コラム

M&A事例から読み解く空調工事業界・管工事業界のM&A動向と経営課題

松島 貫太

日本M&Aセンター業種特化3部

業界別M&A
更新日:

⽬次

[表示]


株式会社日本М&Aセンター工事業界担当の松島です。
当コラムは日本М&Aセンターの管工事チームのメンバーが業界情報を執筆しております。
今回は松島が「空調工事業界の動向と課題」についてお伝えします。

空調工事業の経営者の悩みや経営課題

私もこの数年経営者の方々に話を聞くと、主に下記のような悩みを抱えています。

人的な課題

「仕事はあるが、人が足りていない」
「若い従業員の育成ができない。」
「苦労して採用したがすぐやめてしまう。」
「工事の需要の波で、人を抱えきれない」
「後継者がいない」

今後の先行き不安

「ガス空調、電気空調、両面への対応」
「ほかの工事に進出したいが単価が合わない(外注費・材料費の高騰)」
「育つと一人親方として独立してしまう」
「協力外注先が、廃業やM&Aで不安定になっている」

採用、教育、定着、高齢化など社内のことだけでなく協力先や販売先など外部の変化や不安定な状況にも対応していかなくてはなりません。

  • 人材採用の強化・充実
  • 仕入れコストの削減
  • 工事スキルの向上
  • 施工エリアの拡大

上記を自前で対応していくのか、M&Aを検討していくのか経営者様の判断が必要になってまいります。

そのような中、近年特に工事業界のご相談が非常に増えています。
ご相談の結果この数年では、毎年20~30ほどの空調・管工事の企業様のM&A成約実績がございます。

空調工事業界M&A実績が多数

年間1000社を超える事業承継・M&Aの成約実績をもつ当社の空調及び管工事業界のM&A実績を分析していきましょう。

成約実績分析


上記図のとおり、1億円以上~3億円未満の割合が51%と過半数を占めています。
ただし、近年10億を超える会社様からの相談も非常に増えており、今後増えてくる可能性が高いです。

同県同業のケースが少ない

  • 同じ県内で顔見知りの会社が多いので、県内で探しにくい。
    知り合いの会社に、譲渡を検討しているということを知られたくない。
    そういったことにも真摯に対応し、マッチングを進めております。

  • シナジー効果の期待値に満たないケース
    同エリア内で、同業種の会社の場合ですと、新たなシナジー効果や経営者のニーズを満たさないことが考えられます。
    例えば、新規エリアや施工能力の強化など様々な目的をもって、マッチングのご要望をいただいております。

約8割は隣接業種・異業種と提携

同業の成約ケースの目的としては主に下記のような目的をもっています。

  • 人材確保
  • エリアの拡大
  • 販売先の多角化
    公共なのか、民間なのか、取引先が偏っていることを課題に感じている会社様も多いです。
    そういったことで、人や販売先の経営課題解決としてのM&Aが多くなっています。

隣接業種のケースの目的はどのようなものがあるのでしょうか?

「内製化」と「ハンマープライス」

別の設備工事業をやっている会社様が、空調工事の部分だけ外注しているケースで、「外注費の削減」「内製化」としてM&Aを検討するケース。
または、一緒になることで一括受注体制の構築し、「ハンマープライス」で受注できる体制が重要だと感じられている経営者様が増えている印象です。

建設・ゼネコン、土木工事→専門工事の内製化

建設やゼネコンなど土木工事をされている企業様は、専門工事を外注が多いので、そこを一緒になることで利幅を多くとれるようになること。
また、譲渡側の企業様にとっても営業状況の波、受注残金額の大幅な変動を抑えられることに魅力を感じられる経営者様もいらっしゃいます。

異業種とのマッチング例

電材、空調製造、卸の会社様は販路の拡大や施工能力の獲得を目的としたマッチングが非常に多いです。
工場などに空調を卸している会社などでは、メンテナンスや保守のニーズで顧客ニーズの対応のために、内製化の動きが見て取れます。
不動産領域においても、ビルメンテナンスやリフォームなど外注費の削減・受注残金額の大幅な変動を抑えられる効果が期待されています。

空調工事・管工事企業様の事業ヒアリングが非常に重要

日本M&Aセンターとして、今まで事業承継・M&Aでは8500件以上の成約実績がございます。
その中でも特に、この設備工事業界の企業様のご支援には、日本全国・異業種や周辺業種とのマッチング力が重要です。

各社様ごとに業務内容や、家庭用、業務用(ガス空調、電気空調、冷媒など)かどうか、工事種別(新築工事、リニューアル工事、メンテナンス)はどうかなどもしっかりとヒアリングさせていただきます。
商流(民間・公共、元請・下請)でのお悩みや、対応できる物件の領域(施設、オフィス、住宅、プラント)など業務(管理・職人、営業~調達、設計~保守)に関するご要望にもしっかりと寄り添ってまいります。

いかがでしたでしょうか?
空調工事・管工事業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたらお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

松島 貫太

松島まつしま 貫太かんた

日本M&Aセンター業種特化3部

設備工事業を中心に、運送、建設資材製造・卸での成約実績複数

この記事に関連するタグ

「建設業界・管工事」に関連するコラム

【工事業界M&A事例】40代で決断する事業承継

業界別M&A
【工事業界M&A事例】40代で決断する事業承継

【譲渡企業様】・企業名⇒有限会社森田工産・業種⇒鉄骨工事・売上(M&A当時)⇒6億円・オーナー様のご年齢⇒45歳(M&A実施当時)【譲受企業様】・企業名⇒株式会社エスイー・業種⇒建設用資材の製造・販売・売上(M&A当時)⇒187億円・オーナー様のご年齢⇒–@cv_button譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由譲渡企業である有限会社森田工産(以下、「森田工産」という。)はお父様から会社を譲り受けられ

建設会社の海外進出を考える~サブコン・卸売業者も海外をめざすべき理由とは~

海外M&A
建設会社の海外進出を考える~サブコン・卸売業者も海外をめざすべき理由とは~

日本M&Aセンターでは様々な業種のクロスボーダーM&A案件をご支援していますが、とりわけ建設関連の企業からは、海外でも非常に多くの譲渡のご相談を頂いております。譲渡案件の情報は多い一方で、日系企業による海外建設会社(広くサブコン企業や建設資材卸も含む)の買収事例はそこまで多くありません。もちろん大手ゼネコンは、海外でも引き続き好調で買収事例も豊富ですが、それに続くサブコン、建材卸事業者においては、

建設業界M&A事例から読み解く土木工事業界の最新傾向と課題

業界別M&A
建設業界M&A事例から読み解く土木工事業界の最新傾向と課題

日本M&Aセンター土木工事チームの岩間です。土木工事・建設業の経営者向けのセミナーを定期開催しておりテーマは「M&A事例から読み解く土木工事業界の最新傾向と課題」となっております。本日はその中でも特に関心をいただいた内容をご紹介させていただきます。@cv_button建設業界におけるM&Aの動向建設業界のM&Aのこれまでのトレンドや流れをまとめると大まかに以下の5つの時代区分において、M&Aブーム

基礎・地盤改良工事業界のM&A動向

業界別M&A
基礎・地盤改良工事業界のM&A動向

本日は、近年M&Aが増加傾向にある基礎・地盤改良工事業界のM&A動向についてお伝えいたします。移動世帯数の減少や平均築年数の伸長によって国内の新設住宅着工戸数が減少し続けていることなど、市場環境が大きく変化しつつあります。本コラムでは、基礎・地盤改良工事業界の動向およびM&A動向について事例を交えて解説いたします。@cv_button基礎・地盤改良工事業界の動向まずは基礎・地盤改良工事業界の需要に

プラント工事業界のM&A動向

業界別M&A
プラント工事業界のM&A動向

日本国内のプラント需要の落ち込みによって、全国のプラントにて廃止や機能停止が相次いでいます。再生可能エネルギーへのシフトや脱炭素化の流れは加速しており、プラント工事業界は今後も事業環境が大きく変化していくことが予想されます。本コラムでは、プラント工事業界の動向を踏まえたうえで、プラント工事業界M&Aの特徴を捉え、業界経営者はどのような立ち回りが求められるのかを考えていきます。@cv_button#

建設業界のM&A総まとめ【2019年】

業界別M&A
建設業界のM&A総まとめ【2019年】

建設業界とは業界定義建設業法によると、建設業は「元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定められている。また、建設業界は住宅・商業施設などの建物を造る「建築」と、道路や鉄道、ダムなど、構築物の土台を造る「土木」の2分野から成り立っている。@cv_button事業特性建築業界の事業特性は、大きく分けて以下の4点である。受注生産方式入札制度多重下請け構造関係

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース