コラム

あの時の選択は本当に正しかったのか?

長坂 道広

日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブ・アドバイザー

事業承継
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大きな買い物(住宅や車など)をした後、所有できた喜びと同時にどういうわけか不安を抱いてしまうことがあります。 「本当に自分があの時にした選択は正しかったのか?」 と、その不安を解消するために住宅や車のチラシや雑誌などを購入前よりも熱心に読んで再検討してしまうことがあります。誰もが一度は体験したことがある心理ですよね。 こういった心理が生まれる原因としては、十分に検討したと思える“情報と選択肢”が不足してしまうことにあります。そうすると不安が生じ、果てには後悔に至ります。 事業承継は、その最たるものだと、私は思うのです。 私は、自分自身のこれまで仕事人生の中で、事業承継後に「本当にこれで良かったのかな」と言われる元経営者の方にたくさんお会いしてきました。 その方々のほとんどは、選択したことへの後悔よりも、十分に検討していなかった検討方法に対する後悔を強く感じていました。選択肢の納得感、確信が少し乏しいのです。私が株式会社事業承継ナビゲーターを設立し、事業承継の方向性の検討自体をサービスで提供したいと思ったのは、「事業承継した後も絶対に後悔しない、ベストだと思える納得した事業承継を検討してもらい、経営者のみなさまをはじめ会社に関わる人すべての人に幸せになってほしい」という想いからです。

“選ぶ”とき、あなたはすべてを並べて考えている?

事業承継の選択肢の優先順位は?

事業承継には3つの方法しかありません。親族承継・社員承継・M&Aです。さらに、事業承継におけるM&Aの活用が年々増加傾向にあるということはみなさまご存知だと思います。 ただ残念なことは、“消去法”でM&Aを選択したケースもまだまだ多いことです。 私が講師をしている座談会の冒頭で、必ず参加者の皆様に尋ねていることがあります。 「現時点での、事業承継の選択肢の優先順位を教えていただけますか?」 そうすると、 「できれば親族承継、ダメなら社員承継、それもダメならM&A」 と答える方がほとんどです。 「それはなぜですか?」 と尋ねると、理由は概ね 「冷静に、順当に考えた結果です」 と返ってきます。 共感できるし、なにも変なところはなく、ご自身の事業承継について客観視した上での回答だと思います。 しかし、この考え方は、「すべての選択肢を検討する」よりも、「一つ一つ検討していく」という“消去法”に似た検討手順です。 「当初の希望が通らず、後に残った選択肢だから選択した」というと、納得とは少し遠い決断の心理に至るでしょう。

消去法で考えてしまうには理由がある

もう少し踏み込んで、私なりの見解をさせていただくと、「1.承継 2.社員承継 3.M&A」という検討順位は、「自分との距離や具体的な顔が見えやすい順位」と言い換えることができます。
社内に息子さんがいるなら、距離は近く顔もわかっています。しかしM&Aとなると、距離はおろか顔もわかりませんよね。
“距離と顔”が、知らず知らず経営者の方の心理的ハードルになっているのです。

つまり、同時にすべての選択肢を検討していただくためには、すべての選択肢で同じような条件で並べる必要があるのです。
とはいえ、親族・社員の後継者候補は経営者の方が自分自身で頭に思い描くことができても、M&Aのお相手となるとなかなかそうはいきません。

そこで、私たちの出番です。 「M&Aを検討したらどのような候補先が考えられるのか?」 この問いについては、座談会参加者に必要資料をいただいたのち、想定されるM&Aのお相手先を具体的な会社名とシナジー効果のイメージを添えて提示しています。
今まで全く顔が見えなかったM&Aのお相手が、見えるようになるのです。
このプロセスを経てようやく、事業承継のすべての選択肢が検討のテーブルに並ぶことができます。
私たちはこのプロセスを、「ワンストップ事業承継座談会」で行っています。 ぜひ、本座談会をうまく使っていただき、事業承継のすべての選択肢を検討のテーブルに乗せてみてください!
※現在、当座談会はおこなっておりません

著者

長坂 道広

長坂ながさか 道広みちひろ

日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブ・アドバイザー

創業期の日本M&Aセンターに入社。未上場企業のM&Aという日本で未開拓だった市場で25年間M&A仲介に携わる。 日本M&Aセンターの上場も経験するが、M&Aだけではなく、関係者が喜べるあらゆる承継手法を提供できるよう、2016年日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスの協力により「株式会社事業承継ナビゲーター(現 株式会社ネクストナビ)」を設立。取締役就任。

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