【TOB事例インタビュー】ウェディング事業と 貸会議室事業の 意外なシナジー

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ウェディング関連事業を運営するノバレーゼは、2024年11月14日、貸会議室を運営・管理するティーケーピーによるTOBに賛同する意思決定をしました。日本M&Aセンターは、ノバレーゼ側のファイナンシャル・アドバイザー(FA)として支援。ノバレーゼの増山様と福本様にTOB成立までの経緯を聞きました。(取材日:2025年6月16日)

ノバレーゼ 増山様、福本様
株式会社ノバレーゼ
取締役 執行役員 経営戦略本部長 増山 晃年 様
経営戦略部長 ビジネスサポート部長 福本 光信 様

ウェディング事業と貸会議室事業の意外なシナジー

――はじめに、ノバレーゼの業務内容や強みを教えてください。

増山様: 売上の9割以上を占めるブライダル事業を主軸とし、結婚式場のほかドレスショップ、レストランを含め全国に74店舗を運営しています。ウェディングに必要な商品、サービスをほぼ内製化している点が大きな強みです。東京・名古屋・大阪などの大都市だけでなく、地方都市もターゲットとしており、年間2~3店舗の新規出店を続けています。直近では静岡市・富山市への出店を予定しています。レストラン単独店舗として運営しているのは現在和食、イタリアンなど11店舗のみですが、東京・大阪エリアを中心にこちらも年間2店舗程度の新規出店を目指しています。

――貸会議室を運営・管理するティーケーピーによるTOBに賛同する意思決定をされた背景についてお聞かせください。

増山様: ティーケーピーとはTOBの約半年前に約30%の株式を取得してもらう資本業務提携を締結していました。その上で、今回ティーケーピーから追加出資によるTOBの提案を受け、当社が賛同したという流れです。

当社は東証一部上場後、2016年に一度非上場化し、2023年6月に再上場を果たしています。再上場後、ファンドの持ち株売却が進む中で、中長期的に株式を保有してもらいタッグを組める相手を探していました。そこで登場したのがティーケーピーで、約30%の株式取得と資本業務提携を締結し企業価値を高めるべく連携を進めてきました。

株式の追加取得、TOBにつながったのは、事業上期待通りのシナジーが見込める手ごたえを感じていたからです。全国に貸会議室を運営・管理するティーケーピーと当社では、一見事業シナジーが生まれるようには思えないかもしれませんが、実際のシナジーは大変大きなものでした。


ブライダル事業を主軸に結婚式場のほかドレスショップ、レストランを含め全国に74店舗を運営

――期待できるシナジーはどのような点だったのでしょうか?

増山様: 当社にとって最大の魅力は、ティーケーピーがもつ全国3万社以上の顧客基盤です。結婚式以外の利用を増やし施設の稼働率を上げていくことが大きな経営課題となっていたため、法人顧客の宴会の場としてティーケーピーの顧客の送客が見込める点は最大のメリットです。

さらに、貸会議室のほかにホテル運営も行っているティーケーピーには、全国の土地や物件の情報が集まります。当社に寄せられる情報にプラスして豊富な情報が共有されることで、当社の出店戦略にも大きなメリットが期待できます。

FAの選定は過去の実績より提案内容を重視

――FAとして日本M&Aセンターを選んだ理由や決め手はどのような点でしたか?

増山様: 各社からいろいろなご提案をいただきましたが、支援体制やチーム力の面で日本M&Aセンターの提案が一番良かったため決定しました。“TOBのアドバイザー経験”という点では日本M&Aセンターの実績は他社と比べて少ないとの指摘が外部からありましたが、提案内容を最重視し、当社としては全く不安なく選任させてもらいました。

――具体的にどのような支援を受けたのかご紹介ください。

福本様: 2週間という非常にタイトなスケジュールの中、スタートダッシュを切れるよう多くの人員を割いてフルコミットしてくれました。主な支援内容は、全体スケジュールの策定、交渉すべき項目の整理と提案、ドキュメントの作成、先方のFAとの調整です。どれも細やかでスピーディーな対応を徹底していただいたおかげで、こちらは資本業務提携契約の内容など最も重要な詰めや判断に集中できました。


取締役 執行役員 経営戦略本部長 増山 晃年 様

スピード対応とチーム力で期待通りの結果に

――TOB提案に賛同を表明するまで通常数カ月かかるところ、わずか2週間で成功されました。振り返ってポイントはどこだったのでしょうか?

増山様: ティーケーピーがすでに約30%の株式を保有していたことや、業務上のシナジーが明確に見えていたことから、通常のやり方とは異なり直接交渉した部分もあったことが、今回の短期間でのTOB成立の大きな要因です。直接交渉するにあたり、どういった内容を交渉すべきか、複数の方法が考えられる場合においては、他社事例もふまえ、どういった方法をとることができるのか等、細かいところまですり合わせられたことにより、実行スピードを速めることができました。専門的なやり取りは日本M&AセンターのFAとティーケーピーのFAに完全にお任せできたことも、期間短縮につながった要因の一つだと思います。

――日本M&Aセンターの支援体制はいかがでしたか?

福本様: 日本M&Aセンターにお願いしてよかったと感じているのは、初動の速さとチーム力、そしてレスポンスの速さです。まるで私たちの専属チームのように即座に返事が返ってくるところは本当に助かりました。期待通りの仕事をしていただき、今後もアドバイザーを選定する場面があれば必ず指名したいと思っています。


経営戦略部長 ビジネスサポート部長 福本 光信 様

想定以上のシナジーで売上も好調

――ティーケーピーとの連携後約1年が経ちました。どのような効果が出てきていますか?

増山様: 当社の想定通り、ティーケーピーの法人顧客の宴会に当社の結婚式場を利用いただく機会が増えており、おかげさまで月を追うごとに宴会実績が伸びています。全国にあるティーケーピーの営業所との連携強化も進めており、今後さらなる効果を期待しています。また、物件情報の共有はもちろん、新たに有名レストラン2店舗との提携案件も生まれるなど確実にシナジーが生まれています。

――ウェディング業界の見通しと今後の成長戦略をお聞かせください。

増山様: 少子化の影響からウェディング業界は縮小していく市場と言われていますが、当社の強みをより磨き上げていくことでお客様に選ばれる企業であり続けることができると考えています。今後は競争力のあるオリジナル商品の開発を続けながら地方都市への積極的な出店を進め、現場で対応するスタッフの教育、採用の強化も進めていきます。ティーケーピーとの連携もさらに深め、質の高いサービスや商品をスピーディーに、より多くのお客様にご提供できるよう尽力してまいります。

株式会社ノバレーゼ

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M&A マガジン編集部

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