日本M&AセンターのテレビCM戦略とは?[セミナーレポート]

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2022年7月28日、経営者やマーケティング担当者に向けて「業界No.1の日本M&AセンターのテレビCM戦略とは!?」と題したオンラインセミナーが開催されました。(主催:ノバセル株式会社)

ネット印刷で知られるラクスルは、テレビCMの活用により、7年で約42倍と飛躍的な事業成長を遂げています。子会社であるノバセルはそのノウハウをサービス化するとともに、独自開発したツールでテレビCMの効果を可視化。放映枠やクリエイティブを最適化するという、広告業界で初の「運用型テレビCM」サービスを提供しています。そのノバセルが企画・制作を手がけたのが、株式会社日本M&AセンターのテレビCMです。

セミナーにはノバセル株式会社CEO兼ラクスル株式会社CMO・田部正樹氏とともに日本M&AセンターのCDO・九鬼隆剛がゲストとして登壇。テレビCMの出稿を決定した際の背景、当時を振り返りながら、どのようにマーケティング戦略を描いてきたか、今後の展望について語りました。本コラムでは当日の内容を抜粋してお届けします。

※役職など本文中の情報は2022年7月28日時点のものです。

実績は業界No.1だが、企業認知度に課題を抱えていた

―日本M&Aセンターの事業内容と現在のマーケット、そしてテレビCMを始めたきっかけについて教えてください。

九鬼: 日本には現在400万社強の企業が存在していますが、その9割以上が中小企業です。その3分の1に当たる約127万社に後継者不在・約60万社が後継者不在による黒字廃業の危機に瀕していると言われています。
こうした後継者不在に悩む企業に対して、当社は売り手と買い手をつなげてM&Aの仲介を行ってきました。創業31年目を迎え、2022年3月期は成約数1,000件を達成しています。

―そうした業界No.1のポジションにありながら、あえてテレビCMを始めた背景について教えてください。

九鬼: 2020年から本格的に取り組んできたデジタルを中心とするマーケティング施策の方向性も固まり、ウェブサイトのリード獲得数を前年比4〜5倍にまで伸ばすことができました。
今後さらに大きく数字を伸ばしていくには、 広告媒体の中でも影響力の大きいテレビCMを活用して当社の認知を高め、自社名での流入を上げていくことが重要 だと考えました。

そしてもう一つ、 当社の認知や検索ボリュームが、同業他社と比べてあまり差がなかった ことも大きな理由です。
社内では業界No.1の自負もあり、「当社は多くの人に知られているだろう」と楽観的に捉えてられていたのですが、蓋を開けてみると「中小企業経営者への認知が十分ではない」ことがリサーチの結果、明らかになりました。また、中小企業のM&Aニーズの高まりとともにM&Aプレイヤーが年々増加し、業界内の競争が激化している状況も踏まえ「今動くべき」だと判断しました。

田部: テレビCMで成功する要因の一つが、じつはウェブマーケティングということがあまり認識されていません。テレビCMは大きなリーチ媒体なので、認知した人のうちどれだけが会員登録したり、購買に至っているかを見るには、ウェブマーケティングの力が不可欠です。そこをやり切らないままテレビCMに踏み切って認知を取っても、うまく活かせないという会社が多いんです。

日本M&Aセンターさんはウェブマーケティングの社内体制が整っていましたし、テレビCMをやる意味合いを強く持っていました。さらに競合他社がテレビCMをやっているかという観点も重要ですね。こちらもやろう、という決断が遅くなれば競合の認知がどんどん上がってしまい、それを取り返すための投資も膨らんでしまいます。そのリスクが顕在化する前に、迅速な意思決定ができたことも大きな成功要因です。

テレビCM戦略の舞台裏とは

ーテレビCM出稿の判断にあたって、経営陣にどのように理解を求めたのでしょうか。

九鬼: 今回、 テレビCMの必要性について、想定効果を数値化したこと 、また 実施しなかった場合のリスクをしっかり整理したこと がポイントだと思います。

認知の現状と獲得すべき目標値、獲得した場合の指名検索数の増加率、現状の獲得コストと比較した際のテレビCMの費用対効果、投資額の試算。これらをしっかり計画値に落とし込み経営陣に共有できたことが最終的な意思決定につながったと考えます。

これらを数値化する際に、ラクスルがテレビCMを活用して成長を遂げた際の事例を参考にさせていただきました。(※)
※ラクスルはテレビCMで認知60%を獲得し、指名検索数も大幅に増加。投下したマーケティングコストは2014年から5年間で累計57億に及ぶが、売上は20倍、CPAは半減するなど、高い費用対効果を発揮。

また先ほどお伝えした通り、 同業他社がテレビCMを先行していたこと当社の認知が予想より高くなかったことプレイヤーが急増しているM&A業界の動き などもリスクとしてわかりやすかったのだと思います。

―ノバセルをパートナーに選んだ決め手は何ですか?

九鬼: まずはABテストで効果の出るクリエイティブを検証できるだけでなく、効果を番組ごとに可視化できるノバセルアナリティクスという心強いツールがあったことが挙げられます。

そして当社の事業理解の解像度が非常に高く、クリエイティブの質も高かったことが大きな決め手となりました。他にも効果の可視化を謳う代理店もあり、実際に何度か打合せも行っていました。でも一度オリエンテーションしただけで、あそこまで本質を突いた提案をしたのはノバセルだけでした。『ニッポンには跡継ぎが足りない』というコピーも、我々の心に深く刺さりました。

―どのような戦略設計で現在放映中のテレビCMに至ったのでしょうか?

田部: 我々はWho(誰に)What(何を)How(どうやって)伝えるかを最も重視しています。WhoとWhatについては定量調査で確度を上げながら、ユーザー調査で市場構造を理解する。そしてターゲットとなる顧客のインタビュー調査でインサイトを理解し、その結果を踏まえてテレビCMを作るというステップを踏んでいます。ノバセルはこうした事前の調査・検証・戦略づくりに最も力を入れているのです。

今回は、日本M&Aセンターさんが大事にされている ‟M&Aは単なる事業売却ではなく、想いを乗せた一度きりの事業継承である” という考え方を、ユーザーの便益にどう翻訳するかがカギでした。 そこで生まれた方向性が①豊富な実績による安心感(機能便益)②事業継承によって経営者やその家族も幸せになれる(感情便益)というものです。

また定量調査でターゲットの課題(例:「納得いく買い手を探してもらえるか不安」・「手数料が高そう」・「仲介会社の違いがわからない」)を特定し、複数のコンセプトでテストを行いました。その結果2つの戦略案「A案:ニッポンには跡継ぎが足りない編」「B案:成約式のドラマ化編」をクリエイティブに落とし込み、ローカルテストで検証することになったのです。

ローカルテストは宮城と新潟で放映し、クリエイティブのABテスト、放映する番組枠の相性などを検証しながら、最適化を図っていきました。その結果A案のほうが効果の高さが見えたほか、放映中・放映後の認知度調査を通じて認知度の向上を確認でき、勝ちパターンが見えてきたのです。ここからスケールアップして現在の関東での放映に至っています。

―今後のマスマーケティングの展望や取り組みについて教えてください。

九鬼: 今回は、まず関東を中心とした一部エリアでスタートしました。重要なKPIである認知率が徐々に高まっていることを確認し、進捗を見ながら対象エリアの拡大など判断していくことになるかと思います。今後はより効果の高いクリエイティブを追求するとともに、YouTubeやオフラインなど多面的に露出を図ることでターゲットとの接触機会を増やし、さらなる企業認知の向上を図りたいと考えます。

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