
[M&A事例]Vol.123 将来の廃業をとりやめM&Aをして5年。新社長が入社し、安心できる体制へ
北海道留萌市で建築設備の管工事業を手掛けるハチロは、1961年の創業以来、地域に根差した事業で地元の信頼を得る会社です。2018年9月の譲渡から5年、2023年7月に会長に就任した譲渡オーナーからお話を伺いました。
譲受企業情報
※M&A実行当時の情報
2015年8月に弊社がお手伝いした共栄株式会社を含め、これまで10社以上のM&Aによる譲受け実績のある株式会社イチネンホールディングス。今回代表取締役社長 黒田雅史様に、M&Aのメリットや譲受ける際に気をつけていること、今後の戦略などを伺いました。
順調だった本業の将来に危機感を覚え、新たな事業の柱獲得へM&Aを推進
黒田様: 古くは1970年代に遡りますが、私が入社する前から同業を中心とした企業の譲受けを実行しておりました。当時M&A自体が珍しいことでしたから、このときをきっかけに金融機関からもM&Aに関わる情報が入ってくるようになっていました。
そもそも創業当初、弊社は石炭の販売を行う個人商店でした。戦中から戦後にわたる8年間は一時休業を強いられましたが、その後は大阪地区で一番に石炭販売業を再開し、これを機に組織を改め、社名を「第一燃料株式会社」としました。現在の「イチネン」の名は、この「第一燃料」の「一」と「燃」からきています。
その後1960年代には、エネルギーの主役が石炭から石油へと転換する動きがみられ始めたため、弊社も1963年に黒田商事株式会社を設立し石油事業へ進出、石炭から石油への事業転換を行いました。
石油事業に転換した後も、エネルギー業界の変化に不安を覚え、市場拡大が確実視される自動車分野へ参入することを決めました。1969年に商号を黒田商事から「株式会社イチネン」に変更し、自動車リース業に参入。自動車リース部門が軌道に乗り、営業拠点も増え始めた頃、さらなる成長を図るため自動車メンテナンス受託事業に新規参入しました。2000年には自動車リース事業の強化を行うため、リース会社2 社とM&Aを行うなど、新規参入とM&Aを組み合わせ、事業領域の拡大と事業基盤の強化を並行して行いました。
自動車総合サービス業の業績は順調に推移しましたが、ハイブリッドカーや電気自動車が登場してからは、自動車総合サービス業のみでは将来苦戦を強いられるとの危機感を覚えるようになり、新たな事業の柱をつくらなければとの思いに至りました。
そこで領域を問わずM&Aを推進する方針を掲げ、2004年に自動車・産業用ケミカル事業に、2012年には機械工具販売事業、合成樹脂事業に、それぞれM&Aを活用して新規参入しました。
結果として主業以外の4事業については全てM&Aにより参入することになったのですが、譲受けたその日から売上が出ますから、自前でゼロからやるよりも随分と時間短縮をして現在の形を作ることができました。
相手探しの前に条件を明確化検討から実行まではスピードを最重視
黒田様: まず大前提として、M&Aをしたいとの「意志表示」をしておくことが重要だと考えます。弊社では証券会社、銀行、M&A専門業者等あらゆる紹介元に声をかけてアンテナをはって情報を待つようにしました。実際弊社が譲受けた十数社の紹介元はそれぞれ異なっており既存の繋がりがなければ成立していなかった話も多くあります。
次に、検討するにあたり条件を明確にしています。その条件とは、「後継者不在を理由に売却を希望していること」「オーナーがいなくても事業運営がまわっていくこと」です。いずれも「経営の引継ぎやすさ」に繋がります。売却する理由が不明確であったりオーナーに依存した組織であったりすると、M&A後、社員が思うように動いてくれず組織を作り上げるのに時間と体力を消耗してしまいます。
また、商談の入り口から必ずトップが出るようにしておくことも重要です。検討から実行まで全体を通して言えることですが、意志決定についてはスピード感が重要だと思います。お相手に失礼のないように、できる限り即断即決で反応するよう心がけています。早く決断するには、大枠は社長自らの判断で、細かいところは社内にいる参謀的立場の人材がサポートしてくれる、といった役割分担も必要かもしれません。
商談が進みだすと私が必ず約束することがあります。「従業員は全て引き受ける」ことと、「事業の将来性を過度に問わない」ことです。譲受けた後は全て買手の責任になりますので、細かい注文はつけずにあくまで冷静に現状を見て判断するようにしています。
M&Aが組織の新陳代謝のきっかけに次の世代の活性化に好影響
黒田様: M&Aを重ねて実行するにつれ、「次は誰が子会社の社長になるのか」ということが話題になり注目されるようになりました。嬉しいことに、そうやって譲受けた会社へ行きたがる人材が当社の場合多いのです。これまでM&Aでは、お相手に失礼のないように当社の役員を中心にエース級を送り込むよう心がけて実行してきました。外部から経営者を招聘するという選択肢もあるかと思いますが弊社では送り込む人材はあくまで自前です。もちろん自社内ではエース級が抜けるわけで現場は当初混乱するのですが、良い意味で組織の中で新陳代謝が起こり、結果的に次の世代の活性化に繋がっています。そういった効果もあり今後は役職に関わらずやる気のある人材に活躍の場を与えるという意味で、若手からも積極的に選抜していきたいと考えております。以前は子会社の社長に任命すると後ろ向きな反応が多かったのですが、実際に赴任してみると皆やりがいを感じて業務に取り組んでくれており一様にイキイキと仕事をしているなと感じます。買うにあたってはこういった社内の雰囲気があれば経営者にとってもM&Aを推進しやすくなりますし、事業拡大をしながら社員が成長していく、という好循環が生みだされます。
自動車総合サービス事業を軸に、M&Aを活用してこれまで4つの事業分野に進出。2016年3月には新たに農業分野へ参入した。
黒田様: 管理機能についてはすぐに着手します。やれば効果がすぐ現れるからです。弊社は持ち株会社化していますので、グループ企業の管理機能は全てそこへ集約・一元化することにより効率をあげることを目的としております。営業面については任命した新社長に原則一任します。私が兼任することはほとんどなく、新社長には「代表取締役」の肩書きがつきますので責任重大なのですが、これが本人のモチベーションと能力を引き出す大きな武器となっております。
会社としては、収益性のある事業を取り込めるだけでなく社員のレベルアップにもつながるわけですから、M&Aはうまく活用すればグループ全体の価値があがる、経営者にとっては今や必要不可欠な戦略ツールだと思っております。
M&Aを通じてグループ内に経営者を育成次なる事業戦略策定の軸に
黒田様: 既存事業の更なる強化を考えておりますが、中でも機械工具販売業、インターネット通販業を営む企業があれば地域を問わずに積極的に検討したいと考えています。直近では自前で農業にも進出することを決定したのですが、それらを強化・発展させることができる業種もよいかと思います。M&Aを通じてグループ内に一人でも多くの「経営者」が誕生すれば次なる事業展開もさらにたてやすくなりますので、今後もM&Aを積極的に検討していきたいと思います。日本M&Aセンターさんは業界最大手で情報も豊富に持っていらっしゃるとのことなので今後の情報提供、大いに期待しております。
M&A成功インタビューは、
日本M&Aセンター広報誌「NEXT vol.5」にも掲載されています。
北海道留萌市で建築設備の管工事業を手掛けるハチロは、1961年の創業以来、地域に根差した事業で地元の信頼を得る会社です。2018年9月の譲渡から5年、2023年7月に会長に就任した譲渡オーナーからお話を伺いました。
自動車関連事業を主力事業とするGLIONグループは、これまでM&Aで92社もの会社を譲り受け、国内外で成長を続けてきました。各社の独自性を活かしながら、グループ全体で業績を上げる具体的な取り組みについてお話を伺いました。
レンタルサーバー事業を中核事業に持つカゴヤ・ホールディングス株式会社(京都府)は、積極的にM&Aを推し進め、2021年12月から約9カ月間に3社を譲り受けました。M&Aを活用して「総合DXカンパニー」を目指す北川貞大社長に、最初の譲受け企業となったエスケイワードとのM&Aについてお聞きしました。
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共栄様との縁組を主担当者として仲介させて頂きました。黒田社長を中心とした素晴らしいM&Aチームのおかげで、スムーズに進行し、共栄様も非常に満足されています。今ではM&A前以上に共栄様の業績は好調です。今後はより広域に展開を進め、東海、北陸の拠点として飛躍的な成長をされる計画を描かれております。地方企業の存続と、上場企業の成長戦略が合致した各社メリットが非常に大きい本件M&Aに関与できた事を、非常に光栄に思います。