コラム

【スーパーマーケットのM&A戦略】アークス・ヤオコーなど国内大手スーパーのM&A事例

下平 健正

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 食品業界専門グループ

業界別M&A
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株式会社日本М&Aセンター食品業界専門グループの下平 健正です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界最新情報を執筆しております。
今回は下平が「アークスとヤオコーの事例から見るスーパーのM&A戦略」というテーマでお伝えします。

北海道のスーパー「アークス」が、青森県のスーパー「ユニバース」を買収

2011年6月、北海道トップのシェアを誇るスーパー「株式会社アークス(以下、アークス)」が青森県の老舗スーパー「株式会社ユニバース(以下、ユニバース)」を買収することを発表しました。

私は青森県出身で当時は中学校1年生でしたが、「ユニバースが会社を売却した」というニュースは地元で大きく話題になったことを覚えています。

ユニバースを買収したアークスは、1961年10月に設立、生鮮食品の小売業を行う「株式会社ダイマルスーパー」という商号でスタートしました。

その後、北海道内で店舗を拡大し、2004年に東証二部(当時)に上場、翌年には東証一部への指定替えを実現しました。その後、ユニバースを買収する訳ですが、その以前にも、北海道内での買収を多数行っています。

アークスが過去に行ったM&A一覧

アークスは創業から現在に至るまで、M&Aを有効的に活用することで、会社の成長を実現しました。
以下は、これまでアークスが行ったM&Aの事例です。

  • 1987年7月【北海道×スーパー】大丸建装(現エルディ)に資本参加し、子会社化
  • 1989年2月【北海道×酒類販売業】イワイを子会社化
  • 1995年11月【北海道×スーパー】イチワ(現・道東ラルズ)を子会社化
  • 1996年3月【北海道×医薬品販売事業】ライフポートを子会社化
  • 1997年11月【北海道×スーパー】サンフーズを子会社化
  • 1998年9月【北海道×スーパー】角幡商店より5店舗を買収
  • 2000年2月【北海道×食品卸売業】北海道シジシーを関連会社化
  • 2000年5月【北海道×スーパー】いちまるに20%資本参加し、関連会社化
  • 2000年12月【北海道×スーパー】ホームストアに90%資本参加し、子会社化
  • 2002年11月【北海道×スーパー】福原を子会社化
  • 2004年2月【北海道×スーパー】北海道流通企画を子会社化
  • 2004年10月【北海道×スーパー】ふじを株式交換で買収
  • 2005年3月【北海道×スーパー】三島より4店舗を買収
  • 2008年3月【北海道×スーパー】子会社であるラルズがホームストアを吸収合併
  • 2009年10月【北海道×スーパー】東京急行電鉄・東急ストアから、札幌東急ストアを買収
  • 2011年10月【青森県×スーパー】ユニバースを株式交換にて買収
  • 2011年11月【北海道×スーパー】篠原商店を子会社化
  • 2012年9月【岩手県×スーパー】ジョイスを株式交換にて子会社化
  • 2013年12月【北海道×スーパー】子会社エルディがライフポートを吸収合併
  • 2014年3月【青森県×スーパー】リッツコーポレーションを子会社化
  • 2014年9月【岩手県・宮城県×スーパー】ベルプラスを株式交換にて買収
  • 2016年2月【北海道×スーパー】子会社ラルズが丸しめ志賀商店より食品スーパーマーケット事業を譲受
  • 2018年12月【岐阜県・山口県×スーパー】アークス、バローホールディングス、 リテールパートナーズの3社間で資本業務提携契約を締結、「新日本スーパーマーケット同盟」を発足
  • 2021年4月 【栃木県×スーパー】オータニを子会社化
    (出典:株式会社アークスのIR情報を基に、日本M&Aセンター作成)

アークスはM&Aを有効に活用し、着実に買収をし続け、会社規模の拡大を実現していきました。

出典:株式会社アークスのIR情報を基に、日本M&Aセンター作成

アークスのM&A戦略と考察

先述のM&A事例と、アークスの年商の推移のグラフを比較してみると、1987年7月に初めての資本参加を実施してから、2011年に株式会社ユニバースを買収するまでの約25年間は、全て北海道内のみでの買収を実施しています。
その後、年商3000億円を超えた2011年に株式会社ユニバースを買収し、初めての本州進出を実現します。

その翌年には、岩手県盛岡市に本社を構える株式会社ジョイス(現在の商号は株式会社ベルジョイス)を買収し、その約3年後には、宮城県に店舗を構える株式会社ベルプラス(現在の商号は株式会社ベルジョイス)を買収、そして2021年には、栃木県に本社を構える株式会社オータニの買収をしています。ユニバースの買収をきっかけに、東北、関東圏への進出を加速させていることがわかります。

アークスは2018年、株式会社バローホールディングス、株式会社リテールパートナーズと資本業務提携を締結し、「新日本スーパーマーケット同盟」を結成しました。そこでは、「八ヶ岳連峰経営」を掲げ、富士山のような大きな一つの企業体ではなく、八ヶ岳のように同じ高さが連なる山々が連携し、それぞれの経営資源・ノウハウを有効活用することで、その地域を代表するスーパーを目指すことを掲げています。

アークスの2022年の決算説明会資料でも、新日本スーパーマーケット同盟の連携強化による連続的な成長と、M&Aによる非連続的な成長の、両軸での経営を行うことで、八ヶ岳連峰経営の進化とアークスグループとしての成長を目指すことを掲げており、今後も資本提携を活発に実現していくのではないかと考えられます。

ヤオコーの会社沿革とM&Aについて

そこで対照的なのは、「株式会社ヤオコー(以下、ヤオコー)」です。
明治23年、埼玉県武州小川町(現在の小川町)で創業したヤオコーは、北関東をメインに店舗を拡大していき、1993年に東証二部に上場、1997年に東証一部に指定替えを実施しました。

そして2022年3月期、年商5000億円を超える大手スーパーとして、店舗を展開しています。

ヤオコーのM&A遍歴と考察

以下は、ヤオコーのM&Aの事例です。

  • 2006年6月 ㈱日本アポドックのドラッグ部門を、㈱スギ薬局に事業譲渡
  • 2008年9月 ワイシーシーの全株式をブックオフコーポレーションに株式譲渡
  • 2015年3月 日本アボックをアルサフレッサホールディングスに一部事業譲渡
  • 2016年6月 【神奈川県×スーパー】エイヴイ(以下、エイヴィ)を買収
  • 2021年10月【千葉県×スーパー】せんどうと資本業務提携。43.18%を取得。同社を持ち分法適用関連会社化し、両者間で業務提携を開始
    (株式会社ヤオコーのIR情報を基に日本M&Aセンター作成)

出典:株式会社ヤオコーのIR情報を基に、日本M&Aセンター作成

ヤオコーはアークスとは違い、過去に2件しか買収を行っておりません。
アークスとヤオコーの年商推移を比較したグラフを見ると、アークスのように急激に年商が伸びることはない一方で、創業からオーガニック経営を主軸として着実に売上を伸ばしていることがわかります。

また、アークスが本州への一歩を踏み出した時と同様、年商3000億円を超えたタイミングで、今まで行ってこなかった「買収」という大きな決断をしています。

今後は、これまでのアークスのように、会社規模の拡大を目的とした買収を実施しようとしているのかもしれません。

まとめ

アークス、ヤオコーの年商の推移とM&Aの実績を基に、各社の成長過程について考察してきました。
アークスは今まで多くの買収を重ねて成長してきた一方で、ヤオコーはオーガニックでの成長を主軸とした経営を行ってきたことがわかりました。

M&Aの実績や実施するタイミングに差はあるものの、会社の経営として大きく舵を切るための、きっかけのようなタイミングで買収を実施してきたこともわかりました。
会社のよりよい成長を実現するためのきっかけとして、M&Aによる買収を検討してみてはいかがでしょうか。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

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また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

下平 健正

下平しもたい 健正けんせい

株式会社日本M&Aセンター/業種特化2部 食品業界専門グループ

青森県生まれ、早稲田大学文化構想学部卒業後、新卒で日本M&Aセンターに入社。外食・食品業界専門チームにて、企業の存続と発展に向けたМ&A支援に携わる。近年はスーパーマーケットのM&A業務に注力。

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