コラム

社員への承継の場合

長坂 道広

日本M&Aセンター成長戦略推進室/株式会社ネクストナビ取締役/株式会社青山財産ネットワークス取締役

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[表示]

「自分の会社を誰に引き継ぐか?」オーナー経営者なら誰もが悩む大きな問題ですよね。自分が経営から退いた後も会社が発展していくためには、事業承継に失敗は許されません。
事業承継には下記の通り3つの方法があります。

  1. 親族内承継
  2. 役員・従業員承継
  3. 社外への引継ぎ(M&A等)

今回は「社員への承継」について考えてみたいと思います。


次世代へのバトンタッチは失敗できない

社員から社長へ抜擢、そのハードルは?

まずオーナー経営者が保有する株を、社員へ承継しなくてはなりません。しかし、堅実に経営してきた優良会社であればあるほど、その株価は高額です。社員の給料で買い取れる金額ではなくなっていることがほとんどでしょう。
そして、後継者候補である社員に、そのような高額な株を買い取って経営をするという覚悟があるかどうかも重要になってきます。経営者の覚悟、会社を経営することの重みは、会社員をしてきた身では想像しえないものです。
会社の経営には、そこに勤める社員だけでなくその家族の生活もかかっています。30人の会社でそれぞれに家庭があるとすれば、平均4人家族として120人の生活が、社長の肩にかかってくるのです。
後継者候補には、社員の立場からそういった社長としての考え方への意識転換と強い覚悟が必要です。
会社の株を買い取れる資金を持ち、経営者としての意識変革ができて社員の生活を背負う覚悟もある。これらのハードルを越えられる社員は、あなたの周りにどれくらいいますか?

所有と経営を分離して考えてみると?

では、株は引き続きオーナーが持ち、経営のみを社員に任せるという方法ではどうでしょうか?多くの中小企業は所有と経営が一体化していますね。株はオーナーが保有し続けることで社員承継のハードルはひとつクリアになったように見えますが… 株を保有したままであれば、引退して経営に携わっていなくても連帯保証を外すことは難しく、最終責任はオーナーのままになります。一方で経営は元社員である雇われ社長が行っていますから、経営には関わっていないのに責任だけを負い続ける形になってしまいます。経営が傾いてしまったとき、倒産して借金を負うのはオーナーです。これでは安心して引退などできません。未上場の中小企業にとっては、所有と経営の分離はなかなか厳しいのが現状です。

オーナーと雇われ社長の関係は難しい

私が携わったM&Aのケースでこんなことがありました。
所有と経営の分離を行った会社で、オーナーのほかに雇われ社長がすでにいる状態でした。最初にオーナーが会社の発展のためにM&Aによる譲渡を希望され、当社にご相談にいらっしゃいました。進めていくうち良いお相手が出てきました。
「社長は現状のまま継続していただきたい」という買い手からの要望があったのですが、いざ雇われ社長にM&Aの話してみると「断固反対」。オーナーと雇われ社長の間に経営に対する大きな意識の違いがあったのですね。このような対立があったのでは、いくら良いお相手がいてもM&Aは成立しません。オーナーは引き続き、株を所有する責任を負い続けることになりました。

会社を次の社長に任せるということ

事業承継は、経営者人生の最後の大きな決断です。
会社が今後も成長・発展していくために、「次の社長を誰にするか」は慎重に検討しなくてはなりません。「あいつは長年勤めていてよく会社をわかっているから」という軽い気持ちだけで社員への承継を決断しないように、一度じっくり後継者候補の社員と話し合うことをお勧めします。

著者

長坂 道広

長坂ながさか 道広みちひろ

日本M&Aセンター成長戦略推進室/株式会社ネクストナビ取締役/株式会社青山財産ネットワークス取締役

創業期の日本M&Aセンターに入社。未上場企業のM&Aという日本で未開拓だった市場で25年間M&A仲介に携わる。 日本M&Aセンターの上場も経験するが、M&Aだけではなく、関係者が喜べるあらゆる承継手法を提供できるよう、2016年日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスの協力により「株式会社事業承継ナビゲーター(現 株式会社ネクストナビ)」を設立。取締役就任。

この記事に関連するタグ

「事業承継・社員承継・親族外承継」に関連するコラム

事業承継をはじめるとき、何から考えたらいいの?

事業承継
事業承継をはじめるとき、何から考えたらいいの?

経営者を引退するとき、事業承継は一族全員の問題になります会社の将来を真剣に考える中で事業承継を考えている経営者の方がまず行うべきことは「将来についてできるだけ早く家族と話し合う」ことです。事業承継とは事業承継ガイドこれは幹部社員や顧問の弁護士、公認会計士・税理士、関わりのある金融機関などよりも優先すべきことだと私は思います。というのも、驚くべきことに、そもそも、子どもが事業を継ぎたいのか、継ぎたく

事業承継は会社にとって第二の創業

事業承継
事業承継は会社にとって第二の創業

中小企業の経営者の多くは、自身が引退した後の会社をどうするか答えがないまま、経営を続けてこられたのではないでしょうか。特に、自身も健康で経営も順調であればなおさら、会社の後継者問題に向き合う機会は少ないといえるでしょう。真剣に考えるタイミングを逃しがちになります。事業承継は後継者の人生にかかわる重要な事ですが、だからこそ後継者をはじめとしたご家族と十分なコミュニケーションがとれていない場合がほとん

後継者は大学で育てる時代!?「事業承継科目」が人気

事業承継
後継者は大学で育てる時代!?「事業承継科目」が人気

家業の後継者といえば、かつては自社で育てるのが主流だった。今は後継者自らが、経営者になるために必要なことを学ぶため大学に通う例が増えているという。早くから事業承継科目を開講し、ビジネススクールとして世界的に高い評価を受けている名古屋商科大学ビジネススクール栗本博行教授にインタビューした。名古屋商科大学ビジネススクール栗本博行教授父親である経営者と後継ぎの息子が親子で通うという例も―名古屋商科大学ビ

社長の殻を脱いでじっくり考えられる場所―『事業承継プロフェッショナルミーティング』レポート

事業承継
社長の殻を脱いでじっくり考えられる場所―『事業承継プロフェッショナルミーティング』レポート

「多段階の人生、まさにそれです」秋雨が包み込む会議室は、季節と反対に温かい空気で満ちていました。会議室には6名、円座になって話しています。「引退後、大学に通って学び直しましたね」「わかります!学生時代は勉強が嫌なのに、いざ立場が遠くなると学び欲がでますよね」和やかな会話が続いています。ここは事業承継プロフェッショナルミーティング(以下、プロミ)の会場。とても今日が初対面とは思えない雰囲気で、各々が

「それでも、あいつに任せたいんだ・・・」継がせたい社長の切なる想い

事業承継
「それでも、あいつに任せたいんだ・・・」継がせたい社長の切なる想い

数か月前、ある製造業のオーナー社長にお会いしてきました。最近は日に日に寒くなってきていますが、まだその頃は夏真っ盛りで、連日真夏日を記録していました。面談のきっかけになったのは、社長からの1本の電話でした。「やっぱり、これからもう一度、自分の手でモノをつくりたい。前にも伝えたとおり、自分には子供がいない。だから、後は専務に任せたいと考えている。でも、専務はまだ若い。着手した第3工場の建設も彼だけで

考えているようで実は考えられていない?!事業承継の「Why」「What」―その2

事業承継
考えているようで実は考えられていない?!事業承継の「Why」「What」―その2

まずは前回のコラムのおさらいです。納得する事業承継のためには、「どうやって(How)」事業承継をするか?を出発点とするのではなく、「何のために(Why)、何を(What)考えていくことなのか?」を起点にすることが必要であることをまず確認しました。そして、事業承継を狭く考えるか広く考えるかで目的(Why)も変化し、どの選択肢<親族承継/社員承継/外部への第三者承継(M&A)/IPO>が自分にとって有

「事業承継・社員承継・親族外承継」に関連するM&Aニュース

エニグモ、BUYMA TRAVEL事業を子会社のMEGURUに承継

株式会社エニグモ(3665)は、エニグモの営むBUYMATRAVEL事業を吸収分割によりエニグモの連結子会社である株式会社MEGURU(東京都千代田区)に対して承継することを決議した。なお、MEGURUは、2024年8月1日をもって商号を変更し、「株式会社BUYMATRAVEL」となる予定である。エニグモを分割会社とし、MEGURUを承継会社とする吸収分割方式。エニグモは、インターネットビジネスの

学研HDグループの学研エデュケーショナル、講談社パルから「講談社こども教室」を事業承継

株式会社学研ホールディングス(9470)のグループ会社、株式会社学研エデュケーショナル(東京都品川区)は、株式会社講談社パル(東京都文京区)の運営する「講談社こども教室」の事業継承に関して、2024年6月14日(金)に基本合意した。今後は、学研エデュケーショナルの事業として、従業員、スタッフは継続して運営にあたり、会員へのサービスもこれまで同様に継続していく。学習教室市場の活性化に大いに寄与すると

ムゲンエステート、子会社のフジホームから建設工事業・内外塗装工事業を承継

株式会社ムゲンエステート(3299)は、完全子会社である株式会社フジホーム(東京都中央区)の建設工事業及び内外塗装工事業を、会社分割により、ムゲンエステートに承継することを決定した。フジホームを分割会社とし、ムゲンエステートを承継会社とする吸収分割方式。ムゲンエステートは、不動産業を行っている。フジホームは、不動産業、建設業を行っている。本件会社分割の目的フジホームの工事部門を承継し、工事を一元化

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース