コラム

【医新伝診】院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる診療所の事業承継

西山 賢太

著者

西山賢太

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[表示]

本誌を読まれている先生方も1度は「事業承継」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本稿では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

後継者不在率は89.3%?「後継者がいない」は特別なことではありません

「89.3%」・・・この数字は日本における無床診療所の後継者不在率です。日本医師会総合政策研究機構の調査によれば、「後継者が決まっていない」と回答した割合は89.3%で、親の事業を継ぐのが当たり前だった昔とは異なり、今や「子供が親の診療所を継ぐほうが珍しい時代」になりました。診療所を継がない子供が悪いわけではなく、時代の移り変わりと共に継げない理由が増えてきたと言ったほうが適切かもしれません。その理由には、『診療科・専門性の違い』『家族の意向・反対』『勤務医志向者の増加』などがあげられます。

診療科・専門性の違い
精神科と心臓血管外科では診療内容から治療薬に至るまで大きな違いがあります。親子で診療科・専門性が異なるケースは多々ありますが、実際に親の診療所を引継ぎ、子供が得意とする診療科で新たにスタートを切るケースはごくわずかです。

家族の意向・反対
医学部進学と同時に子供が大都市圏へ住まいを移し、Uターンを期待していたものの戻ってこないケースです。当初は実家の診療所を引き継ぐ予定でいたものの、医学部卒業後にそのまま大学病院で腕を磨き同僚と結婚・出産、子供が幼稚園・小学校に通い始めた時には住宅も購入しており、結果的には奥様の反対でUターンが実らなかった事例もありました。

勤務医志向者の増加
以前は開業を医師人生の目標として掲げていた方も多かったのですが、「病院の勤務医として臨床の第一線で医療を担い続けたい」「開業は失敗する可能性もありリスクだ」と捉える医師も増えてきました。自分のやりたい医療を自分の手が届く範囲及び限定的な責任の範囲内でやるという新しい価値観が生まれつつあります。

『親族に医師がいる・子供が医学部に通う』=『後継者がいる』という等式は既に当てはまらない時代を迎えている今、どのような方法であれば事業承継を円滑にできるのか、その要因を紐解いていきたいと思います。

第三者承継(M&A)について

不測の事態の保険代わりに、55歳を超えたら始める事業承継の準備

「事業承継の準備をしてください!」と正面切って言われても『まだまだ現役の自分には関係ない。』『子供が医学部に入ったから問題無い。』と自分事には捉えにくいものです。そこで下記の質問が自院・自身に当てはまるかまずは〇×を付けてみてください。

(1)開業から数十年が経過、患者も安定して来院し経営も順調
(2)臨床・診療の腕にも自信あり、若い医師には負けない自信あり
(3)長男は勤務医、次男は医学部在学中、後継者候補も万全だ

1つでも○があれば、事業承継を考えるタイミングを迎えているかもしれません。事業承継の準備を始める時期はいつが最適なのかと問われれば、それは『55歳を超えたら』と断言できます。
開業から数十年が経ち、業績も順風満帆、息子は勤務医、次男は医学部在学中。将来の不安がなく、心に余裕のある時は、様々な情報を整理整頓し、時間に余裕を持って検討・決断ができるからです。院長として毎日の診療を担うことは勿論大事なことですが、自身が始めた診療所の出口を見据えておくことも同じくらい大事なことと言えます。
極端な例を出せば、院長に万が一の事態が起きた診療所の最後を何度か見たことがありますが、「悲惨」という言葉の他に見出せるものがありませんでした。ご家族は閉院の手続きや業者対応で疲弊し、職員は職を失い、患者は治療が滞るといった事態になります。事業承継の準備だけでもしておけば、免れることができた諸課題も多数あります。院長の後継者探しだけでなく、医療法人化や資産の相続税対策もその1つでしょう。
「事業承継の準備』はご自身だけではなく、『家族・職員・患者のための行うもの』であることを強くご認識頂きたいと考えます。事業承継の準備が不測の事態が起きた際の保険に代わり、いわばお守りにもなるのです。

適切な『相談先』とは?診療所の事業承継に経験を持ち秘密保持を徹底できる『企業』

事業承継を真剣に検討しようと思い立った時、悩ましいのは相談相手です。親・親族・友人・先輩後輩・金融機関・会計事務所・出入り業者など様々な候補が上がると思いますが、むやみやたらに誰にでも相談を持ち掛けることは避けてください。

診療所という単体の事業でも様々なステークホルダー(利害関係者)が関与しているため、情報管理は徹底する必要があり、その相談先は限定するのが鉄則です。

最初の相談先として適切なのは、「情報と経験を持ち秘密保持を徹底できる企業」です。
具体的には、下記の3つに該当するか否か必ず確認をして頂きたいと思います。
(1) 診療所における事業承継の成功事例を豊富に持つ企業
(2) 診療所を引き受けたいというニーズ(買いニーズ)を蓄えている企業
(3) 昨今の医療情勢やトレンド、スキーム(事業承継の方法)を押さえている企業

事業承継や第三者承継(M&A)を生業とする会社が昨今非常に増えておりますが、株式会社とは違う「医療機関の事業承継」に慣れている企業は限られます。くれぐれも相談先にはご注意いただければと思います。適切な相談先を決めることが事業承継における第1歩となりますが、もし相談先に困るということであれば東証一部に上場しており、日本で最も事業承継の支援をしてきた日本М&Aセンターも相談先の候補にご検討ください。

日本М&Aセンターは、設立30年で累計6,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業承継の支援をしてきた会社です。病院・診療所・介護事業の第三者承継(М&A)を毎年約100件成功に導いてきた医療・介護分野の専門集団『医療介護支援部』が診療所の事業承継を支援します。

著者

西山 賢太

西山にしやま 賢太けんた

日本M&Aセンター医療介護支援部(2021年6月時点)

薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に携わる。その後大手医療法人グループにて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営支援に取り組んでいる。

この記事に関連するタグ

「事業承継・経営者・医療介護」に関連するコラム

徹底比較!「新規開業」VS「承継開業」

M&A全般
徹底比較!「新規開業」VS「承継開業」

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

承継開業をおススメする3つの理由

M&A全般
承継開業をおススメする3つの理由

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

事前に知っておきたい!「クリニック開業の落とし穴」

M&A全般
事前に知っておきたい!「クリニック開業の落とし穴」

クリニックの新しい開業方法として「承継開業」が注目を浴び始めています。しかしながら、詳しいことはわからないという医師の方も多いのではないでしょうか。「承継開業」は、新規開業にはない数々の恩恵を受けながら、開業に伴うリスクを極力少なくできるというメリットを活用することができます。まさに、承継開業は、多忙な医師の皆様の時間と労力を節約してより安全に開業ができる方法と言えます。日本M&Aセンターのクリニ

身売り・乗っ取りは本当か?「正答率10%未満クリニックM&A5つの誤解」

M&A全般
身売り・乗っ取りは本当か?「正答率10%未満クリニックM&A5つの誤解」

M&Aという言葉を聞くとどのようなイメージを皆さんは思い浮かべるでしょうか?「身売り」や「敵対的買収」というマイナスイメージを持つ方も少なくないと思います。医療業界におけるM&Aはほとんど公にならないため誤解をされている方が多くいらっしゃいます。本稿では「正答率10%未満、クリニックM&A5つの誤解」と題して、医療業界におけるM&Aの真実をお伝えいたします。1.身売り・乗っ取りは本当か?M&Aが今

先行きが見えない今こそ真剣に考える クリニックの事業継続・承継方法3箇条

M&A全般
先行きが見えない今こそ真剣に考える クリニックの事業継続・承継方法3箇条

新型感染症が猛威を振るうなか、あらゆる業界で景気の見通しが一段と厳しくなり、法人、従業員とその家族、そして患者を守るために事業継続・承継に関しての相談が全国のクリニックから寄せられています。世間がこのような状況の中、クリニックの事業継続・承継方法の一つの手段として多くの医療機関に注目されている第三者承継について、正確な情報を本稿にてお伝えいたします。事業継続・承継を考え始める『ベストタイミング』は

準備が必要なお金は半額以下? クリニックの承継は高値案件こそが狙い目?

M&A全般
準備が必要なお金は半額以下? クリニックの承継は高値案件こそが狙い目?

クリニックの譲受けを検討されている際、後継者を探しているクリニックの譲渡希望価格を見て「これほど高額であれば、新規に開業した方がいいのでは」と感じた経験を持つ方は、少なくないのではないでしょうか。クリニックの開業を検討する際に「新規開業と承継開業を金額で単純比較することは危険」という点に留意が必要です。本記事では承継案件における、譲渡希望価格の捉え方、検討ポイントについて事例を交えてお届けします。

「事業承継・経営者・医療介護」に関連するM&Aニュース

アダストリア、TODAY'S SPECIAL事業及び GEOROGE'S事業を吸収分割により承継する会社の株式取得(子会社化)へ

株式会社アダストリア(2685)は、2024年4月17日開催の取締役会において、株式会社ウェルカム(東京都目黒区)が運営するTODAY'SSPECIAL事業及びGEOROGE'S事業を、吸収分割により承継する会社(以下「対象会社」)の全株式を取得し、子会社化することについて決議した。なお、本件は、ウェルカムの100%子会社である株式会社トゥデイズスペシャル(東京都目黒区)に対して、吸収分割の方法に

日本郵政、主要子会社の不動産管理等に関する業務を日本郵政建築に承継へ

日本郵政株式会社(6178)は、2024年2月26日開催の取締役会において、2024年7月1日を効力発生日(予定)として、会社分割の方法により、子会社である日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険(以下、合わせて「主要子会社」)等に対して行う不動産の管理等に関する業務を、2024年4月1日に設立予定の100%子会社(以下「当該子会社」)へ承継させることを決定した。【子会社の

イトーヨーカ堂、北海道・東北・信越エリアの一部店舗の事業承継等を発表

株式会社イトーヨーカ堂(東京都千代田区)は、北海道・東北・信越エリアの一部店舗について、株式会社ヨークベニマル(福島県郡山市)、株式会社ダイイチ(北海道帯広市)及び食品スーパーロピアを運営する株式会社OICグループ(神奈川県川崎市)と事業承継等に関する契約を締結した。【本件の目的】2023年3月9日に株式会社セブン&アイ・ホールディングスが公表した「中期経営計画のアップデートならびにグループ戦略再

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース