コラム

「売れる会社」にするための3つの準備

雨森 良治

日本M&Aセンター 上席執行役員 TOKYO PRO Market事業部長

M&A全般

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10年前と比べるとM&Aを取り巻く環境はずいぶんと変わりました。 “会社を売却するきっかけ”について、10年前は「社長の高齢化」「社長の病気や事故などのアクシデント」が多かったのですが、現在は「会社を成長・発展させるため」という回答が多く見られます。 当社のM&Aセミナーでは毎回多くの方にご参加いただきますが、以前と比べて比較的若い50代の経営者の方の参加が増えています。 このように早い段階からM&Aを検討している経営者が増えています。 「来るべき引退に備えて早くから準備をしている」―まさに“転ばぬ先の杖”としてM&Aを捉えている方が多いようです。 しかしいくら準備をしても売れなければ意味がありません。 そこで今回は「売れる会社」にするための3つの準備についてご紹介していきましょう。

バトンタッチしやすい会社は、3つの準備ができている

準備1. 社長業務の権限委譲を進めると同時にノウハウを把握する

中小企業の場合、オーナー経営者は社長以外にも営業部長や財務部長・人事部長の役割を担っていることが多くあります。 限られた人に権限やノウハウが集中していることは、事業の引き継ぎにおいてはリスクであり会社の価値が下がる要因になることも…。 一方で各キーマンにノウハウが分散していたとしても、その実態を把握していないと意味がありません。M&Aを機にキーマンが独立したり転職したりしてしまえば、会社には何も残りません。 社長業務の権限委譲を進めながら、経営の肝となるノウハウについてはキーマン任せにせずに経営者が把握しておくことが大切です。

準備2. M&Aへの反対を想定したとき、対処できるかどうか

M&A=株の売買による経営権の移転です。株が売れる状態になっていることがM&Aのための条件になるわけです。 「何を今さら?」と思った方もいると思いますが…、 経営者の引退を伴う後継者問題解決型のM&Aの場合は100%の株式の売却が原則必要ですから、株主のうち1人でも反対者がいるとM&Aが成立しにくくなってしまうわけです。 株主が複数いる場合、M&Aに反対する株主がいないかどうか考えてみてください。 経営者の親族の株主はどうでしょうか? 直接経営をしていないとはいえ親族にもやはり会社に対する思い入れがあります。親族の想いを組みながらどう対処していくかを検討しておくことが大切です。 もっと言えば、相続などでの株式の分散はM&Aの意思決定においてハードルになってしまうということです。なるべくオーナー経営者に株式を集約しておきましょう。

準備3. 直近の業績を試算表で把握できる状態にする

試算表、税理士任せにしていませんか? M&Aの交渉においては、直近の状況というのは必ず問われます。 「今月末の数字は2ヶ月後に税理士から出てきます」では、買い手企業はタイムリーな経営判断ができず、検討されないまま候補から漏れてしまうかもしれません。 意思決定にスピード感が求められる昨今、すぐに試算表が出てくる会社は信頼され、結果として売れる会社になるのです。

どんなバトンタッチでも、3つの準備を大切に

売れる会社=バトンタッチしやすい会社。 M&Aだけでなく、親族内承継や社員への承継の場合も同じ事が言えるかもしれません。 まずは上記3つの準備ができているかどうか、確認してみてください。

事業承継を検討の方へ

著者

雨森 良治

雨森あめもり 良治よしはる

日本M&Aセンター 上席執行役員 TOKYO PRO Market事業部長

西日本を中心に13年間M&Aを通じた事業承継の支援を行ってきた西日本を代表するM&Aプレーヤー。100件を超えるM&A成約実績を有する中で特に買い手企業のアドバイザーを務めるうちに、企業の成長戦略についてM&Aに続く支援ツールが必要であることを痛感。米国公認会計士(USCPA)ホルダーでもあることから非証券会社でも出来る上場支援を模索していたところ東証の新しい株式市場であるTOKYO PRO Marketに出会う。2019年7月に当社がJ-Adviser資格取得、2020年よりTPM上場推進の統括責任者として、全国の中小企業や会計事務所、金融機関向けにTPM上場啓蒙活動から上場準備支援活動に至るまで精力的にこなしている。現状50社程度の上場企業数だが、2030年には現マザーズ市場を上回る1,000社上場している成長市場に育てるべく様々なプロモーションを実施中。

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