コラム

2020年・2021年の製菓・製パン業界M&A

渡邉  智博

著者

渡邉 智博

日本M&Aセンター 業界再編部 食品業界専門グループ シニアチーフ(2023年12月時点)

業界別M&A
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日本М&Aセンター食品業界支援室の渡邉です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
本日は渡邉が「製菓・製パン業界のM&Aの今」についてお伝えします。

製菓・製パン業界M&Aの特徴

製菓・製パン業界は大手による寡占化が進んでいる業界です。
寡占化を示す一例として、製菓業界で見てみれば国内出荷額3.8兆円の市場に対し、出荷額の約7割を従業員数100名以上の事業所が押さえています。しかしながら、約7割の出荷額を押さえている100名以上の事業所というものは、全体の事業所数で見れば約1割に過ぎません。

事業所数で見れば、20名未満の小さな事業所が全体の約5割を占めています。次に、製パン業界ですが、市場規模が1.6兆円となっておりますが、業界1位の山崎製パンの食パン・菓子パン部門の売上高は4,364億円(2020年12月期)と1社で約3割の市場を押さえています。

菓子業界:従業員数ごとの事業所数と出荷額

出典元:経済産業省「工業統計(品目編)」「経済センサス」をもとに日本M&Aセンター作成

パン業界:寡占化が進むマーケット

出典元:経済産業省「2020年確報 品目別統計表」、各社有価証券報告書をもとに日本M&Aセンター作成

このように大手の寡占化が進む中で、数多く存在する中堅・中小企業は残る市場シェアを争っています。
しかしながら、2021年10月から国が輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格が19%値上げになるなど原材料のコストアップなど含めて、仕入れのスケールメリットなども活かしにくい中堅・中小企業には厳しい環境もあり、M&Aによって規模を拡大していくことで、1社では実現が難しかったことを実現させていこうとM&Aが活発化しています。

30店舗の崖

和洋菓子店や、ベーカリーチェーンには30店舗の崖というものが存在します。
個人オーナーが一人で見れる店舗数の限界というものが、業態にもよりますが、概ね30店舗前後と言われています。

それ以上になってくると、店舗管理のために組織が必要になってきたり、人材採用、財務など様々な内部コストが増大するようになってきます。

内部コストが上がると、これまでのように積極的に店舗出店に投資する資金が減少し、売上は大きく伸びないのに、コストだけが上がり、利益を大きく圧迫するという状況が生まれます。

その利益の落ち方は、まさに「崖」といえるでしょう。

これらの崖を一足飛びに越え、安定した成長を維持するために大手の傘下に入るケースが増えています。

例えば、SNSなどでも人気の菓子ブランドやベーカリーチェーンが、FCなども含めてどんどん出店を加速していくものの、まだまだ出店要請があるにも関わらず、途中でオーナーが個人で見るには限界を迎えてしまうというケースなどです。

このような企業はM&Aで大手企業やファンドのグループ傘下に入ることで、成長戦略を止めずに潤沢な資金力の後ろ盾を得て、30店舗と言わず一気に50店舗、100店舗と拡大を目指すことができます。

老舗企業のM&A

製菓・製パン業界のM&Aにおいて、日本M&Aセンターで2020年までに成約した企業の4社に1社は創業60年を超える老舗企業となっています。製菓・製パン業界においては「老舗企業のM&A」も1つの大きなテーマとなっています。

次のチャートは、事業承継の検討フローとなっておりますが、後継者候補が親族・社内にいたとしても「本人は継ぐ意思があるのか」「本人に経営する能力はあるのか」「借入金の連帯保証は引き受けられるのか」「株価を買い取る資力や、相続税の支払い能力はあるのか」といった様々な壁を乗り越えなければ社内承継は叶いません。
仮に上記が実現したとしても、今後の設備投資に必要な資金など様々な想定も必要です。


製菓・製パン業界の老舗オーナーのなかには、長年に渡る修行の成果として現在の味とブランドがあるため、一子相伝で親族に継がせることや、修行を積んだ従業員から社長を決めるということを選択したい方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、親族や長年一緒にやってきた従業員に継ぐということは、本当の意味でのご自身の引退にはなりません。心の中では常に経営が気がかりで「余生を十分に楽しむ」ということに集中できないからです。

また、製菓・製パンの老舗企業では、オーナーが工場長などに優れた技術は教えてきたが、経営に関しては自分一人でやってきたので何も教えてこなったこというケースも多く、後継者育成に時間がかかることも実情です。

これらのことから、経営は第三者のプロに託し、味やブランド、従業員の雇用をそのままに守り、地域住民に将来に渡って商品を提供し続けるためのM&Aが増加しています。

食のファッション化

最後のテーマは「食のファッション化」です。新型コロナウイルスにより、消費者の購買はより一層オンラインにシフトしました。それ以前からもSNSの台頭により、美味しいは当たり前で、見た目の美しさや話題性などによって、オンライン上で人気商品が続々誕生するという傾向はありましたが、その流れが一気に加速しています。

以前はM&A業界においては、業歴の浅い企業は持続性などへの疑いから、あまり株価で評価されない傾向がありましたが、今は違います。
店舗での販売ルートだけではなくオンラインを介した販売ルートなど時代に適した営業戦略がとれている企業は、その商品の企画力も含めて評価される時代になりました。
今の時代に必要な営業戦略は「一本足打法から脱却し、二本足打法になること」です。

SNSなどで目まぐるしく流行が変わり「食のファッション化」が進むといわれる時代において、自社の商品だけで果たして今後も戦い続けることはできるでしょうか。
M&Aによって一緒になった企業の販売ルートを利用して新しい顧客を開拓したり、技術や原材料を共有することで新しい商品を開発するなど、スピード感のある時代に合わせた経営にM&Aがこれまで以上に、有効になっています。

「30店舗の崖」「老舗企業のM&A」「食のファッション化」いずれかへの対策としてM&Aを検討されてみるのはいかがでしょうか?

今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けをさせて頂きます。
食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

渡邉  智博

渡邉 わたなべ 智博ともひろ

日本M&Aセンター 業界再編部 食品業界専門グループ シニアチーフ(2023年12月時点)

大学卒業後、リクルートに入社。法人営業や営業マネージャー等を経験し、日本M&Aセンターに転職。2020年度には同社で最も多くの食品製造M&Aを成約へと導いた。2022年にはバーチャルレストランのM&Aも手掛け食品業界の最新トレンドにも明るい。著書に「会社を売る力 業界再編M&A最前線」​「The Story 食品業界編」​(共にクロスメディア・パブリッシング)

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