2024年世界情勢の変化が食品業界M&Aに与える影響

江藤 恭輔

日本M&Aセンター 営業本部 成長戦略チャネル 成長戦略推進室 副室長

業界別M&A
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当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は江藤が「2024年の世界情勢が食品業界M&Aに与える影響に」についてお伝えします。

2024年は世界の情勢が大きく変わる年

2024年は、1月に実施された台湾の総統、立法委員(国会議員)選挙に始まり、3月にはロシア大統領選挙、7月には東京都知事選、9月には岸田総理の自民党総裁任期満了による総裁選、11月には米大統領選挙と、まさに世界の情勢を大きく左右する選挙が数多く実施される年となっています。
また、選挙以外でも、経済動向を大きく変化させる可能性のあるイベントや施策が数多く予定されています。

2024年重要イベント一覧

1月

  • 新NIISAがスタート
  • 台湾総統選挙

2月

  • インドネシア大統領選挙

3月

  • ロシア大統領選挙
  • 北陸新幹線が敦賀まで延伸

4月

  • ビットコイン半減期に突入
  • 韓国 総選挙
  • 「2024年問題」建設・運輸・医療業界にのみ認められていた時間外の上限規制の猶予がなくなる

6月

  • メキシコ大統領選挙
  • 東京ディズニーシーが3,200億円をかけて新エリア「ファンタジースプリングス」を開業
  • G7サミット、イタリアにて開催

7月

  • 東京都知事選挙
  • 新紙幣発行

8月

  • パリ五輪開催

9月

  • 自民党総裁選挙

11月

  • 東京証券取引所 取引時間の延伸
  • G20サミット、ブラジルにて開催
  • 米国大統領選挙

上記の通り、2024年は世界の情勢を大きく変えてしまうようなイベントが目白押しの1年となっています。

2024年の世界情勢が国内食品業界のM&Aに与える影響

2021年から2023年の3年間で、国内食品関連企業が海外の企業を買収した事例(IN-OUT)は、公表ベースで毎年10件~20件程度となっております。主な事例は以下の通りです。

国内食品関連企業が海外企業を買収した主な事例

  • 2021年1月:マルハニチロ×サイゴンフード(ベトナム水産加工品製造業
  • 2021年5月:亀田製菓×ティエン・ハ・カメダ(ベトナム米菓製造業
  • 2021年5月:森永乳業×エロヴィ・ベトナム(ベトナム乳製品製造業
  • 2021年6月:プリマハム×ルディーズ・ファイン・フード(シンガポール食肉加工業
  • 2022年1月:ライオン(キリンホールディングス)×ベルズ・ブルワリー(米クラフトビール製造業
  • 2022年7月:カルビー×グリーンデイグローバル(タイ菓子製造業
  • 2022年9月:麦の穂HD(永谷園HD)×キムリー・フード・プロダクツ(シンガポール菓子製造業
  • 2022年11月:物語コーポレーション×ANG(インドネシア外食チェーン
  • 2023年2月:森永乳業×モリナガルマイ(育児用ミルク輸入・販売事業
  • 2023年4月:トリドールHD×フルハムショア(英外食業
  • 2023年4月:キリンホールディングス×ブラックモアズ(豪健康食品販売業
  • 2023年6月:ゼンショーホールディングス×スノーフォックス・トップコ(英日本食事業

2024年は世界経済の情勢が非常に大きな転換点を迎える年であり、今後の見通しが非常に読みづらい年と言えるため、日本国内の食品関連企業による国外企業の買収についても、例年以上に慎重にならざるを得ないと言えます。

また、地域紛争や自然災害なども、国外企業のM&Aを推し進める上で、影響を考慮する必要があります。

過去、日本国内の大手食品関連企業は、その豊富な資本力やファイナンス面での信用力を背景に、数多くの海外企業の買収を手掛けてきました。
しかし2024年以降は、これらの変化がもたらす結果を的確に予測し、自社の成長や市場拡大のために適切なM&A戦略を立てる必要があります。

ただし、予測は常に確実ではありません。
2024年の世界情勢がどのように変化するかは、現時点では誰にも正確に予測することはできません。

したがって、企業は柔軟性を持ちながら、状況の変化に迅速に対応することが求められます。

北陸新幹線の延伸が国内食品業界M&Aの動向に及ぼす影響

北陸新幹線の延伸が3月に計画されており、その完成により北陸地方と首都圏とのアクセスが大幅に改善される見込みです。

このようなインフラの整備は、地域の経済発展や産業の活性化に大きな影響を与えます。
特に、国内食品業界においては、新たな市場への進出や物流の効率化などを促し、M&Aの動向にも影響を与えることが予想されます。

物流の改善による期待効果

まず、北陸新幹線の延伸によって、北陸地方と首都圏との物流がスムーズになることが期待されます。
食品業界では、生鮮食品や加工食品などの物流が重要な要素となっています。

現在は、北陸地方から首都圏への物流には時間やコストがかかるため、一部の企業は市場への参入を躊躇している場合もあります。
しかし、北陸新幹線の延伸によって物流の効率化が進むことで、企業は新たな市場への進出を検討する動きが加速する可能性があります。

また、北陸地方は豊かな自然環境と資源を有しており、地域特産品や伝統的な食品が多く存在します。
これらの食品は、地域の特色やブランド価値を持っており、市場での需要も高まっています。

北陸新幹線の延伸によって、これらの地域特産品が首都圏などの大都市圏にもより一層アピールされることで、需要の拡大が期待されます。
このような需要の拡大は、企業の成長や市場拡大のためのM&Aを促す要素となるでしょう。

観光業の需要増加による食品業界の成長期待

さらに、北陸新幹線の延伸は観光業にも大きな影響を与えることが予想されます。
北陸地方には観光名所や温泉地が多く存在し、観光客の数も増加しています。

観光客は地域の食品を求めることが多く、地域の食品業界にとっては大きな市場となっています。
北陸新幹線の延伸によって、観光客の流入が増えることで、地域の食品業界は成長の機会を得ることができます。

このような成長の機会は、他地域の食品企業にとっても魅力的な投資先となる可能性があり、M&Aの動向に影響を与えることが考えられます。
以上のように北陸新幹線の延伸は、物流の効率化や地域特産品の需要拡大、観光客の増加などの恩恵を地域にもたらし、それにより、北陸地方の豊富な食資源の存続と発展が実現されることを、我々も微力ながらサポートして行きたいと考えています。

いかがでしたでしょうか?
食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
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著者

江藤 恭輔

江藤えとう  恭輔きょうすけ

日本M&Aセンター 営業本部 成長戦略チャネル 成長戦略推進室 副室長

1982年12月、宮崎県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、大手金融機関にて約10年法人営業に従事した後、2015年10月、日本M&Aセンターに入社。その後、食品業界専門グループを立ち上げ、大手外食企業のM&Aを中心に、数多くの食品関連M&Aを手掛ける。2023年4月には同グループを部署に昇格させ、メンバー全員で、全国の優れた食文化の存続と発展をサポートしている。代表的な成約実績は、トリドールHDとアクティブソース(立ち飲み居酒屋晩杯屋)、トリドールHDとZUND(ラーメンずんどう屋)、サッポロライオンとハンエイ(餃子専門店である大阪王)、佐賀県の老舗アイス菓子メーカーである竹下製菓と生クリームパンメーカーの清水屋食品、PEファンドであるエンデバー・ユナイテッドと関西レストランチェーンのアートオブウォー・バサラダイニングの資本提携など。

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