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M&Aの相手探しにAI(人工知能)!M&A業界にもたらす影響は

M&A全般

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2019年10月15日、日本M&AセンターではM&Aの初期マッチング活動に人工知能(AI)を導入しました。
過去30万件以上あるマッチングデータを学習し、AIが「この企業には、過去似たようなケースでこのような属性の相手先が提案されている」という企業群をレコメンド(推薦)してくるもので、順調に稼働しています。
今回は、このAI導入に至るまでの経緯とその背景・目的を、導入の主導責任者であるデータマーケティング部の菊地原部長にインタビューしました。

菊地原

M&A業界のITトップランナーとしての取り組みを語る

M&Aのマッチング活動へのAI導入は業界初ではないでしょうか。AI導入に至った経緯を教えてください。

M&A仲介業務で重要なポイントは、とにかくマッチングです。
多くの企業の中から最適な譲受け企業の候補をいかに早く見つけるか。譲渡企業のオーナーは当社に仲介を依頼した瞬間から、早く最高の相手と会いたいと思っているはずです。
コンサルタント1人1人の高い能力によりマッチングを検討することは重要ですが、コンサルタント全員の知見をもとに候補企業をレコメンドすることができれば、コンサルタントの検討選択肢が拡充され、顧客に最適な相手を紹介するまでのリードタイムが短縮されるのではないかと考えました。
それが、AIを導入しようと思った大きなきっかけです。またM&A業界のリーディングカンパニーとして蓄積されたマッチングデータ活用には、とても可能性を感じました。その第一段階として「AI」という形でデータ活用を具現化し、顧客の皆様に品質や安心が伝わるよい機会だと思いました。

菊地原

AIが学ぶべきデータの見極めが大事

導入できると判断した理由は?

AIを機能させるには、学習させるデータが必要になります。
このデータの質が重要なのです。なぜかというと、マッチングの品質に違いがあると思っているからです。もしかすると、最近乱立しているM&Aマッチングサイトの方が、マッチングデータの量としては多いかもしれません。
でも、それはM&Aを考えているだけでM&Aをしたことがない経営者が、「この会社いいな」「興味があるな」という気軽なデータに過ぎず、「プロの目」によるマッチングデータではないのです。 そのデータを学習させても、意味がないなと思います。しかし当社にあるマッチングデータなら、M&Aの専門家であるコンサルタント数百人が、その会社に対してよりよいと判断したデータが数十万件あります。これがAIが学習すべきデータです。 M&Aが成立した企業のみを正解としたデータではなく、前述のようにコンサルタントが検討して候補登録したものもすべて含めて、当社には1年間に8万件のデータがあります。データ状態を確認したところ、あらゆる業種と地域でのマッチング検討データが存在していることが分かりました。
現状でも抜けもれなく候補を出すことができますし、毎日400件ペースでマッチング検討データが増えていくことから、日を追うごとに学習データが増えて精度が上がっていくことも予想できました。
このマッチングデータの品質に自信を持てたことが、AI導入に値すると判断した理由です。

導入後、どのような変化がありましたか?

まだ導入したばかりなのですが、徐々に使う人が増えてきている状況です。意外だったのは、買い手を探すコンサルタントよりも、譲渡企業担当のコンサルタントのほうが使っていることです。
「こういう企業がお相手候補として考えられそうです」、ということを顧客(売り手)にすぐにお伝えできることの方が、顧客の安心感につながるからでしょう。 まずはAIでレコメンド企業を表示するのは一定の期間が過ぎてからにしているのですが、準備ができたらすぐにでもAIでの相手候補をレコメンドしてほしい、と要望を受けているところです。
また買い手企業探索の部署からは、「人の頭だけだと、覚えているつもりでも量が多くなるとやはり提案企業の抜け漏れが出てくる。それを補ってくれたり、その手があったか、という企業名も出てきたりして役立っている」という声ももらっています。今後さらに学習が進めば、もっと精度が上がることを期待しています。

菊地原

営業社員とのコミュニケーションは欠かせない。ディスカッションメモからすべてが始まる

菊地原さんが、当社に入社することを決めたきっかけを教えてください。

当社に入社することを決めた理由は、事業活動が社会の課題解決に直結していること、会社が成長の過渡期にあり、やれること、やることが沢山あること、そしてその変化に投資する体力があることなのですが、きっかけはタイミングと縁の要素が強いですね。
入社する1年前に前職で当社の方と知り合って、この会社の存在を知っていなければ、エージェントからの話に反応することは無かったと思います。また、珍しいことに面談者が上司を探していたことや、自分の子供が通っている高校の出身であったことから縁があるのかもと感じました(笑)
そして最終的に社長と話をした際に、ITとその導入に関して理解が深いということがわかり、継続的にIT変革に取り組んでいけそうだと感じ当社に入社を決めました。

率いられている、データマーケティング部の紹介をお願いします。

一般的にこの組織名から想像する役割は、マーケ部門の業務です。
でも、当社では現状、情報系システムを担当するIT組織です。
M&A業界も歴史はそれなりに長くなってきましたが、IT導入活用について先進的な企業は多くありません。M&A仲介業務ができる人がいれば商売としては成立してしまうだけに、IT投資が遅れている部分もたくさんあります。 経営陣も、IT活用で改善できることはたくさんある、となんとなく頭ではわかっていても、それを具現化できる専門家がどこにいるのかさえわからなかった、といった状態でした。 情報系システムを担当する組織が発足したのもまだ4年前、データマーケティング部は私が入社してから2年弱の若いチームです。 ですので私自身のマネジメント体制が整ったところで、いよいよこれから、ITを活用した改善提案やマーケティング支援などへ乗り出そうというところです。AI導入も含めて、第一フェーズだと思っています。 来期以降はDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略で、担当領域を大きくしようと思っていますし、やれることは無限大です。

これからの展望を教えてください。

人(コンサルタント)は新たなマーケット状況を先読みしたマッチングや独創的なマッチングを行い、AIは今までの傾向によるマッチングレコメンドで高速提案する。これですべての可能性が網羅できるようになったら今回のAI導入は成功ですよね。
これからAIがどんどん新しいマッチングデータを学んでいけるように、コンサルタントにもますます新しいアイデアに基づくマッチングデータを入れてほしいと思っています。
そうした「成長するシステム」の構築に携わっていけることには、夢がありますね。
今は社内用のシステムとなっていますが、お客様どなたでも見られるWeb領域に拡張し、すべてのシステムを連動するようにし、M&A仲介業務を高速、高精度で進めることができるようにし、顧客満足につなげていきたいです。

▼関連リリース
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2019/12/12 日本経済新聞「M&A実務にAI、EY、最適な買収先提案、PwC、資産査定を効率化。」 2019/10/24 日本経済新聞「M&Aセンター、企業仲介にAI導入 営業員が活用」

著者

菊地原 拓

菊地原きくちはら たく

日本M&Aセンターデータマーケティング部部長

1998年、立教大学理学部数学科を卒業後、国内および外資系のSIerで10年にわたりエンジニア、コンサルタント、PMとして多くの業界のシステム構築プロジェクトに携わる。その後、リクルート在籍時にビッグデータグループを立ち上げ、4年間この組織をマネジメントし、ビジネス課題の解決に直結するテクノロジーの開拓と活用に従事する。2018年4月に日本M&Aセンターに入社。

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