日本M&Aセンター
上場企業M&Aマガジン 2018年8月1日

イノベーションを起こすM&AとPMIの重要性

弊社クライアントのうち上場している企業の多くが、少子高齢化、国内マーケットの縮小、企業間競争の激化の加速に年々直面しており、各社の株主は、成長を生まない場合の内部留保に対して益々厳しい眼を向けはじめている。株主はこれまで以上に、各社に、今までに無いダイナミックな「イノベーション」を強く期待している。M&Aの検討が必然的といえるのはまさにこの点にある。2012年にリクルートがIndeedを買収し収益モデルのシフトチェンジを行ったように、あるいは2017年にソフトバンクが英半導体設計大手アーム・ホールディングスを買収したように、イノベーションを意図したM&A戦略はもはや、経営上の一つの選択肢になっている。M&Aを通じて新しい技術やサービスを開発している新興企業と手を組みイノベーションを取り込む方針をとることは、結果的に自力でイノベーションを起こしたのと相当な、場合によってはそれ以上のイノベーション効果をもたらす。

しかしながらもちろん、M&Aを実行に移すだけではイノベーションは起きない。たとえどんなにイノベーティブな企業とM&Aを実行したとしても、その後の統合状況によってはその価値やスピードを毀損しかねない。ダイナミックな「イノベーション」を目指したM&Aが成功するためには、そもそも、そのM&A戦略を検討・決断し、推進するトップが、最終的なM&Aの成功は必然ではなく蓋然なのだという「PMI」の視点をもつことが必要不可欠なのだ。

M&A巧者である日本電産は、中期戦略目標でPMIの積極的なサポートをうたっている。どのようなPMI体制を整備し、どのように周囲とコミュニケーションをとってPMIを推進していくのが有効かつスムーズであるかについて、トップあるいはトップから指名を受けたM&A担当者・チームが陣頭指揮をとって、M&Aが成約する前から備えておくことが必要だ。こうした準備を万全に行っている企業のみが、M&Aを通じたスピード経営、レバレッジ経営、そしてグローバル経営等を手にし、ひいてはイノベーションを起こすことができるのだ。

交渉段階からPMIは始まっている

しかしながら、日本企業は往々にしてPMIが不得意と言われる。よく見られる典型的な問題点には次のようなものがある。

典型的な日本企業にみられるPMIに関する問題点(抜粋)

(1)PMIの理解が浅く、何をすべきかよく分からない
(2)大企業・上場企業の理論・ルールを拙速に押し付ける
(3)いつまでたっても経営ビジョンを伝えない
(4)実態を理解した上での新体制(人材派遣)になっていない
(5)膨大なPMIタスクに優先順位が付いておらず遅々として進まない

このような問題の根底にはまず、M&Aのスタート地点を誤解していることがある。「M&Aが成約して、いよいよ本番スタートだ」と意気込むM&A責任者に出会うことがよくあるが、果たして本当だろうか。「M&A本番」が、PMIの開始を意味するものと考えると、そのタスクは、遅くともM&Aの交渉段階から既に始まっている。仕組みやルール、価値観が異なる企業同士が、今後の設計図を作ろうと思えば、まずはお互いにどんな武器があるかどんな課題があるかをオープンに洗い出す必要がある。もちろんそれは自動的に出てくるものではなく、相手の状況や心境に配慮しながら慎重にコミュニケーションをとり関係性を築いていかなければならない。その時点ですでにPMIは始まっているのだ。

PMIが重要なM&Aのケース

図: PMIが特に重要となるM&A案件の特徴

図: PMIが特に重要となるM&A案件の特徴

 

PMIタスクの内容や優先度、そして各PMIタスクにかける時間・コスト・人員の規模は、M&A案件の内容によって異なってくる。少なくとも、PMI推進が非常に重要になってくる(効果を発揮する)案件の特長は図表のとおりである。自社の取り組むM&A案件が、ここに掲げた4つのうち、1つでも該当する場合、緊張感を持って、本気でPMIに取り組んで頂きたい。これから先、誌面で紹介するPMIの方法論に関する寄稿が、取組みの一助となれば幸いである。

写真:西川 大介

西川ニシカワ 大介ダイスケ

日本M&Aセンター 企業戦略部 部長

米国ニューヨーク市出身。大手プラントエンジニアリング会社、外資系コンサルティング会社、大手金融機関(M&Aアドバイザリー部門)を経て日本M&Aセンター入社。M&A戦略立案からM&A成立後の統合に至るまで、10年以上に及ぶ豊富な実務経験を有し、多くの有力上場会社の案件に関与。

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