未上場会社の値段はどうやって決まる?「会社の株価や税金」を解説

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中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。 中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います。

日々、事業承継相談の現場でうまれてくる考え方、進め方を連載で紹介しております。 「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方、第4回は「会社の株価や税金」について解説したいと思います。

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未上場会社の値段はどうやって決まる?

会社の値段とは、会社の株式の値段です。

上場している会社の株式の値段(株価)は、日々変動しています。 だれでも、証券会社を通じて売ったり買ったりできて、将来性があって、その株がほしい人が多いと株価が上がります。 これは、多くの方がご存じのとおりです。 それでは、未上場の株は、どのように値段がつくのでしょうか?

知っていただきたい株価は、(1)税務上の株価(同族承継の際の株価) (2)第三者取引の株価(M&Aの株価)の2つです。

税務上の株価(同族承継で考える株価)

自社の株価といわれると、税務上の株価を知っている経営者が多いと思います。 多くは顧問税理士が計算して、自社の株価が一株何円と表現されます。 一株1万円で1万株発行されている会社があれば、会社の株価総額1億円になります。

この株価は、同族承継などで親から子供へ株式を相続や贈与したときに発生する相続税、贈与税を計算するための株価になります。 同族承継のときは、この相続税、贈与税をどのように払うのか、払えるようにするのかの検討も必須です。 最近は、この税金を猶予する事業承継税制の適用をうける検討をする会社も増えています。

株価の計算方式は、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式の3つがあります。株主の属性、会社の規模に応じて、その単独方式によるか、もしくは併用方式の計算が採用されます。

類似業種比準方式は、自社と事業内容が類似する業種の複数の上場会社の株価の平均値に1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額の比準割合を乗じて計算する方法で、純資産価額方式は、自社の貸借対照表に計上されている財産に着目して計算する方法です。 配当還元方式は、零細株主に認められた方法で自社の配当金額に着目して計算する税務上の株価になります。

税務上の株価(第三者間取引で考える株価)

M&Aで第三者に株式を譲渡するときには、税務上の株価と全く異なる株価になります。 この株価を知っている経営者は少ないと思います。第三者に対して自社の株式を売買するときの株価です。

基本の計算方式は、過去の収益性に注目した方式、財産に注目した方式、将来の収益から計算する方式などがありますが、それが絶対ではありません。ひとつの目安と考えてください。

税務上の株価は、税金を計算するための株価ですので、法令で計算方法が決まっていてそれに従って計算されたものが株価になります。しかし、M&Aの株価は、第三者間での自社株式の売買の値段ですので、両者が合意すれば、必ずしも計算方式通りには決めなくてもいいのです。

上場株式と同じように、欲しい方が多いと値段が上がる傾向があります。 譲渡側の立場から考えると、譲渡先候補(相手候補)が複数でてくることは頻繁にあります。その中で譲渡先候補が提案してくる株価もそれぞれ違います。

相手候補各社が考える今後の成長性や相乗効果、相手の資本力、中期計画の投資のタイミングなどが異なりますので、投資できる株価も異なってきます。

最終的に譲渡する経営者は、株価はもちろんですが、その他の条件、経営の考え方の相性、期待する成長をかなえてくれる可能性などを判断して、譲渡先を決断していきます。

このM&A株価にかかわる税金は、株式の譲渡所得(分離課税)に対して、所得税と住民税がかかりますが、現在その税率は20.315%(含む復興税)になっています。

本当の会社の価値を知ること

M&Aが成立したときのM&A株価と、税務上の株価を比較すると、多くの場合は、M&A株価のほうが税務上の株価より数倍高いです。

事業承継を考えるときに、このM&A株価も絶対に知ったうえで判断をしてください。 M&A株価が、本当の会社の価値です。もし、計算をされたことがないなら、専門家にM&Aの株価計算を依頼して、目安の株価を知ってください。

承継方法と税金の準備

承継方法によって考えるべき税金の支払い準備が異なります。

同族承継ならば、子供に株式を渡すときに税金(相続税・贈与税)が発生し、それを支払えるように現金を用意しないといけません。または、事業承継税制の適用を検討して、税金の納税猶予をうける準備が必要です。

一方、第三者承継(M&A)では、多くの場合、株式の譲渡対価を現金で受領するので、その中から税金支払いをすればいいので、別に現金を用意しておく必要はありません。

事業承継で考えるべきポイントは、決まっていますし、多くの先輩経営者の事例もあります。 ぜひ、いい事業承継のために検討の最初の一歩を踏みだしてください。

プロフィール

長坂 道広

長坂ながさか道広みちひろ

事業承継に30年超携わり、M&A仲介を多数経験。関係者が納得できるM&A以外の承継手法も提供できるよう、日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスの協力により事業承継ナビゲーター(現:ネクストナビ)を設立、初代代表取締役副社長に就任。現在も事業承継に悩む現役の経営者向けに幅広くコンサルティングを行っている。

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