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後継者不在率が初めて6割を下回る。TDB動向調査 ~事業承継は「脱ファミリー」化が加速~

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全国の中小企業における後継者不在が改善に向かっています。

大手信用調査会社の帝国データバンクが2022年11月16日に公表した全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)によると、データベースで事業承継の実態について分析可能な全国27万社の後継者不在率が57.2%(前年比4.3%減)となり、調査を開始した2011年以降で初めて60%を下回りました。

5年連続の減少となり、「地域金融機関をはじめ相談窓口が全国に普及したほか、事業承継メニューが全国的に整ったことも、後継者問題解決・改善の前進に大きく寄与した」と分析します。

後継者不在率は50、60代の「現役世代」で特に改善が進む

年齢別の後継者不在率では、前年に比べて全ての年代で後継者不在率は減少しました。

とりわけ、「50代」が65.7%と4.5%減少し、「60代」も4.8%減の42.6%と改善し、現役世代の対応が進みました。

減少したものの「70代」では33.1%、「80代以上」も26.7%が依然として後継者が「いない」または「未定」と回答しており、後継者が有りから新たに後継者不在となった企業も1,600社あるなど、コロナ禍の事業承継は二極化していると指摘します。

エリア別では41都道府県で改善、一方で青森、石川、島根、徳島、香川5県では悪化

後継者不在は41都道府県で改善し、全国的にも低下しています。後継者不在率が一番低かった三重県は2年連続となり、今回の29.4%は調査以降初めて30%を割りました。

対して一番高かった島根県は75.1%で、続いて鳥取県が71.5%と山陰2県が高い結果となりました。全国的に改善傾向ながら青森、石川、島根、徳島、香川では不在率が高まりました。

業種別では、全ての業種が70%を下回り、過去最低を更新しました。

経営者の就任経緯で同族承継が急落、脱ファミリー化が加速

就任経緯では、過去5年間における事業承継で先代との関係性を調査。

「同族承継」が34.0%と最上位ながら前年比4.7%減となり、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」が33.9%と続き、買収や出向を中心にした「M&Aほか」が20.3%に増加し、初めて2割を超える数字となりました。

過去5年間のデータを見ると、同族承継は減少傾向で、内部昇格は横ばい、M&Aは増加傾向となり、事業承継でM&Aが普及していることが分かります。
後継者候補属性では、これまで「子供」の割合が最上位でしたが、初めて「非同族」が首位となり、事業承継で進む「脱ファミリー」化が加速しています。

帝国データバンクは「コロナ前から官民一体となって推し進めたきた事業承継の重要性が中小企業にも浸透・波及してきたことに加え、M&Aの普及や事業承継税制の改良・拡大、金融機関主導の事業承継ファンドなど、多種多様なニーズに対応可能なメニューが揃っていることも、後継者問題の解消に多大な役割を果たしている」とまとめ、今後も後継者不在率が低下していくと分析しています。

帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」はこちら

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M&A マガジン編集部

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