを取ることで、事業承継後に社員からの支持が集まりやすい土壌を築くことが可能です。またいきなり役員クラスの待遇をするのではなく、一般の社員と同様の扱いをすることで、社員との連帯感が生まれ、事業承継後の会社運営がしやすくなるでしょう。
また、他社勤務を経験させることも、後継者の育成に有効です。同業他社への勤務であれば、業界の知識が身につき、他社から見た自社の強みや弱みが把握しやすくなるというメリットがあります。また、自社と違う規模の会社に勤務させることで、会社規模の違いによる業務に対する取り組み方の違いなども学ぶことが可能です。そのほかにも、人脈を広げるきっかけを作ることもできるでしょう。

② 責任ある立場でプロジェクトを担当させる

経営幹部もしくはプロジェクトリーダーなど責任のある立場で業務に参画させることにより、事業承継後に経営者として行う業務を疑似的に体験させられます。社員を束ねる立場で一から運営を任せることで、プロジェクトそのものがうまくいけば、責任感や使命感だけでなく経営者としての自信や、社内からの賞賛なども集められるでしょう。

③ 社外のセミナーや勉強会に参加させる

実務とは別に、社外のセミナーや勉強会へ積極的に参加させることで、後継者として必要な知識を効率よく身につけられます。経営者として必要な知識やスキルは実務で習得できるものの、一から学ぶには時間がかかり過ぎてしまうでしょう。また、すべてを実務だけで習得することが難しい場合もあります。セミナーを通じて他の経営者との交流や人脈を広げることも期待できます。

後継者への事業承継を成功させる2つのポイント


後継者の育成を行い、事業承継を成功させるためには、いくつかポイントがあります。ここでは、そのなかでもっとも重要な以下の2つのポイントについて解説しましょう。

余裕のあるスケジュールで後継者の選定・育成を行う

事業承継は、単なる業務の引継ぎとは異なります。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると後継者候補の選定から育成までに必要な期間は、一般的に5年から10年程度です。
また、中小企業白書によると経営者の平均引退年齢は、68歳から69歳程度と言われています。そのため経営者が60歳を迎える前後から引退までの7~8年のあいだで、後継者の選定と育成にじっくりと取り組むことが大切です。

専門家に相談するとスムーズに進む

事業承継は、経営者が今まで築き上げてきたものを過不足なく後継者に引き継がせ、事業をより発展させるために行うものです。したがって、事業承継の単なる「成立」を目指すのではなく、「成功」を目指さなくてはなりません。
しかし事業承継は、ほとんどの経営者にとって、生涯で何度も経験するものではないでしょう。その結果、誰もが手探りの状態のなか事業承継を行います。会社の命運を左右するような事業承継を、手探り状態で行うことは危険です。そこで事業承継の実情をよく知る専門家を活用し、事業承継をスムーズに進められるようにしましょう。

事業承継の専門家は、成功例だけでなく、数多くの失敗例も熟知しています。失敗の原因を事前に察知して避けることが可能であれば、その分だけ成功に近づけるはずです。事業承継は誰もが不慣れなことなので、専門家を積極的に活用してみましょう。なお、数ある事業承継の専門家のなかでも、事業承継の意思決定プロセスのサポートを専門で行っているコンサルティング会社として、当社グループ会社の「ネクストナビ」がおすすめです。支援事例が多数あり、事業承継のためのプランニングや、全体のビジョン作りから参加してもらえるため、安心して任せられます。

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後継者が見つからない場合は、M&Aによる事業承継も視野に

後継者となる人物には、営業力や技術力などの単一的な能力ではなく、幅広くさまざまな分野に対する総合的な能力が求められます。したがって、残念ながらどれだけ探しても見つからない場合もあるでしょう。このような場合には、目標をM&Aに切り替え、売却も視野入れることにより、選択肢を広げることをおすすめします。
廃業でなくM&Aを選択すれば、長年築いてきた会社を継続させられるうえに、従業員の雇用を守ることも可能です。また、得意先や仕入先などに迷惑をかけることもありません。もちろん、売却することで得た資金で老後のライフプランも充実するでしょう。

終わりに

経営者は日々の仕事に忙殺されてしまうことが多いため、ついつい事業承継の準備が後回しになってしまいがちです。しかし、事業承継は完成までのプロセスが多いだけでなく、成功させるためには時間もかかります。できるだけ早くから準備をしておくように、心がけておかなければなりません。中小企業では、経営者が果たす役割が業務のあらゆる面で大きく、事業承継の成否は会社の将来に大きな影響を与えます。事業承継を確実に乗り切り、会社をいっそう飛躍させるためには、専門家の意見などを積極的に活用し、万全の態勢でのぞみましょう。

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著者

M&A マガジン編集部

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