[M&A事例]技術も事業も異なる製造業2社が手を組み
他社にない強みを得て顧客拡大を目指す

株式会社ハリガイ工業

譲受け企業情報

  • 社名:
    株式会社ハリガイ工業(茨城県)
  • 事業内容:
    ゴム成型事業、製造受託事業、物流支援事業、新規素材開発事業
  • 売上高:
    約11.7億円(2022年3月期)
    従業員数:
    約150名(2022年3月時点)

新規顧客獲得のためには加工技術の多角化を図るしかないと、企業の譲受けを検討していたハリガイ工業(茨城県)。コロナ禍で業界全体に停滞感が広がるなか、相手に選んだのは同じ製造業で異なる技術と事業をもつ株式会社ケー・アイ・ピー(千葉県)でした。(取材日:2023年4月17日)

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製造受託の新規顧客開拓には
時間がかかる!

――ハリガイ工業の事業内容をお聞かせください。

譲受け企業 ハリガイ工業 遊佐様: 当社は産業機器の加工組立製造とゴム成型部品の受託製造を主力事業に展開しています。産業機器の加工組立は工業系の顧客が多く、細かい要望や少量多品種に対応できるのが強みです。
ゴム成型部品の製造は自動車関連や機械装置関係の顧客がメインです。こちらは顧客の物性要望に合わせてゴムの配合設計から量産までを一貫して行っております。当社開発部門が試作から量産開発までを行い、品質及び製造部門へ展開する、ほぼ全ての工程を自社で行うような技術を持つ会社は少ないと思います。

――ゴムを使った新素材を開発して特許もとられたんですよね。

遊佐様: はい。当社は従前より、加工組立やゴム成型だけの新規顧客開拓には非常に時間がかかるという課題を抱えていて、以前から事業の柱をもう1本増やし開拓スピードを上げたいと思っていました。これが、会社の行動方針にM&Aを加えた背景です。
昔のように飛び込み営業で仕事が取れる時代ではないので、アピールして相手から声を掛けてもらえなければいけません。これからは受託製造だけでなく、自社製品を製造・開発できる会社になろうと、2016年に開発企画室を立ち上げ、炭素繊維とゴムの複合素材を開発して2019年に特許を取得しました。
その結果、展示会などでアピールし、当社の認知度が向上、営業活動でプラスの効果につながっています。

ゴムと炭素繊維を複合化した自社開発製品のCFR(カーボン・ファイバー・ラバー)

ゴムと炭素繊維を複合化した自社開発製品のCFR(カーボン・ファイバー・ラバー)

――今回のM&Aも事業の柱を増やす狙いがあったのですか。

遊佐様: そうです。特にコロナ禍で業界全体に停滞感が広がっていました。ただし今のうちに取引先をもっと増やしていかなければならない。そこで加工技術の多角化を加速させたいと考えるようになりました。

世の中のほとんどの工業用品というのは、ゴム、プラスチック、金属が主な材料なんです。ゴム以外の材料・技術を扱えるようになれば顧客への提案の幅が広がります。ただ、新たな技術を必要とする事業をゼロから立ち上げるとなれば設備、開発、営業への投資に数年はかかってしまう。そんなに時間をかけている時代ではないと……。
そこで、譲渡を検討している会社から社員、技術、顧客を引き継ぐことがベストな選択だと思い、日本M&Aセンターにお願いすることにしたんです。

――企業を選ぶうえでの条件が非常に明確でしたね。

遊佐様: まずは当社にない技術をもっていることですが、それ以外に3つありました。1つ目は日ごろから行き来できる程度の距離にあることです。2つ目は取引先から評価されていること。3つ目は現預金と負債のバランスがいいことです。
ケー・アイ・ピーはその条件をすべてクリアしていました。プラスチックの加工で高い技術をもち、歯科医療メーカー向け製品の二次加工をメインに請け負っていて、当社にはない技術と新たなジャンルの顧客をもっていることが魅力でした。
これまで品質クレームがないことも安心材料になりました。クレームがないというのは品質管理がしっかりされている証拠です。工場を見学した時に現場にも表れていると感じました。

顧客のニーズに応じてゴム材料を使い分け、その特性を活かした「機能性ゴム製品」を製造する

顧客のニーズに応じてゴム材料を使い分け、その特性を活かした「機能性ゴム製品」を製造する

動揺する社員全員と
すぐに面談を実施

――ケー・アイ・ピーは創業者から経営を引き継いだ加藤 義教社長(現:常務取締役)が約3年間経営してきました。先代で会長の決断を当時、加藤社長はどう受け止められましたか。

譲渡企業 ケー・アイ・ピー 加藤様: 会長から話を聞いた時は不安な気持ちのほうが大きかったですね。そもそもM&Aに対する知識がありませんでしたし、周りでM&Aをした企業は何社かありましたが詳しい事情は知りません。社員はどうなるのか、自分はどうなるのかなど、いろいろと今後のことがわからなくて不安でした。
ただ、同時に期待もありました。ケー・アイ・ピーは私も入れて9名(インタビュー当時)の会社で、取引先も2社しかありません。完全受託製造で当社も新規顧客の開拓が課題でしたので、M&A後の事業の広がりに可能性を感じました。

――交渉にはどのように関わっていかれたのですか。

加藤様: 私には決定権がありませんが、会長は数年前から現場を離れて地元の北海道に拠点を移していましたし、経営は私がしていましたから会長の了承のもとでハリガイ工業の遊佐社長と2人で進めました。私は経営者の立場から、ケー・アイ・ピーの将来性や利益につながる部分について考えをお聞きし、特に会社を維持する上で一番大切な社員に関する待遇面は、日本M&Aセンターを通じて念を押して確認しました。

――社員の皆さんへは成約したその日にお伝えになったと伺いました。

遊佐様: ケー・アイ・ピーを譲り受ける上で一番心配したのはその点です。加藤社長に引き続き役員として残っていただくことは決まっていましたが、譲渡を知って社員が辞めてしまわないだろうかという不安がありました。実際に社員全員に伝えた時には一部の女性社員が泣いていて、これはまずいなと思いましたね。発表が12月20日でしたから、このまま年末年始の休みに入るのは良くないと思い、すぐに全員と面談をしました。あらためて一人ひとりに説明したことで、「驚きましたが、やっと状況が飲み込めました」といった言葉が聞けたので、ああ、これで年が越せるとほっとしました。

加藤様: おかげさまで1人も辞めていません。私も社員に、組織は変わるけれども基本的に業務内容は大きく変わらないとは伝えましたが、遊佐社長がケー・アイ・ピーの社長にもなりましたので、何かしらの変化はあるでしょう。ただ、それはいい方向で変わっていくということなので、変化をネガティブに捉えないでほしいと話しています。

(左)株式会社ハリガイ工業 代表取締役社長 遊佐 孝彦 様(右)株式会社ケー・アイ・ピー 代表取締役 加藤 義教 様

(左)株式会社ハリガイ工業 代表取締役社長 遊佐 孝彦 様
(右)株式会社ケー・アイ・ピー 代表取締役 加藤 義教 様 ※役職はM&A実行当時

両社が同じ方向を向くために
経営会議は合同で行う

――新しい取り組みは始まっていますか。

遊佐様: 合同で新しい部品を作る動きが進んでいます。量産できれば年間数千万円の売上を見込めます。また、お互いにできることが増えましたので、早速取引先へも営業をかけて実際に引き合いもきています。
同じ製造業でも持っている技術や顧客が違いますので、それが強みになっています。展示会にもどんどん出展してアピールしたいですね。おそらく半年後くらいにはシナジーが出ると思っています。

――経営面でも統合が進んでいるそうですね。

遊佐様: 加藤社長にはケー・アイ・ピーの常務のほかに、ハリガイ工業の執行役員にも加わっていただきました。今は経営会議も両社の役員陣で行っています。将来的にはハリガイ工業の生産技術部門や設備管理部門がケー・アイ・ピーの事業に関連することもあるでしょうし、ケー・アイ・ピーの社員が当社の研修を受けることもあるでしょう。グループとして共に業績を伸ばす必要がある中で、両社の役員陣が同調、連動して動けば、より経営活動はスピード化します。

――最後に、経営者の方へメッセージをお願い致します。

遊佐様: スピード決断を最重要にすることですね。ただし事前の情報確認は絶対に妥協しない、怠らない。残念ながら製造業は倒産、廃業する会社が増加の一途をたどっています。でも、どの会社にも社員や取引先がいるわけですから、やめる判断をする前にいま一度、やり残したことがないかを考えてほしい。例えばM&Aという選択肢も検討してほしいですね。負債があっても諦めないでほしい。まずは日本M&Aセンターのような会社に相談してみることだと思いますね。

加藤様: 私は今回、当事者ではありませんでしたが、現状維持でいいならあえてM&Aをしなくてもいいと思います。でも、何か変化を求めるのであればプラスになる可能性にかけてチャレンジしてみることじゃないでしょうか。前に進めなければ良くはなりませんから。

日本M&Aセンター担当者コメント

業種特化事業部 業種特化1部(製造業支援担当) 田中 智大
(株式会社ハリガイ工業担当)

業種特化事業部 業種特化1部(製造業支援担当) 田中 智大(株式会社ハリガイ工業担当)

ハリガイ工業にとってはじめてのM&Aでありながら、医療業界への進出と樹脂加工技術の獲得という、新しい領域へ踏み出す試みでした。単なる売上・利益の足し算ではなく、両社の技術や素材への知見、生産体制、現場レベルでのノウハウを掛け合わせることでシナジーが生まれる、理想的な製造業のM&Aの形だったと思います。

※役職は取材時

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