譲渡オーナーとの語らい Vol.9 株式会社トップアンドフレーバー(ラーメンせい屋)(東京都・ラーメン店)

江藤 恭輔

日本M&Aセンター業種特化2部 部長

業界別M&A
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全くの異業種からラーメンの世界に飛び込み、一時期は35店舗の一大チェーンまでにせい家を成長させた山内氏は、40歳という遅咲きの年齢で1号店をオープンさせました。

そこからの快進撃は、他では類を見ないスピードと言えます。 後継者不在でせい家を譲渡するまでひたすら走り続けた山内さんは、M&A後も、まだまだパワフルに第二の人生を謳歌されていました。

当社 食品業界支援室長の江藤が山内さんにM&Aによる譲渡を決心した心境から近況までのお話しを伺いました。

「できるか、できないか」、M&Aセンターのコミット力

江藤 :セミナーで登壇頂いた際にお話頂いたことと重複する部分はあるのですが、色々とお話を伺いたいと思います。

早速ですが、M&Aを検討したきっかけは、最初は「譲受けたい」というところだったかと思います。

山内様 :そうですね。せい家は20年経営をしてきました。店舗を拡大をしていく上でM&Aという方法で進めるのも良いかと検討したのがきっかけです。一方で、7年目、12年目、15年目くらいのタイミングで、仲介会社も含め色々な企業から、せい家を「譲受けたい」、「提携したい」とお声掛けいただくこともありましたが、当時はまだまだ続けていく気持ちが強く、断っていました。

江藤 :そこから譲渡をしようと、考えが変わったのは何故だったのでしょうか?

山内様 :2018年に「ここが限界かもしれない」と思ったのがきっかけです。2016年、2017年はとても順調に業績が伸びてきていました。しかし2018年は消費税の増税があり、それに伴い値上げを実施したあたりから業績が伸び悩み始めました。

江藤 :飲食業界では30店舗の壁というものがあり、30店舗を超えたあたりから業績がDownトレンドに入りやすいのですが、その時のせい家さんの店舗数はどのくらいだったのですか?

山内様 :その当時は43店舗ほどありましたが、結局10店舗ほどは閉じることになりました。ナンバー2もいないことや、娘婿が継ぐということもあまり現実的ではなかったため、事業をどうしていくかということを考えるようになりました。

江藤 :当社とはご紹介を頂いてお会いしましたが、他の仲介会社さんはご検討されていましたか?過去に何社か御社を「譲受けたいと希望されている企業がいる」というお話を頂いていたとのことでしたが。

山内様 :よく相談に乗って頂いていたコンサルティング会社の先生には「そろそろ事業譲渡を考えている」と、一度相談をしました。店舗の立地条件が良いこともあり、譲受先が出てこないといった心配はないだろうから譲渡することで進めてはどうかと背中を押してくださいました。

江藤 :そのままそのコンサルティング会社にお任せするのではなく、当社にお任せ下さったのは何故でしょうか?

山内様 :「誰に任せるのか」よりも、譲渡をする上で条件として提示していることを「できるのか、できないのか」が、一番大事でした。江藤さんは「できます」と言ってくださったので、それならば、というところでした。 結果、その言葉の通りに進めてくださった、江藤さんやM&Aセンターさんのコミット力は素晴らしいと思いました。江藤さんとは、M&A実行してから1年半が経ちますが、こうしてお付き合いさせて頂いると、裏表もなく「いい男だな!」と思います (笑)

次は書類等、きちんと整理整頓。

江藤 :ディールを振り返ってみて如何でしょうか?開示の際のこと、苦労した点や今だから言えること等ございますか?

山内様 :開示の時は、従業員は前々から気付いていたようで、「ですよね」という感じであまり反応はありませんでした。 苦労した点などは、特にありませんね…。最近、また新しく何かやりたいと考えておりますが、次は書類等、整理整頓しておこうと思っています(笑)

江藤 :多くのオーナーさんがDDの時に、従業員の皆様に勘繰られない様、膨大な量の資料を集めるのが大変だと仰っています。山内様も、30店舗強ありましたし、大変だったと思います。 また新しいことを考えていらっしゃるとのことですが、近況は如何でしょうか?

「売るなんてありえない」時が最高のタイミング

江藤 :長年経営をしていた会社を手放すということは、相当大きな決心が必要になることだと思うのですが、そのあたりの心境はどのようなものでしたか?

山内様 :多くの経営者の方々が悩まれるのは理解できますし、悩んで当然だと思います。私自身、ドライな方だと思っておりまして、あまり悩むことはありませんでした。2016年や2017年の業績に勢いがあった時の方が、企業価値はもっと高かったのかな、と思います。 その頃は、「売るなんてありえない」と思っていましたが、そういう時ほど踏み出すべきだと、思います。

江藤 :確かに、「手放したくない」と思うほど好調な時は企業価値が高くつくタイミングではあります。同時に、譲渡に踏み切る決断をすることも難しいタイミングです。

山内様 :いずれ譲渡をするのであれば、ピークの時に譲渡すべきだと思います。お金のこともありますが、決断は早い方が良いとも思います。 新しいステージへ進んだ後で、また「やりたいな」と思ったのであれば、またやれば良いことですし、新しいことを始めるのなら、早いに越したことはないと考えます。

江藤 :山内様もあたらいいことをまた始めるとおっしゃっていましたね。

山内様 :そうです。5年くらいのスパンで色々とやりたいな、と考えています。

山内様 :最近は、娘がトレーニングをしているので、一緒にやっています。ラーメンを食べたいのですが、我慢しています(笑)。昔は味見をするために1日3回はラーメンを食べていたので、それがなくなったこともあり、結構減量できています。

江藤 :それはすごいですね。せい家さんには顔を出したり、従業員の皆様とお話をされる機会はあるのですか?

山内様 :もうほとんどありません。関わると、気になってしまうことや口を出しそうになってしまうので、控えています。

著者

江藤 恭輔

江藤えとう恭輔きょうすけ

日本M&Aセンター業種特化2部 部長

1982年12月、宮崎県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、大手金融機関にて約10年法人営業に従事した後、2015年10月、日本M&Aセンターに入社。その後、食品業界専門グループを立ち上げ、大手外食企業のM&Aを中心に、数多くの食品関連M&Aを手掛ける。2023年4月には同グループを部署に昇格させ、メンバー全員で、全国の優れた食文化の存続と発展をサポートしている。代表的な成約実績は、トリドールHDとアクティブソース(立ち飲み居酒屋晩杯屋)、トリドールHDとZUND(ラーメンずんどう屋)、サッポロライオンとハンエイ(餃子専門店である大阪王)、佐賀県の老舗アイス菓子メーカーである竹下製菓と生クリームパンメーカーの清水屋食品、PEファンドであるエンデバー・ユナイテッドと関西レストランチェーンのアートオブウォー・バサラダイニングの資本提携など。

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