コラム

食品業界の異業種M&A|異業種M&Aにより「企業の存続と発展」を実現

勝又 俊

著者

勝又俊

日本M&Aセンター業界再編2部/食品業界専門グループ

業界別M&A
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株式会社日本M&Aセンター食品業界専門グループの勝又 俊です。
当コラムは日本M&Aセンター食品業界専門グループのメンバーが業界最新情報を執筆しております。
今回は勝又が「食品業界の”異業種”M&A」というテーマでお伝えします。

異業種M&Aにより「企業の存続と発展」を実現

異業種M&Aとは

本コラムのテーマである「異業種M&A」とは、言葉の通り、異業種同士による資本提携を指します。
これは読者の皆様が想像している業種同士の域、範疇を超え様々な事例が繰り広げられております。

直近の事例をあげますと、KDDIによる三菱商事傘下、ローソンへのTOB(株式公開買い付け)です。

本件についてKDDIは「時代の変革期なので、思い切った投資を決断した」KDDIの高橋誠社長は会見でそう語っています。

また、本件について市場としては「利益剰余金が約5.4兆円にまで積み上がる中、KDDIが大型M&Aに打って出る可能性」について、かねてより通信業界でささやかれてきていました。
しかし、異業種のコンビニへの出資には競合の通信キャリアからも「驚いている」(ソフトバンクの宮川潤一社長2024年2月7日決算会見時)との声が上がった。

今回でいうメイン事業とは別の「異業種のコンビニへの出資」というのがまさに、異業種M&Aです。
本件はKDDI史上、最高額出資であり「異業種への挑戦」が見て取れる好事例であります。

このように、現在の食品業界を取りまく環境は刻一刻と変化していると考えられます。
M&Aという観点だけでなく、業界全体を俯瞰してもです。

具体的にみていくと、日本社会では少子高齢化による胃袋の減少、つまり消費の減少を危惧する声は枚挙にいとまがありません。

また、近年ではCovid-19による外食産業への大打撃と相次ぐ倒産。
直近では某大手外食企業による食中毒の連鎖など食品業界は大きく揺れ動いております。

一方で、上記のように脆弱性があるからこそ、異業種から参入し、外部の知見を活かし、てこを入れることで改善が大きく見込めると考えるケースも多いようです。
記述したKDDI×ローソンも、KDDIのもつテクノロジーを小売業であるローソンに活用することで収益性の改善や更なる事業の発展が見込めるとの考えがあったとのことです。

そういった背景もあり、異業種が参入してくることを意味する“異業種M&A”が当たり前になる時代もそう遠くないことが推察されます。

異業種M&A支援例の解説(経緯と狙い)

筆者が昨年、お手伝いさせていただいたM&Aも異業種M&A事例を参考までに経緯と狙いについて解説いたします。

経緯

譲渡企業は関東エリアで酒販小売店を2店舗を運営する企業でした。
創業以来、70年以上地元に根付いたビジネスを行ってきており、知名度が高かったのですが、後継者不在。

オーナーが70歳を超え、親族も会社を継がないことが確定したこともあり、M&Aを検討し始めました。
当初は、同業種と一緒になれれば、との考えでした。

そういった経緯でご相談をいただきお相手を探し始めたのが昨年2023年の9月。
その後、11月にお相手が出てきて、12月に無事ご成約となりましたが、そのお相手が異業種でありました。

譲受企業は関東エリアを中心に葬儀事業を展開する企業です。
葬儀業の先行きは明るく、業績が安定しているからこそ、M&Aによる新規事業で同業他社との差別化を図りたいという意向から本件、ご関心を持っていただいたという背景がございます。

酒×葬儀の異業種M&Aでありながら、葬儀を執り行うには酒類との関わりは無視できません。
譲渡企業には自社ブランドの酒類や安定した仕入れルートを保有していたからこそ、相乗効果も大いに見込めたことが成約に繋がったと考えております。

M&A後の方針

M&A実行後の事業戦略としては、譲渡企業オーナーには顧問で数年残ってもらい、譲受企業の採用力でマンパワーの問題を解決し、事業への変革や若手人材の人員育成を行っていきます。

採用や資金面は譲受企業が足支えしながら、譲渡企業の酒類仕入力やブランド力を最大限活かすことで、双方の発展を目指していくとのことです。

食品業界の異業種M&Aの過去事例

上述した事例に限らず、過去にも数多くの『異業種M&A』が行われていますのでここからは事例をいくつか紹介いたします。

###【譲渡】有限会社木村ピーナッツ×【譲受】京葉ガスエナジーソリューション株式会社(2021年)
譲渡企業は、千葉県内でソフトクリーム事業、落花生商品の製造販売を中心に行っており、高い認知度とネームバリューを誇っておりました。

譲受企業は、再生可能エネルギーを全国で展開している企業です。

本件の*主目的は「地域産業の活性化」*です。再生可能エネルギー事業を普及させるための資格「FIT」取得条件に地域産業の活性化があり、京葉ガスエナジーソリューション株式会社にとっては、その地域産業の活性化が喫緊の課題としてありました。

そういった状況下、営農を基軸とする第6次産業に進出することが課題の解決と長期的な企業発展に寄与するものであると考え本件実行に至ったとのことです。
食品事業を営む企業がエネルギー事業を営む企業とM&Aをした事例となります。

【譲渡】シグマ薬品株式会社×【譲受】株式会社万代(2022年)

譲渡企業は、「スーパードラッグシグマ」の店名でドラッグストア9店舗、「こぐま薬局」の店名で調剤薬局1店舗を展開していた企業で、年商約30億円規模でした。

譲受企業は、関西圏を中心に155店舗のスーパーマーケットを展開する企業で年商3,500億以上です。

少子高齢化が進む日本国内において安定的に成長が見込める事業領域であるドラックストアへ重点的に経営資源を投入し、事業範囲の拡大を進めることを目的としてM&Aを実行いたしました。

上記の事例のように、ス*―パーマーケットが加工食品や酒類・飲料などに加えて、ドラッグストアの品揃えも扱う「フード&ドラッグ」の動きが活発*になっています。

少子高齢化に伴い日本の胃袋の数は変わらない一方で、今後は客単価を上げていく必要があると考えると、スーパーとドラックストアが提携することで、顧客のニーズに答えていくことが可能になるため、今後はより「フード&ドラッグ」の動きは加速していくと思われます。
本件もまた食品業界の企業が、異業種を譲り受けた事例です。

【譲渡】株式会社ル・プチメック×【譲受】株式会社ベイクルーズ

譲渡企業は、京都発祥のベーカリーブランド、「Le Petit Mec」を展開する人気ベーカリーショップ。
経営は順調であったものの、人材採用や店舗展開の点で今後の成長に限界を感じていたためM&Aを考えるに至りました。

譲受企業は、大手アパレル企業。
多数のブランドを展開しています。アパレル業界の先行きを予想したうえで、食のマーケットに目を向け食品事業も現在、幅広く運営しています。
そういった背景もあり、ブランド力を有する譲渡企業に関心を抱きました。

本件実行後は、譲渡企業の人材採用や店舗展開を補佐しつつ、譲受企業にとって新しいマーケットである食品領域の発展に相互に寄与しています。

異業種M&Aにより「企業の存続と発展」を実現

上記表題の通り、異業種M&Aという選択肢を取ることで、企業の存続はもちろんのこと、持ち合わせていないリソースを共有することで双方企業の発展に寄与することができます。

企業は、ヒト、モノ、カネ、情報をより多く、より質を高く内製化することが重要です。

異業種のM&Aというのは、異業種だからこそ互いのヒト、モノ、カネ、情報もまったく異質であり、多様性を持つことができます。

それはつまり、業界の枠を超えた発展が期待できると言えると筆者は思料いたします。

後継者がおらず事業承継に対して不安を持つ場合、あるいは少子化が進む日本社会において今後の発展が不安という場合は一度、M&A、それも異業種とのコラボという可能性を探ってみるのも経営戦略としては選択肢として必要かもしれません。

著者

勝又 俊

勝又かつまた しゅん

日本M&Aセンター業界再編2部/食品業界専門グループ

1998年千葉県県生まれ。早稲田大学文化構想学部を卒業後、新卒で日本M&Aセンターに入社。外食・食品業界専門チームにて、企業の存続と発展に向けたМ&A支援に携わる。

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