コラム

【スーパーマーケット業界の2大巨頭のM&A戦略レポート】セブン&アイHDとイオンの事例を踏まえて

水上 雄斗

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 衣料業界担当

業界別M&A
更新日:

⽬次

[表示]

こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援グループの水上です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回はセブン&アイHDとイオンのM&Aの戦略についてレポートをお送りさせていただきます。

スーパーマーケット業界の概況

スーパーマーケット業界の大手企業はM&Aを通じて、小売のみに留まらず、IT、金融等ビジネス領域を拡大しながら、生活インフラを提供しています。
最近のスーパーマーケット業界のトレンドとして、PB商品の展開やお弁当・お惣菜需要の高まりが挙げられます。

PB商品は、セブン&アイHDでは「セブンプレミアム」、イオンでは「トップバリュ」が展開されている。PB商品はスーパー側だけではなく、消費者にとってもメリットがある商品です。
スーパー側にとってのメリットは卸売業者を挟まずに販売できるため、高利益率を確保することができます。また、製造方法、デザイン等も指定できるため、商品にオリジナリティを持たせることも可能です。
消費者側にとっては安くてより良い商品を購入することができるため、今後も普及していくことが予想されます。

お弁当・お惣菜は、単身高齢世帯や共働き世帯の増加に加え、コロナ禍でテレワークの普及や外出自粛による巣ごもり需要も追い風となりました。
日本の少子高齢化は今後も改善されることは考えにくいため、需要は増加していくことが予想されます。

スーパーマーケット業界の中でも、セブン&アイHDとイオンの両社は数兆円ほどの売上高で圧倒的な規模を誇ります。
近年のスーパーマーケット業界の動向として、セブン&アイHD、イオンの2強のみではなく、その他の企業でもM&Aが活発に行われています。
2018年にはアークスとバローホールディングス、リテールパートナーズが資本提携をし、2019年には新日本スーパーマーケット同盟を発足しました。

最近は、ロシア・ウクライナ問題、原材料価格高騰、円安等で仕入れ価格が大幅に上昇しており厳しい状況が続いていますが、スケールメリット(規模の優位性)を活かして仕入れコストを削減できる会社は、非常に強い価格競争力を持っています。
M&Aを行うことによって以下のようなメリットが挙げられます。

スーパーM&A:買い手メリットと期待効果

・スケールメリットを活かして仕入れコストの削減ができる
・PB商品の販売チャネルを獲得することができる
・進出できていない地域に進出し、シェアを獲得することができる

スーパーM&A:売り手メリットと期待効果

・大手の傘下に入ることで仕入れ価格抑制等でコスト削減できる
・大手のブランド力、商品力等で、集客力向上が期待できる
・IT投資による人員削減、人材教育による生産性向上が可能となる
・個人保証から解放され、創業者利益を獲得することができる

セブン&アイHD、イオンのM&A戦略を分析

ここでは、セブン&アイHDとイオンの最近のM&A事例をご紹介します。
セブン&アイHD、イオンともにスーパーマーケット事業で生み出している利益は会社全体に占める割合のごくわずかだ。M&A等を通じ、複数のセグメントを構築することによって、様々な事業から利益を生み出しています。

セブン&アイHDのM&A事例

セブン&アイHDは2022年度上期の営業利益2,347億円でした。セブン&アイHDの営業利益は国内、海外のコンビニエンスストア事業と金融関連部門で生み出しています。国内コンビニエンスストア事業でそれぞれ1,267億円、1,155億円。金融関連セグメントでの営業利益は193億円で、後述するイオンと比較すると規模は小さくなっています。

セブン&アイHD が2021年5月に、米国でガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストア事業を手がける「スピードウェイ」(オハイオ州)を買収しました。全米人口の50%以上が店舗の2マイル圏内に居住しています。結果、2022年2月期に海外コンビニ事業が前年度比2.3倍の5兆1943億2700万円に急拡大したことが売上を押し上げました。

イオンのM&A事例

イオンは2022年度上期の営業利益は958億円でした。イオンの営業利益はディベロッパー、ヘルス&ウェルネス、総合金融部門が大半を生み出しています。中でも、総合金融部門での営業利益は330億円で全体の30%近くを占めています。
イオンは2022年1月に、100円ショップ事業を展開するキャンドゥを子会社しましたが、2022年上期の業績に与える影響は大きくなく、結果的にM&Aでセブン&アイHDとは大きな差がつく形となりました。

セブン&アイHDとイオンの両社とも経営戦略の根幹にM&Aがあります。すでに数十回のM&Aを実施し、ここまで規模を拡大してきました。
両社とも規模を拡大することによって、メーカーとの交渉を有利に進めることができるのです。ここまで規模を拡大し続けている成長の背景には、M&Aをしてきことが要因といっても過言ではありません。

まとめ

今まで、地域密着により顧客を取り込んできた食品スーパーですが、今後は業界や業態の垣根を超えてスーパーマーケット業界の競争は厳しくなることが予想されます。
コンビニエンスストア、ドラッグストア、ネット通販大手企業等もライバルになり、新規参入も増えていきます。
また、デジタル化も進み、消費の形、店舗のあり方も大きく変わってきています。

将来の不安によって、より規模の大きな企業と手を結ぶケースや、後継者不在によるM&Aは今後も引き続き増加すると考えられます。
M&Aは、シナジー効果により事業を更に発展させる可能性を秘めています。一社単独での成長だけではなく、経営戦略の選択肢の一つとして、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門チームから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

水上 雄斗

水上みずかみ 雄斗ゆうと

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 衣料業界担当

千葉県出身。成蹊大学経済学部卒業後、三井住友銀行にてリテール営業に従事した後、日本M&Aセンターへ入社。以来、全国の食品業界を専門にM&A業務に取り組む。

この記事に関連するタグ

「食品業界」に関連するコラム

2023年上半期食品業界M&A動向

業界別M&A
2023年上半期食品業界M&A動向

当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は高橋空が「2023年上半期食品業界M&A動向」についてお伝えします。@cv_button売上維持も利益率減、成長の鍵はМ&A2023年上半期は新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、いつかの日常が戻ってきました。ただ一方で、鳥インフルエンザの拡大による、鶏卵不足の深刻化や、長引く原材料とエネルギ

2023年度上半期スーパーマーケット業界M&Aと今後の展望について

業界別M&A
2023年度上半期スーパーマーケット業界M&Aと今後の展望について

当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は下平が「2023年度上半期に行われたスーパーマーケット業界のM&Aと今後の展望について」というテーマでお伝えします。@cv_button加速するスーパーマーケット業界再編の流れ2023年、スーパーマーケット業界において経営権の取得が伴うM&A件数は、2023年9月30日時点で約20件です。昨年1年

外食業界に起きたМ&Aの3つの波

業界別M&A
外食業界に起きたМ&Aの3つの波

株式会社日本М&Aセンター食品業界専門グループの高橋です。当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界情報を執筆しております。今回は高橋が「外食業界に起きたM&Aの3つの波」についてお伝えします。@cv_button大手の市場占有化が加速する外食業界業界再編というキーワードを最近よく耳にするが、個人店などが多い外食業界はあまり関係ない話ではないか?このように思われている外食業

食品卸売業界における変化とこれから求められること

業界別M&A
食品卸売業界における変化とこれから求められること

こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の高橋です当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は、食品卸売業界における変化とこれから求められることついて執筆させて頂きます。@cv_button食品卸業界で起こっている変化日本の流通ビジネスは、卸売業という存在なしには語ることはできないものかと思います。卸売ビジネスの仕組みは江戸時代から存在

スーパー業界のM&Aと今後の戦略

業界別M&A
スーパー業界のM&Aと今後の戦略

株式会社日本М&Aセンター食品業界専門グループの下平健正です。当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は下平が「スーパーのM&A動向と今後の戦略」というテーマでお伝えします。@cv_button2023年のスーパーM&A件数は、昨年1年間のM&A件数にほぼ並ぶ下記グラフ(出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成)は、199

食品業界のクロスボーダー M&A動向(海外M&A・海外進出)

業界別M&A
食品業界のクロスボーダー M&A動向(海外M&A・海外進出)

当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は高橋が「食品業界のクロスボーダーM&A動向(海外M&A・海外進出)」についてお伝えします。食品クロスボーダーМ&Aのトレンドは北米とアジアの二極化食品業界におけるクロスボーダーМ&A(日本企業の海外企業の買収)は年間、2005年以降年間10件~20件程が公表ベースでコンスタントに行われています。エ

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース