[M&A事例]お互いの良さを引き出した成長戦略型M&A

調印式にて、元 吉原燃料店 代表取締役の吉原祐司様(写真左)と、株式会社サイサン 代表取締役社長の川本武彦様(写真右)

譲渡企業情報

  • 社名:
    元 株式会社吉原燃料店(埼玉県)
  • 事業内容:
    入間市をメインに事業を展開されていたプロパンガス供給会社

譲受企業情報

  • 社名:
    株式会社サイサン(埼玉県)
  • 事業内容:
    家庭用LPガスを中心に、産業用、医療用の各種ガス販売。国内では1都1府1道19県にて展開、海外では、8か国にて展開。売上約660億円、従業員は1000名超える、LPガス業界の大企業

※M&A実行当時の情報

 

2018年11月に「中堅・中小企業経営者のためのM&Aセミナー」を開催し、「成長につながるバトンタッチ」~会社を存続させるための最も現実的な手段~というテーマで、M&Aを実行された企業様にその体験談を語っていただきました。

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元 吉原燃料店 代表取締役社長の吉原様と株式会社サイサン 代表取締役副社長の川本知彦様が登壇したセミナーの様子

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写真中央が元 吉原燃料店 代表取締役社長の吉原祐司様、写真右が、株式会社サイサン 代表取締役副社長の川本知彦様、写真左が当社の担当コンサルタント 長﨑進一

婿養子に入った家でプロパンガスの営業に

吉原燃料店は1962年に吉原祐司様の義理のお父様が創立。創業当時はエリアで二番目に早くプロパンガスの提供を始めた燃料専門店として、長年、入間市の家庭にエネルギーを供給し続けてきました。

吉原様は大学卒業後、一旦は地域の会社に就職しましたが、20代前半での結婚を機に吉原家の婿養子に入り、吉原燃料店に就職しました。入社してから取り組んだのは、プロパンガスのルートセールス。それまでの顧客数は2000件ほどでしたが、精力的に営業活動を行い吉原様が入社して5年ほどで顧客数をおよそ倍に増やしたといいます。その後、創業者の弟様に事業を引き継がれ、吉原様は二代目社長の右腕として支えてきました。

順調に経営を続けてこられた吉原燃料店ですが、1995年、エネルギー業界全体に変革をもたらすことになる電気事業法の改正が行われます。この法改正をきっかけに、エネルギー業界で電力の自由化が本格的に推進されるようになりました。

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セミナーに登壇し、M&Aの体験談を語る吉原様

“商売をするなら本流の川上にいなければつまらない”

徐々にエネルギー業界に変化の波が押し寄せる中、吉原様は2011年に三代目として代表取締役社長に就任。しかし、同じ年に東日本大震災が発生し、この震災がきっかけで国はさらに積極的に電力の自由化を推し進めることになりました。

こうした経緯を経て、エネルギー業界の再編がいよいよ現実的なものになってきた頃、吉原様が抱えていた会社の将来への不安は危機感へと変わります。「2016年に電力の自由化が施行されれば、“世界のエネルギー業界と同じことが日本のエネルギー業界でも起こる”と直感した」と吉原様は話します。

また、こうした心境の変化は、吉原様が大切にされてきたビジネスの信条を思い起こさせることになりました。

「日本の市場においても規制緩和の後に必ず統廃合が進む。それに備えるためには、自分たちよりも大きな規模で、電力にすでに取り組んでいる会社と組まなければならないと考えました。商売をするなら本流の川上にいなければつまらない」。

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吉原様は、今後の吉原燃料店の将来像について考えたとき、どのような形であれば社員もお客様も幸せに生き残れるのかを真剣に考え始めたそうです。

そして2015年、吉原様は日本M&Aセンターの「経営者のためのM&Aセミナー」に参加され、M&Aについて具体的に検討するようになります。当初は、買収と譲渡の両面を視野に入れてのM&Aの検討をされていましたが、担当コンサルタントの長﨑に相談し、従業員も顧客も幸せになる方法を模索した結果、選択肢は “会社の譲渡“しかないと考えるようになりました。

先代社長の理解と家族からの応援

こうして会社を譲渡すると決心されてからは、家族の理解を得るために何度も話し合いを重ねました。吉原様は先代の二代目社長(義父の弟様)と少なくとも15ラウンドは話し合いを重ねたといいます。 最初の数回は案の定まったく理解をされず、先代からは「お前を3代目に選んで失敗だった」と言われてしまいましたが、粘り強く話し合いを続けた結果、最後は先代から「悪い考えじゃない」と理解してもらえたそうです。

一方で、吉原様の息子様は、M&Aすることについて初めから賛成してくれていました。「継がせようと考えていた息子が『その方向でいいと思うよ』と言ってくれたのは嬉しかったです」と吉原様。奥様やお母様も「祐司さんの考えだから」と賛成し、応援してくれました。

サイサンとの出会いと成約に至るまでの決意

こうしてM&Aすることについての家族からの合意をもらったあと、譲渡先に求める希望条件に合致した買い手候補企業探しが始まりました。

吉原様が会社を譲渡するにあたって条件としていたのが、

  1. 前職と同じ処遇またはよりいい条件で従業員を継続雇用してもらうこと
  2. 大事な顧客を惑わせず守ってもらうこと
  3. 2016年4月電力事業化に備えて前倒しでM&Aに協力してくれること

の3つでした。当初、買い手企業の候補先は40社あったそうですが、そのなかから希望条件にあった買い手企業の候補は3つに絞り込まれ、最終的にサイサンを選ばれました。サイサンは、同じ埼玉県に本社を構える、LPガス販売の大手企業です。

サイサンを選んだ理由について、吉原様は「小回りが利き、意思決定が速い」ことだと話します。「同じオーナー経営で、すぐにやるスピード感がうちと似ていると思いました。規模は違っても、商売の根本にある考え方は“小売商人”であることが一致していると感じたのが決め手です」。サイサンならば、「吉原燃料店の顧客と従業員を幸せにしてくれる、信頼できる」と吉原様は確信したそうです。

サイサンが考えていた事業拡大戦略

一方で、お相手であるサイサンは、電力の自由化に伴い、業者間で合従連衡の動きが加速し電力や都市ガスとの競争率が高まるなか、販売地域を拡大せねばならないと考えていました。吉原燃料店との提携はサイサンの主要な販売エリアを網羅できるチャンスでもあります。

株式会社サイサン 代表取締役副社長の川本知彦様は、「“お客様あっての企業である”という経営理念にもある通り、当社は小売の大切さ、また、楽しさをもって事業を行っています。その点は、吉原様も同じ価値観を持っていると感じました」と話します。

“お互いが大切にする価値観”と“経営判断のリズム”が同じだったことが、今回のM&Aの決め手となりました。

調印式の様子

調印式の様子

調印式を終えて

両社間で基本合意契約を結びM&Aの手続きを開始してから、買収監査を経て最後の調印式を終えたあと、吉原様は従業員に向けて、なぜM&Aしたのか、どんな会社と一緒になるのか、これからどうなるのか、について説明されました。

「M&Aを実施したことを説明した時、社員は不安を抱いたと思います。しかし、彼らの仕事や定款、就業規則は変わらないので安心してほしいと伝えました」。

今回のM&A後、いわゆる吸収合併という形で、吉原燃料店の社員はサイサン社員となり、会社はサイサンの入間営業所として生まれ変わっています。吉原様は、理念やビジョンに共感ができて、規模の大きな会社であるサイサンに社員を託すことが、長期的に社員を守ることにつながる、と考えこの決断に至りました。

「当社の社員は、サイサン社員になることで更に活躍できる場所が広がりますし、子会社の社員というわけではなく、親会社の社員になるわけです。具体的に言うと、サイサンの支店長にも、役員にもなれる可能性があります。社員の将来、未来を考えたときに成長を期待できると考えていました」。

元 吉原燃料店 代表取締役社長の吉原祐司様と株式会社サイサン 代表取締役社長の川本武彦様

元 吉原燃料店 代表取締役社長の吉原祐司様と株式会社サイサン 代表取締役社長の川本武彦様

サイサン 川本様の想い

 サイサン様の入間営業所として生まれ変わった事業所と社員一同。写真中央が新社長の竹内様、写真左端が吉原様

サイサン様の入間営業所として生まれ変わった事業所と社員一同。写真中央が新社長の竹内様、写真左端が吉原様

サイサンは、自社から吉原燃料店の新社長を派遣し、当初3年で合併することを考えていましたが、結果的に1年前倒しとなり2年で合併を実現しました。

吉原燃料店のいいところを継承しながら、サイサンがもっているいいところを融合させたいと考えていました。吉原燃料店の社員の方々に新しいリーダーの右腕・左腕になって頂くことで不安感を払しょくし、よりよい会社を作るために力を貸してほしいという想いで取り組んでいます」と川本様は話します。

M&A後の2年で、何か変わったことは?

M&A後、新しく入間営業所として再出発した従業員の方々と吉原祐司様の息子様(写真右)

M&A後、新しく入間営業所として再出発した従業員の方々と吉原祐司様の息子様(写真右)

お互いの強みを融合して実現した今回のM&A。 M&A後の2年間で、サイサンは、吉原燃料店の従業員にサイサンの理念を理解してもらうことからはじめました。そして、お客様にはサイサンのブランドやサービスについて新たに知ってもらうために丁寧に説明を行い、感謝祭の開催などといった取り組みも行いました。

当時を振り返って、サイサンの従業員として働くことになった吉原様の息子様は、大きな変化は感じなかったといいます。

「吉原燃料店の看板を下ろすと伝えられた時は、とてもさみしい気持ちになりました。しかし、いざ、吉原燃料店からサイサンの入間営業所に代わっても、お客様はこれまでと変わらず接してくれました。そのとき、会社名は変わったけれど、提供するサービスが変わらなかったら、お客さまは不安を抱かない ということに気づいたのです。お客様は吉原燃料店の看板以上に、うちの従業員を愛してくれていたということをその時初めて知りました」と息子様は話します。

これからM&Aをご検討されている方に向けて

最後に、M&Aをご検討されている方に向けて、経験者の視点から吉原様と川本様からメッセージをいただきました。

サイサン 川本様  「会社の買収を検討されている方は、M&Aで規模を拡大させるという考え方ももちろんありますが、譲渡された企業の良いノウハウを吸収できる、または使わせて頂けるのは、非常にありがたいことだと思います。そのためには、お相手のよいところを理解し、仲間意識をつくり、互いの良いところを融合させていくことが大切です。譲渡をご検討されている方は、様々な考え方があると思いますので、譲渡するにあたっての目的を明確にされて、一番に優先したいことを明確化していただくと、想いに合致したよい縁に恵まれるのかなと思います」。

吉原様  「お客様が違和感を持つことなく、変わることができたことに満足しています。“自分が納得すること” “家族が納得すること” “社員が幸せになること” “お客様、お取引先が幸せになること”を明確にすることが、M&Aを成功させる秘訣だと思います」。

M&A実行年月
2016年6月30日
日本M&Aセンター担当者コメント

上席課長 長﨑進一
(吉原燃料店様 担当)

上席課長 長﨑進一(吉原燃料店様 担当)
上席課長 長﨑進一(吉原燃料店様 担当)

吉原様は、会社の業績も好調でかつ息子様が社内にいらっしゃる状況でしたが、会社の将来を見据え、M&Aを決断されました。M&A成約から2年経過して、吉原様とお会いしたのですが、本当にM&Aを行ってよかったと喜んで頂き、私としても非常に嬉しかったです。このような素晴らしいM&Aのお手伝いが出来たことは、誇りに思いますし、今後も中小企業の存続と発展のため、M&A業務に邁進していきます。

日本M&Aセンター担当者コメント

シニアディールマネージャー 田邉 大輔
(サイサン様 担当)

シニアディールマネージャー 田邉 大輔 (サイサン様 担当)
シニアディールマネージャー 田邉 大輔 (サイサン様 担当)

川本副社長も、当社のセミナーでおっしゃっていられましたが、サイサン様はまさに「大家族主義」という考え方を持ち、M&Aに臨んでいらっしゃると感じます。この売り手オーナー様に対する接し方が、本件を含め、毎年コンスタントに案件成約に繋がっている要因の一つではないかと、担当者としては考えています。これからM&Aを積極的に行っていこうとお考えの買い手企業様には、ぜひ参考にしていただき、また、そんなサイサン様との提携にご興味のある方は、当社までお問い合わせください!

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