コラム

“戦略的なM&A”で自社の成長を実現する

臼井 智

著者

臼井智

日本M&AセンターTOKYO PRO Market事業部 上場推進部長

M&A全般
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IR活動の充実・強化を背景に、多くの上場企業が、中期経営計画を策定し投資家に向けて企業の事業方針や成長戦略を公表している。

成長戦略は、自社リソースのみに基づく成長戦略(オーガニック成長)と他社リソース活用に基づく成長戦略(M&A・アライアンス戦略)に分類することができる。

2017年に公表された上場企業各社の資料を見ると、中期計画達成や成長戦略実現の手段としてM&A・アライアンス戦略の活用を示している企業が過半である。現状の経営環境やわが国の状況において、オーガニック成長だけでは、中期計画の実現や投資家の期待する成長スピードを上回ることを困難に感じている企業が多いことの証左であろう。さらに各社は、公表した自社の中期経営計画をいかに実現していくかの「実現力」が問われている。従って、M&A戦略の活用を掲げている企業もまた「M&Aの実現力」が問われているのである。

M&A戦略実現には“能動的M&A”が必要

では、各社が自ら掲げたM&A戦略の「実現力」について分析してみたい。成功するM&Aのプロセスはおおよそ以下のように分解できる。

(1)自社の成長戦略の立案と、それを実現するためのM&Aの 位置づけの明確化 (2)M&A相手企業との出会い (3)相手企業との交渉、企業価値判断、投資スキームの確定、 最終契約締結・クロージング (4)買収後のシナジー促進(PMI)

上記プロセスをシンプルに言い換えると、(1)どのような戦略のもとに、(2)どのような相手と、(3)どのような組み方をし、(4)どのように効果を発揮するかということになる。この一連の検討が戦略的なM&Aの検討といえる。

M&Aは成約・実現してこそ始めて戦略手段となりえる。なかでも、M&A戦略がオーガニック成長と根本的に異なる点が、「相手企業」の存在である。相手企業に出会えなければ、そもそも以降のプロセスが発生しない。相手企業との出会いがまさにM&A戦略の「要」なのである。

M&A市場は圧倒的に売り手市場 いかにしてM&Aの実現力を高めるか

良い相手企業との「出会い」が戦略的なM&A実現の「要」であるならば、いかにしてそれを行うかを検討していかなければならない。現在のM&A市場は圧倒的に売り手市場である。売りたい会社1社に対し、多くの企業が買いたいと手を挙げるのが普通だ。思うような「相手企業」との出会いは、待っていてもなかなか訪れない。自ら能動的にM&Aの相手企業との出会いを探す「能動的M&A=プロアクティブサーチの活用」が、M&A戦略を実現するために必要なのである。 日本M&Aセンターは、「実現するM&A」をサポートすることこそがM&A仲介会社の価値であると考えている。Future本号では、M&Aプロセスの中で、中期経営計画策定からプロアクティブサーチの実行、企業評価、M&A後の統合支援(PMI)と、実績と情報力でわれわれが強みとしている分野について改めてまとめている。 ぜひ、われわれと一緒に「実現力」のあるM&Aを検討いただければ幸いである。

広報誌「Future」 vol.13

Future vol.13

当記事は日本M&Aセンター広報誌「Future vol.13」に掲載されています。

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著者

臼井 智

臼井うすい さとし

日本M&AセンターTOKYO PRO Market事業部 上場推進部長

1991年に山一證券株式会社に入社、M&A部門に配属。同社自主廃業後、大手証券会社M&A部門を経て2009年に日本M&Aセンター入社。27年間にわたり一貫して国内外のM&A仲介アドバイザリー業務の第一線に従事。上場企業同士の経営統合から中小企業の事業承継案件まで、規模の大小を問わず幅広い業界にて200件超のM&A成約実績がある。最近は、S&P Global Market Intelligenceに2024年M&A展望についてコメントを寄稿。

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