コラム

食品業界のクロスボーダー M&A動向(海外M&A・海外進出)

高橋 空

著者

高橋空

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 食品業界専門グループ

業界別M&A
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当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は高橋が「食品業界のクロスボーダー M&A動向(海外M&A・海外進出)」についてお伝えします。

食品クロスボーダーМ&Aのトレンドは北米とアジアの二極化

食品業界におけるクロスボーダー М&A(日本企業の海外企業の買収)は年間、2005年以降年間10件~20件程が公表ベースでコンスタントに行われています。

エリア別に見ると、北米・欧州・アジアの順でМ&A件数が多くなっています。
一方で、2010年頃からアジアへのクロスボーダー М&Aが急速的に伸びており、このままの勢いでいくと欧州へのクロスボーダー М&Aの件数を数年以内に超えることが予測されています

直近10年で見ると北米とアジアのクロスボーダー М&Aの件数はほぼ同水準で行われており、現在の食品クロスボーダー М&Aのトレンドとしては、北米とアジアに二極化していると言えるでしょう。

北米に対する食品クロスボーダーМ&Aの事例

北米に対する食品クロスボーダー М&Aの傾向として、世界No.1の経済大国であるアメリカのマーケットを獲得するために同業同士のМ&Aが盛んに行われています。

例えば、ビール業界ではグローバルな業界再編が加速していく中で、世界的に同業同士のМ&Aが盛んに行われており、特に日本企業のアメリカ企業に対するМ&Aが散見されます。

アメリカ市場を見たM&A事例

直近の事例として、サッポロホールディングスは、米Stone Brewing Holdings, LLCの傘下でクラフトビールメーカーの米ストーンブリューインを2023年8月に買収しました。

ストーンブリューイン社は1996年に創業した、売上高約311億5200万円(約2億3000万米ドル)の米国東西に2工場を構え、「Stone IPA」などのブランドを展開する企業です。サッポロHDは北米酒類事業の拡大を目指す狙いで、アドバイザリー費用などを含めると約227億4200万円の投資額となっています。

また、キリンホールディングスは、クラフトビールメーカーの米ベルズ・ブルワリー社を2022年に買収をしました。ベルズ・ブルワリー社は1985年に設立した「Oberon Ale」「Two Hearted Ale」「Light Hearted Ale」「Official Hazy IPA」などのブランドを米国や中南米で展開している企業です。

キリンホールディングスは2019年に同業の米ニュー・ベルジャン・ブルーイングを買収しており、米国事業の拡大を狙っています。

米ベンチャー企業への資本参加の増加

更に、近年のアメリカへの食品クロスボーダー М&Aの傾向としては、マイノリティー投資でのベンチャー企業への資本参加の割合が増加してきています。

キリンホールディングスが出資し、グローバル・ブレインが運営するKIRIN・GB投資事業有限責任組合などは、カーボンニュートラル食品提供ベンチャーの米ニュートラルフーズに資本参加しました。

ニュートラルフーズは農場から冷蔵庫までバリュー・チェーン全体でのGHG排出量を厳密に計測し、牧場と連携して削減する取り組みを継続的に行うとともに、カーボンオフセットを活用することでカーボンニュートラルな製品を提供しています。

力の源ホールディングス、日本たばこ産業は、フードテックベンチャーの米ヨーカイ・エクスプレスに資本参加しました。
ヨーカイ・エクスプレスは2016年に創業した、温かい食事を24時間コンタクトレスで提供できる、自販機型の自動調理ソリューションを提供しています。

出来立てのラーメンを最速90秒で提供可能な自動調理自販機の日本展開を2022年春から本格的にスタートしました。
新たなメニュー開発を行っており、力の源HDとラーメンをはじめとした 商品の共同開発と製造・販売インフラの安定化を図り、JTの全額出資子会社のテーブルマークの主力商品「冷凍うどん」を活用した開発も進めています。

世界的な食糧不足の将来的な懸念や、消費パターンの変化が起きる中で、今後もニューテクノロジーへの投資は加速していくことが推測されます。

アジアに対する食品クロスボーダーМ&Aの事例

アジアに対する食品クロスボーダー М&Aの傾向としては、将来的な人口増加が見込めるASEAN地域を中心に、新興市場の生産拠点・営業網の確保を行い自社商材の流通網を確立することも視野に入れたМ&Aが行われています。

森永乳業は、ベトナムの乳製品メーカーのエロヴィ・ベトナムを買収しました。
エロヴィ・ベトナムは2002年創業、売上高約29億円(6087億ベトナムドン)、従業員約450人で、飲料やヨーグルトの製造を行っています。
ベトナム小売市場全体の7-8割を占めるゼネラルトレードと呼ばれる個人商店などへの販売に強みを持っており、森永乳業は既存商品に加え、自社の技術力を活かして、健康・栄養に貢献する商品ラインナップを拡充させ、新たな販売チャネルの開拓を行い、ベトナム市場での事業強化を狙ったM&Aとなっています。

また、プリマハムはシンガポールの食肉加工・販売会社のルディーズ・ファイン・フードを買収しました。ルディーズ・ファイン・フードは売上高約11億9200万円(1430万シンガポールドル)のマイスターが作るソーセージやハムなどの食肉加工・販売事業を行っています。
スーパー/ハイパーマーケットでのコンシューマー製品、ホテル・レストランなどの業務用製品の販売を中心に展開しており、プリマハムは東南アジア市場での戦略拠点としてグローバル戦略の推進力につなげる狙いです。

更に、カルビーは、タイの製菓会社のグリーンデイグローバルを買収しました。
グリーンデイグローバルは2010年設立、売上高約11億8800万円(3億タイバーツ)の野菜や果物を使用した健康的なスナック商品の製造に強みを持つ企業です。

米国・中国市場向けの輸出販売事業にも実績があり、カルビーグループからタイ国内向けの「Jagabee」のOEM生産を受託しています。
カルビーは新たな生産開発拠点を構築し、中華圏での支持が高い「Jagabee」の輸出強化とグローバルブランド化を進める狙いです。

このように大手食品メーカーを中心として、今後更にマーケットとしての魅力度を増すと想定されるASEAN市場への投資が盛んに行われております。

今後の食品クロスボーダー М&Aの予測

2023年は新型コロナウイルスによる渡航制限等が解消されたため、食品業界のクロスボーダー М&Aの件数が増加傾向にあります。
国内の人口減少に伴うマーケットの縮小が不可逆的と想定される中で、アメリカを中心としたビックマーケットへの挑戦や、将来性に対してベットするASEAN市場への参入のためのクロスボーダー М&Aは今後益々盛んになっていくことが想定されます。

更に、これまでは大手企業が中心となって、クロスボーダー М&Aが行われてきたが、当社が加盟しているWorld M&A Alliance(https://world-ma.com/)などの団体の発足により、以前に比べて世界のМ&Aに関する情報が多く流通する体制が整い、中堅企業においてもクロスボーダー М&Aの機会に触れることが多くなっています。
国内のМ&Aにおいて、大手企業によるM&Aが盛んに行われた後は、中堅企業が中心となっていったように、クロスボーダー M&Aの主役が中堅企業になっていく日は近いと思われます。

今回のコラム「食品業界のクロスボーダー M&A動向」はいかがでしたでしょうか?
食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

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著者

高橋 空

高橋たかはし そら

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 食品業界専門グループ

1991年9月、神奈川県生まれ青山学院大学経営学部卒業後、株式会社船井総合研究所にてフードビジネス専門のコンサルティングに従事した後、日本M&Aセンターに入社。食品業界専門グループにて、食のベンチャー企業のイグジット支援から創業100年を超える老舗企業の事業承継支援まで幅広くM&A支援に携わる。

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