業務提携とは?資本提携やM&Aとの違いを解説

M&A全般
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Bold企業は、競争力の強化や市場拡大、イノベーションの促進、リスクの分散などを実現するために、業務提携を積極的に活用しています。
本記事では、業務提携の概要、メリット、リスクや注意点、円滑に進めるためのポイントについてご紹介します。

この記事のポイント

  • 業務提携の目的にはコスト削減や生産性向上があり、各企業の強みを活かしてシナジー効果を創出する。
  • 業務提携は資本移動を伴わず、業務委託とは異なり、双方の成長を目指す関係を築く。
  • メリットには競争力強化やリスク分散があり、デメリットには目的の不一致や情報漏洩のリスクがある。

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⽬次

業務提携とは?

業務提携とは、 複数の企業が経営資源を出し合い、1社だけでは解決できない問題を協力し合うことで事業成長、競争力強化を行う施策の一つです。

自社単独では、残念ながら多くの場合、社内で活用できるリソースに限りがあります。事業を推進する際、不足している部分をすべて自前で調達して埋め合わせようとすると、膨大な時間やコスト、そしてリスクが生じます。特に中小企業にとっては、外部の専門性や人的リソースを資源を活用できるかが企業の成長、存続において重要となります。

業務提携は、新規事業の参入や新製品の開発、業務縮小に伴う社内業務の外注化や販売網の拡大など、各企業の多種類のニーズに応じて色々な形で行われています。

具体的には、企業がそれぞれに持っている技術や販売網、様々なノウハウや人材、設備やブランド力などを提供し合い、お互いが足りない部分を補い合うことでシナジー効果を創出します。

参考:2020年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 新たな価値を生み出す中小企業

業務提携の種類


業務提携は、目的別に様々な種類があります。ここでは主な業務提携の種類についてご紹介します。

販売提携

販売提携は、販売ルートや販売チャネルを持つ企業に、自社製品の販売を委託する業務提携の一種です。販売提携により、企業は相手の販売網や顧客基盤を活用し、市場拡大や製品の普及を図ることができます。なお、販売提携には「販売店契約」「代理店契約」「フランチャイズ契約」の3つがあります。

販売提携の種類 概要
「販売店契約」 販売店がメーカーから商品を仕入れ、顧客に販売する販売提携。
販売店と顧客との間で売買が行われるため、販売価格は販売店が決められる。
「代理店契約」 メーカーやサプライヤーが顧客と売買契約を結ぶ契約形態のこと。
販売店契約とは違い、販売店が契約の当事者となったり、製品の在庫を抱えたりすることはない。
「フランチャイズ契約」 フランチャイズ本部が商標の使用権や商品の販売権を提供する義務を負うのに対し、加盟店側はその対価を支払う義務を負う契約。
加盟店側は本部に対して保証金やロイヤリティを支払う必要がある。

技術提携

技術提携は、企業間で技術の共有や研究開発に関して協力することを指します。技術提携により、企業は製品の競争力やイノベーションを促進することができます。

技術提携には、特許や特殊な製造ノウハウなどを保有する企業に対してその使用対価を支払い、特許やノウハウを自由に使用する許可を得る「ライセンス契約」と、複数社が共同で製品などの研究開発を行う「共同研究開発契約」の2つがあります。

生産提携

工場などの製造設備を有している他社に対し、自社製品の製造の一部を委託して製造能力を補完する業務提携が生産提携です。生産提携により、企業は製品の生産コストの削減や供給力の強化を図ることができます。

例えばApple社のiPhoneなどは、企画開発と販売のみを自社グループで行い、製品の製造や組み立ては海外の企業と生産提携を結ぶことにより自社の利益を最大化しています。このような生産提携は、世界中の様々な場所で見られます。

なお、生産提携には「OEM(Original Equipment Manufacturing)」や「ODM(Original Design Manufacturing)」などがあります。

その他の業務提携の種類として、商品・原材料などの仕入れを共同で行い、仕入れ価格を下げる「調達提携」や、物流施設の共有や共同配送で運送費などコストを軽減する「物流(流通)提携」、複数の事業で提携する「包括提携」などがあります。

その他の提携「調達提携」「流通提携」「包括提携」

業務提携には、そのほか以下のような種類もあります。目的に応じて適切な提携の方法を選択する必要があります。

調達提携:原材料などの仕入れを共同で行い、スケールメリットを生かして仕入価格を下げる。

流通提携:製品の流通ルートを共有し、運送費などのコストを下げる。

包括提携:主に自治体などが企業と提携し、市民サービスの向上と地域の発展を目指す。

業務提携と資本提携、M&Aの違い

業務提携と資本提携、M&Aは他社との連携、経営資源により事業成長を目指す点で共通しますが、資本の移動の有無という点で根本的に異なります。

業務提携と業務連携、業務委託の違い

業務連携は、明確な定義はありませんが、一般的には複数の関係者や組織が目的を同じくして、協力し合い物事を進めることを意味します。
企業同士だけでなく、同じ組織内のコラボレーションを指す場合もあります。業務提携も広義的には業務連携の一種と言えるでしょう。

業務委託とは、ある企業が特定の業務を他の企業に委託することを指します。委託する企業は、自社で行う必要がある業務を外部に委託し、専門知識やリソースを活用します。委託先企業は、委託された業務を受け持ち、委託元企業の要求に応じて業務を遂行します。業務委託は、効率性や専門性の向上、コスト削減などを目的としています。企業間で業務委託契約が交わされ、それに準じて業務が行われます。

業務提携は業務委託の「発注者と受注者」の取引関係にとどまることなく、互いに事業成長のために関係を構築しながら、シナジーの創出を目指す点で異なります。

業務提携を行うメリット


業務提携を行う主なメリットは、以下の通りです。

競争力の強化・市場シェアの拡大

業務提携を行うことで、自社単独で行うよりも確実にピンポイントで必要な分野の強化や補充ができます。
技術やノウハウ、製品やサービスの開発能力、販売網や顧客基盤など、相手の持つ強みを活かすことで、自社の競争力や市場シェアの拡大が可能になります。

リスクの分散

一社だけに依存せず、複数の企業と提携することで、市場変動や競争のリスクを軽減できます。また、新たな市場や地域に進出する際にも、現地の企業と提携することでリスクを分散することができます。

コスト削減

例えば、生産提携により、生産コストを削減したり、物流や調達の効率化を図ったりすることが期待できます。また、販売提携によって販売網を共有することで、販売コストの削減、新市場へのスムーズな進出の可能性が高まります。

新規事業への進出

自社単独で新規事業に進出するには、人材や資金・時間やノウハウなど様々な経営リソースが必要になります。

しかし、対象事業をすでに行っている相手と業務提携することにより、ノウハウはもちろんのこと、提携先が保有する技術や生産能力、販売網やブランド力などを使って、リスクを抑えながら新規事業に打ち出ることができます。

イノベーションの促進

異なる企業が連携することで、新たなアイデアや視点が生まれ、製品やサービスの開発において創造性が高まります。また、技術提携によって相手の技術力を活用することで、新たな技術の開発や市場への導入が可能になります。

以上のように、業務提携は資源や能力の共有、リスクの分散、コスト削減、イノベーションの促進など、企業にさまざまなメリットをもたらします。相手企業との相乗効果を生み出し、競争力を強化するために重要な手段です。

業務提携の種類別メリット

業務提携には前述のようにさまざまな種類があり、それぞれに特有のメリットがあります。

販売提携のメリット

販路やや顧客基盤を利用することで市場を拡大できる点が挙げられます。これにより、新たな顧客層へのアプローチが可能となり、販売力が強化されます。また、マーケティングやプロモーションのコストを分担できるため、コスト削減にもつながります。

技術提携のメリット

提携先の技術を取り入れることで自社の技術力を向上させることができる点があります。新技術の開発におけるリスクを共有することで、失敗のリスクを減少させることができ、さらに技術の共有によって新製品やサービスを迅速に市場に投入できるという利点もあります。

共同開発提携

資源を共有することが可能で、人材や資金、設備を有効に活用することで開発コストを削減できます。異なる視点やアイデアを持つ企業との共同作業は、革新的な製品やサービスの創出を促進し、市場調査を共同で行うことで顧客ニーズに合った製品開発が実現します。

生産提携

提携先の生産技術や設備を活用することで生産効率が向上し、スケールメリットを活かして製造コストを削減できる点が大きなメリットです。また、需要に応じた柔軟な生産体制が整うことで、変化する市場に迅速に対応できるようになります。

調達提携や物流提携

大量仕入れや共同配送によって調達コストや物流コストを削減できることが特徴です。提携先との関係を通じて安定した供給が確保でき、共同で在庫を管理することで在庫の回転率を向上させることも可能です。

さらに、マーケティング提携では共同でプロモーションを行うことでブランドの認知度を高めることができ、情報提携では市場情報や業界動向を共有することで戦略的な意思決定がサポートされます。

業務提携を実行・解消する際の注意点

業務提携を実行・解消する際の注意点は、以下の通りです。

パートナーシップの選定

業務提携の成功には、シナジーが見込める適切なパートナーの選定が重要になります。自社が提携で実現したい目標や戦略と、相手企業の提供するリソースや能力が一致しているかを慎重に検討する必要があります。利益の不均衡や目的の不一致がある場合、提携の継続や成果の達成に問題が生じる可能性があります。

また、相手企業の経営状態や財務状況、運営能力などを調査し、信頼のおけるパートナーか見極めることも重要です。信頼性の低い企業との提携は、リスクやトラブルの発生を招く可能性があります。

情報漏洩や機密情報の管理

業務提携においては、情報漏洩や機密情報の管理に十分な注意が必要です。提携先との情報共有や技術の提供を行う際には、機密保持契約や情報管理策を確立しましょう。

情報漏洩や機密情報の不適切な取り扱いは、企業の競争力や評判に大きな損害を与える可能性があります。

独占禁止法への抵触リスク

競合関係にする企業間の業務提携により、一定の取引分野における取引領域に競争が制限されると、独占禁止法上の問題になる場合があるので注意が必要です。

具体的にどのような場合、独占禁止法のリスクを検討したほうがよいのか、公正取引委員会に寄せられた相談事例をご参照ください。

解除や終了のリスク

業務提携は、予期しない問題や状況によって解除や終了する可能性があります。提携契約の解除や終了に関する条件や手続きを明確にすることで、リスクを軽減することができます。

業務提携にはリスクが伴いますが、十分な評価と適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。提携相手の選定や契約の明確化、情報管理の徹底などが重要なポイントです。

業務提携の流れ


業務提携を開始するまでの一般的な主な流れは、以下の通りです。

①目的とニーズの明確化

提携を検討する企業は、まず自社の目的やニーズを明確にします。提携によって何を達成したいのか、どのような効果やメリットを得たいのかを明確にしましょう。

②パートナーの選定

提携相手を選定する際には、自社の目的やニーズに合致し、相互補完的な能力やリソースを持つ企業を探しましょう。信頼性や実績、経営状態なども考慮し、慎重にパートナーを選びます。

③交渉と契約

パートナー企業との交渉を行い、提携内容や契約条件を詰めます。提携の範囲や責任、利益分配、期間、機密保持などの詳細を明確にし、合意に至ります。契約書の作成もこの段階で行われます。

④実施と運営

提携が合意されたら、実際に業務提携を実行します。相手企業とのコミュニケーションを密にし、業務の遂行や情報の共有を行います。必要に応じて、共同プロジェクトや作業チームを組織し、業務の進行を管理します。

⑤評価と改善

提携が進行する間、進捗状況や成果を監視し、定期的な評価を行います。目標達成度や課題の把握、品質管理などを確認し、必要な調整や改善策を実施します。

⑥継続と終了の判断

提携の継続性や成果に基づき、継続するか終了するかの判断を行います。提携の目的が達成され、相互の利益が得られる場合は継続することもあります。逆に、目標が達成できない場合や関係が悪化した場合は、提携を終了することもあります。

業務提携を円滑に進めるポイント


想定しうるリスクや注意点をふまえ、円滑に進めるためのポイントについてご紹介します。

目的と範囲の明確化

業務委託をする前に、委託する業務の目的と範囲を明確に定義しましょう。双方が同じ目標を共有し、どの業務が委託されるのかを明確にすることで、業務の遂行がスムーズになります。

また、コスト配分、業務提携によって生じた利益をどのように配分していくかについても事前に規定しておく必要があります。特に、技術的な提携や共同開発などを行う場合には、成果物の知的財産権(特許権など)がどちらの企業に帰属するのかを規定しなければなりません。後々裁判などの紛争になることが多いため、契約締結時には十分に検討し、明確な基準を定めておくようにしましょう。

コミュニケーションの確保

業務提携には、相手企業とのコミュニケーションと調整が欠かせません。提携企業同士で協力体制を構築し、定期的なミーティングの開催や報告書の提出など、進捗状況や課題についての情報共有を行うことが重要です。コミュニケーションを通じて、問題の早期発見と解決にもつながります。

契約解除を想定した対応

一般的に、業務提携契約は継続することを前提に作られたものが多いため、重大な契約義務違反やどうしても契約を継続できない特別な理由などがない限り、一方的に解除することが難しい契約です。

特に以下のようなケースでは、契約を一方的に解除することが困難と考えられます。


- 両社の立場に事実上の上下関係があり、契約の解消を望む側が強い立場であり、相手側が反対意見を述べるのが難しい場合
- 契約解消を告げられた側が提携業務に大きく依存した経営状態であり、かつ提携業務の遂行に際し多額の設備投資を行っている場合
- 契約解消を希望する側が、かつて契約継続を明言していた(もしくは契約の継続を示唆する言動を行っていた)場合

後々のトラブルを回避するために、あらかじめ契約書に「どのようなケースであれば契約が解消できるのか」「一方の意思で解消される場合の損失補償」「契約継続の条件」などについて明記しておくとよいでしょう。
そこで、最後に残った在庫品の管理や処分を巡ってトラブルが生じないように、契約書にそれらの取り扱いに関する事項を明確に記載しておきます。一般的には、以下の内容を契約書に規定しています。

業務提携の事例・ニュース

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終わりに

以上、業務提携の概要についてご紹介しました。

業務提携は企業間の協力関係を築くことで、リソースの共有やリスク分散、新規事業創出などのメリットを享受できますが、情報管理などのリスクなどにも考慮する必要があります。また資本移動がないため、想定していたほどの効果やシナジーが生み出せない場合、空中分解を起こすケースは珍しくありません。

したがって、業務提携を検討する際にはその他の選択肢として、資本提携・M&Aまで視野に入れ、次の一手を考えるべきでしょう。

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監修

竹葉 聖

竹葉たけばきよし

公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、2016年に日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立上げメンバーとして7年間で1000社以上のIT企業の経営者と接触し、IT業界のM&A業務に注力している。18年には京セラコミュニケーションシステム(株)とAIベンチャーの(株)RistのM&A、21年には(株)SHIFTと(株)VISH、22年には(株)USEN-NEXTHOLDINGSと(株)バーチャルレストラン等を手掛ける。IVS2022 LAUNCHPAD NAHA及びIVS2023 LAUNCHPAD KYOTO審査員

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