従業員の高齢化にどう対応する?ポイントを解説

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少子高齢化は市場経済だけでなく、企業に勤務する従業員にも大きな影響を与えています。若年層の人材の確保が進まず、すでに建築業などでは従業員の高齢化が急速に進んでいます。

少子化社会は今後も長期にわたり続くことが見込まれていることから、さらに多くの業界に同様の現象が波及していくことが予想されます。本記事では、従業員の高齢化が進んだ場合、企業にどのような影響が生じるのか、対策や解決策としてのM&Aについてご紹介します。

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従業員の高齢化が進む日本企業

日本企業で働く労働者の平均年齢は、上場・非上場企業を問わず、この40年間で高齢化が進んでいます。独立行政法人経済産業研究所「従業員の高齢化がイノベーションと生産性に及ぼす影響に関する実証分析」によると、1980年には35歳前後であった従業員の平均年齢が、約40年が経過した2018年には40代にまで高齢化が進んでいます。


引用元:総務省統計局『統計トピックスNo.129統計からみた我が国の高齢者』図4

上記グラフをご覧のように、男女を問わず高齢の就業者数は増加しており、2020年には906万人と過去最多を記録しました。
これらのことから、日本企業の従業員の平均年齢は上がり続けており、その主な原因は男女を問わず高齢就業者数の増加にあることがわかります。

従業員の高齢化は、小規模事業者や地方で深刻化

このような従業員の高齢化は、地方にいくほど深刻になっており、また同じ地域でも小規模事業者であるほどその深刻さが厳しくなっています。下図をご覧ください。


引用元:中小企業庁「2020年版小規模企業白書 第2部第3章 地域における雇用と小規模事業者」

これは、就業者の年齢構成を、人口密度が低い順に区分1から4まで分類したものです。この表から、人口密度が低い区分1に近づくほど、高齢者の就業者数が増えていることがわかります。

次の図をご覧ください。


引用元:中小企業庁「2020年版小規模企業白書 第2部第3章 地域における雇用と小規模事業者」

これは、従業者数の規模別に従業者の年齢構成を示したものです。従業者規模が小さくなればなるほど、全従業者に占める60歳以上の従業者の割合が高くなっていることがわかります。

つまり、都市部よりも地方の企業の方が従業員の高齢化は進んでおり、また同じ地域であれば規模の小さい企業になるほど高齢化が深刻であるということになります。

従業員の高齢化が企業にもたらす影響と対策

労働生産性の低下

従業員の高齢化が進むと、まず考えられるのが労働生産性の低下です。
高齢者は体力や健康状態の問題により本来のパフォーマンスが発揮しにくくなります。したがって、有効な対策が打てなければ、業務の効率性や生産性が低下する可能性があります。

高齢者の健康管理や労働環境の改善は、生産性や労働意欲の維持に大きな影響を与えます。予防医療や健康促進プログラムの導入、柔軟な労働時間制度の提供など、高齢者の働きやすさを考慮した施策を取り入れましょう。

人手不足

高齢者の退職により、企業が必要とする人材が不足する可能性があります。これにより、業務の遅延や品質の低下、新しいプロジェクトの実施の遅れなどが生じる恐れがあります。
また経験・知識豊富な高齢者の退職により、企業内での専門知識やノウハウの喪失が起こる可能性も考えられます。

人材不足を解消するために、若手や中堅の人材の育成や採用に力を入れることが重要です。大学や専門学校との連携や研修制度の充実など、人材を確保するための施策を検討しましょう。
また経験や知識を属人化させず次世代に継承するために、知識共有の仕組みを導入することが重要です。

事業承継の選択肢が狭まる

高齢の従業員が増えると、社内から後継者を登用するなど事業承継の選択肢が狭まるため、次世代への承継が難しくなります。
このように、従業員の高齢化が進むとさまざまなリスクが顕在化する結果、企業の成長が鈍化し、最終的には廃業の危機を迎えることになりかねません。

従業員の高齢化に悩む企業をM&Aが解決できる理由


従業員の高齢化に悩む企業が、会社の存続のために前述の対策のほか、外部の第三者へM&Aを通じて承継を行うケースが増えています。
M&Aによって実現できることは以下の通りです。

事業承継問題の解決

上述のように、従業員の高齢化が進めば廃業のリスクが高まり、事業承継の難易度は上がります。
その結果事業の継続が難しくなれば、取引先との関係は途絶え、従業員の雇用も継続できなくなってしまうでしょう。

しかし外部の第三者に経営権を譲渡することで事業継続が可能となり、会社の存続が約束されます。従業員も安定した雇用環境で労働意欲が高まり、業務効率がアップすることも期待できるでしょう。

人材採用の実現

M&Aによって資本力のあるグループ入りすることで、譲渡先のブランド力や資本力を活かした人材採用を行うことができます。
また会社説明会や求人のためのシステムを共有化することで、人材確保のコスト削減も望めます。

これら取り組みを通じて、これまで難しかった若年層の人材確保も可能になるでしょう。またグループ企業内での転籍などが活発に行われれば、その中から次世代を担う優秀な人材を確保しやすくなります。

シナジー創出による事業成長

M&Aは両社の目的やシナジー創出の可能性を十分に検討した上で行われます。
そのためM&A後に譲渡先の持つ技術、設備、ノウハウなど経営資源を活用する、あるいは両者の強みを組み合わせることで、シナジー効果を創出し、単独では難しかった事業成長の実現が期待できます。

従業員の高齢化を背景にM&Aをする際のポイント

会社存続の選択肢としてM&Aを活用する場合、主に留意しておきたいポイントは以下の通りです。

M&A後の従業員へのフォローの重要性

中小企業の友好的M&Aの場合、株主構成以外に大きな変更が生じることはありません。
しかし、M&A=乗っ取り、などネガティブなイメージが先行し、自社がM&Aをすると聞いて従業員の中には不安を感じる人も出てくるでしょう。高齢の従業員であれば、その傾向はさらに強くなることが想定されます。
M&Aへの不安から離職を考える従業員が大量発生してしまうと、M&Aを行った本来の目的も果たせず本末転倒になります。

こうした事態を回避するにはM&Aを従業員に告げる際、譲渡先企業の経営陣とともに、従業員に対して丁寧に説明を尽くして不安を取り除くことが大切です。

望むタイミングで成立しない場合がある

M&Aは譲渡する側、譲受ける側双方のニーズが一致して初めて成立に向けた交渉が始められます。そのため必ずしも自分たちの望むタイミングで成立しない場合も考えられます。
そのため、できるだけ早い段階から、事業承継の選択肢の1つとして情報収集、検討を進めておくことが良いでしょう。

終わりに

従業員の高齢化は、企業に様々な影響をもたらす可能性がありますが、適切な対策を講じることで、これらの影響を最小限に抑えることができます。

企業は、将来の人材需要や労働力の構成を見据え、戦略的な人材管理を行うことが重要です。抜本的な解決をするためには、やはり人材確保が必要です。

そのための有効な手段の1つに挙げられるのが第三者への事業承継、M&Aです。従業員の高齢化対策としてM&Aに取り組めば、問題を解決して事業を拡大することも十分に望めます。

従業員の高齢化を理由に「自分の代で会社を終わりにしよう」と考える経営者の方は少なくありません。廃業を決断する前に、会社を存続させる方法について話を聞いてみませんか? 様々な事業承継をご支援してきたコンサルタントがご相談を承ります。ご相談は無料、秘密厳守で対応します。

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M&A マガジン編集部

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