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調剤薬局業界再編の今

M&A全般

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調剤薬局業界の成約件数は倍増

2013年4月より、調剤薬局業界特化のM&Aプロジェクトチームの責任者を拝命した。その後わずか1年弱の間に株式会社メディカルシステムネットワークと株式会社トータル・メディカルサービスの経営統合案件を含め、10件のM&A成約を支援させて頂いた。第1線のM&A担当者として、本業界にて再編が急速に加速していることを肌でひしひしと感じている。

地場でトップクラスの調剤薬局が譲渡へ

調剤業界では、現在でも上位10社でシェアはまだ10%程度である。最近の当社実績では、まだ単店舗等の小規模な譲受事例も散見される。これはまさに寸土を争う戦国時代であり、業界再編のピークを迎えていることを端的に表している。この1年間の動きとしては、年商30億~50億程度の優良経営をしている地域で中堅クラスに位置付けられる調剤薬局が譲渡へ動いたことが大きな特徴である。

事業承継型M&Aから業界再編型M&Aの時代へ

オーナーの考え方にも変化がみられる。従前は60歳となり後継者不在のためのM&Aが多かったが、直近成約した譲渡企業はなんと8件続けて業績が非常に良く、さらに優秀な息子や娘・兄弟などが後継者として存在していた。先見性のある優秀な中小薬局は譲渡へと一気に動いているのだ。また今回の診療報酬の改定もあり、相談件数は急増している。

買い手企業のスタンスにも差が出てきた

全国に広げて各地を補強する企業と、地域を徐々に拡大しつつ全国展開を目指す企業では、M&A戦略に大きく差が出始めており、譲受け企業によって買収する際の株価にも大きく差が出始めている。採用教育面やシステム面の違いにより、中小薬局と大手薬局では患者に提供できるサービスに差が出てきており、特に災害時の対応や国内医療費の削減などを考えると、当該業界の再編は急務であると感じている。当社としては、業界の発展や目指すべき方向に理念を持った企業にM&Aを進めて頂きたいと考えている。

近年の日本M&Aセンターの調剤薬局成約実績の一例

近年の日本M&Aセンターの調剤薬局成約実績の一例

広報誌「Future」 vol.4

Future vol.4

当記事は日本M&Aセンター広報誌「Future vol.4」に掲載されています。

広報誌「Future」バックナンバー

著者

渡部 恒郎

渡部わたなべ 恒郎つねお

日本M&Aセンター 取締役

学生時代に起業を経験の上、日本M&Aセンター入社。2008年から2015年までの8年間で最優秀社員賞を3度受賞。 中堅・中小企業M&AのNo.1プレイヤーとしてM&A業界を牽引してきた。 トータルメディカルサービスとメディカルシステムネットワークのTOBは日本の株式市場で最大のプレミアムを記録した(グループ内再編を除く)。 2020年同社最年少で取締役に就任。2020年11月末時点において、 国内の時価総額1兆円以上企業における最年少の常勤取締役となった。 著書に「業界再編時代」のM&A戦略―No.1コンサルタントが導く「勝者の選択」』(幻冬舎、2015年)、「業界メガ再編で変わる10年後の日本」~業界・部署・技術の境界線がなくなる時代へ~(東洋経済新報社、2017年)がある。

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