コラム

ICCサミット KYOTO 2022優勝、自身の体験から子どもの可能性を伸ばす教育を見出したSOZOWの目指すビジョンとは

広報室だより
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日本M&Aセンターではスタートアップ領域におけるM&A支援実績の増加を背景に、2018年から次世代の日本経済を牽引するスタートアップ企業を表彰する「スタートアップピッチ」を開催しています。
2021年11月の同ピッチにおいて、約2,000社の候補の中から選ばれた企業の「その後」をインタビュー。今回は、「好奇心と可能性を解き放ち、未来をSOZOWする学びの生態系をつくる」というビジョンを掲げ、オンライン習いごと事業とオルタナティブスクール事業(※1)を展開するSOZOWの代表取締役小助川 将氏にインタビュー。創業の経緯や経営で、今後の展望について、日本M&AセンターIT業界専門グループの竹葉聖が伺いました。

(※1) ヨーロッパやアメリカの哲学的思想を基盤に発展した「オルタナティブ教育」を取り入れた学校のことを「オルタナティブスクール」といいます。「オルタナティブ(alternative)」とは「もう一つの」という意味で、公立でも私立でもない「新たな選択肢の学校」として、近年注目が集まっている。


日本M&AセンターIT業界専門グループ 竹葉聖(左)SOZOW 代表取締役 小助川 将氏(右)

会社概要

会社名:SOZOW株式会社
設立:2019年6月
事業内容:子どもの好奇心と可能性を解き放つメタバース×教育事業を展開。
小学3年生〜中学3年生を対象にしたオンラインの習いごとの場「SOZOW PARK」、小学校4年生〜中学校3年生を対象にしたオンラインのフリースクール「SOZOW SCHOOL」を提供。

竹葉:2021年に開催された日本M&Aセンター30周年記念スタートアップピッチで「ESG賞」を獲得後、2022年9月の日本最大級のピッチイベント「ICCサミット KYOTO 2022カタパルト・グランプリ(※2)」での優勝、同年11月には約4.3億円の資金調達を実施するなど好調で、注目度も高まっていらっしゃいますね!改めて現在の主力事業について教えていただけますか?
(※2)日本最大級のピッチイベント。国内スタートアップの登竜門とされており、気鋭の起業家が参加するイベントとなっている。

小助川氏:ありがとうございます。当社の主力事業は2つあり、1つは、小学 3年生~中学 3 年生を対象とした 「好き!やりたい!」から未来につながる力を育むオンライン習い事「SOZOW PARK」です。子どもの好奇心に合わせて、マインクラフト、動画制作、デザイン、プログラミング、お金・経済、ビジネス・起業、SDGsなどの幅広いテーマをオンラインライブ形式で子どもたちに届けています。
もう1つは、小学校4年生〜中学校3年生を対象とし、メタバース空間を活用して個性や好奇心に会う学びの場を提供するオルタナティブスクール事業「SOZOW SCHOOL(スクール)」を展開しています。
子どもの得意を伸ばすことに徹底的にフォーカスをあて、子ども同士のアクティビティや社会人メンターとの関わりを通じてコミュニケーション能力やリーダシップ等の「非認知能力」を培うことを重視しており、「SOZOWオンライン習いごと事業」と「SOZOWスクール事業」ともに順調に契約数が伸びています。

竹葉:事業を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

小助川氏:私は新卒で経営コンサルティング会社に入社後、リクルートを経て、グリーへ転職しました。その際に家族で引っ越しをしたのですが、当時小学生だった娘が転居先の学校になじめず、「学校に行きたくない」と言い始めました。その経験が現在の事業のきっかけになっています。
具体的には、先生と面談したり学校へ訪問したりする中で、私が小学生だった30年以上前と学校の方針がほとんど変わってないことに気がつきました。教育の歴史を調べてみると、現在の学校教育制度は今から150年前、明治時代に導入された「学制」から大きく変わっていないことを認識しました。
教育制度は雇用制度(経済)と密接な関係にあります。現在の教育制度は、高度経済成長期、日本の基幹産業が製造業だった頃には、非常にマッチした教育制度でした。需要が伸び続けていた時代、大量生産・大量消費で経済が右肩上がりに伸びていくことを前提とした経済モデルのなかでは、できるだけ個性を排除し、画一的な人材育成が重視されました。
しかし、日本の基幹産業が製造業からサービス業に移り、変化のスピードが早くなった現在では、画一的な人材ではなく多様性を持った人材の育成が必要とされています。ですので、150年前からほとんど更新されていない現在の教育制度は、経済にそぐわないシステムとなっているんです。

竹葉:子どものために既存の教育制度以外の、新たな場所を作ろうとしたわけですね。子どもの数が減少傾向にある一方で、不登校の数は年々増えていますよね。

小助川氏:2021 年度の全国の小中学生は950万人と過去最少を記録していますが、同年度の不登校児童・生徒数は24万4900人と過去最高になったそうです。
実は「不登校」という言葉があるのは日本と韓国と台湾だけで、学校に行かないことは世界的に見れば必ずしもネガティブというわけではないんです。2017年に「教育機会確保法」が制定され学校の登校を強制せず、それぞれにあった学習機会を保障する動きもあります。

竹葉:子どもの不登校問題というのは社会課題となっていますよね。

小助川氏:はい。妻とも相談し、学校教育だけではなく好きなものや興味を広げていくために、娘と息子をプログラミング教室へ通わせてみることにしました。2人ともイキイキと夢中になって取り組んでいた姿がとても印象的でした。
また息子は、好きなことをとことん探求した結果、ロボットプログラミングにハマり、小学校3年生でワールドロボットオリンピック(WRO)の世界7位、翌年も8位に入賞しました。さらにソフトバンクグループの孫正義氏が私財で立ち上げた「孫正義育英財団」に選ばれ、中学1年生からシンガポールへ留学し、学生起業しています。子どもの「好き」を追求したら、これほどの才能が開花するのだと身をもって体験できました。

コロナを乗り越えた事業譲渡とスタートアップ冬の時代で好機をつかんだICC優勝

竹葉:子どもの持つ可能性に気づいたことが今につながるのですね。事業はおひとりで立ち上げたとのことですが、資本調達はどのようにされたんでしょうか。

小助川氏: 前職のLITALICO時代から副業でやっていたコンサル事業を法人化し、日本政策金融公庫の新創業融資制度(※3)を活用しました。2019年の創業時にはプロ業務委託マッチング事業とイベント事業をやっていて、イベント事業では子どもたちに3Dプリンターを使ったモノづくり体験や、プログラミングなどのデジタル体験の場を提供していました。
(※3)日本政策金融公庫が提供する融資制度。創業期のスタートアップを支援するための制度で、3000万円を限度額として無担保・無保証人で利用できる。

竹葉:現在ではオンラインの事業がメインですが、元々はリアルイベントから始まったんですね。

小助川氏:はい、2020年2月に開催されたイベントではサンシャインシティ(池袋)に会場を借り、35社が出展、1万1,000人以上の方に来場いただき大盛況でした。しかしその直後から新型コロナウイルスの報道が始まり、同年4月の緊急事態宣言でリアルイベントは完全に停止してしまったんです。

竹葉:そのようなご苦労があったんですね。先ほど仰っていた新創業融資制度はリアルイベントと人材紹介の事業での融資がおりていたかと思うのですが、オンラインに主軸を置くとなると、追加の資金はどこから調達したのでしょうか。

小助川氏:もう1つの柱としていたプロ業務委託マッチング事業を譲渡し、オンライン事業の立ち上げ資金に充てました。加えて、オンラインが日本でも普及することにかけ、シード・エンジェルラウンドで、株式で調達も実施しました。

竹葉:まさに選択と集中ですね。シリーズAの資金調達は順調だったのでしょうか?

小助川氏:シリーズAの資金調達は2022年の5月ごろから動き出したのですが、その時は世界的にもスタートップのバリュエーションが下がった「冬の時代」でした。複数のベンチャーキャピタル(VC)を回りましたが、なかなかリード投資家を獲得できず苦労しました。状況が一転したのは9月の「ICCサミット KYOTO 2022カタパルト・グランプリ」での優勝でした。オファーが殺到するようになり、追加投資も決まり本当にタイミングが良かったです。

多様なバックグラウンドをもつ人とつながり自立する教育

竹葉:オンラインでのコンテンツ作りで工夫した点を教えてください。

小助川氏:正解・不正解がない問いを考えてもらうよう意識しました。今の日本の教育は、問いに対する「正解」を詰め込んで覚えますよね。すると「不正解だったから駄目だ」と子どもは思い詰めてしまいます。実際、ビジネスの世界でも「正解」はないことのほうが多いですし。
当社の事業では「正解のない問い」を投げかけることで、子どもが安心して多様な意見を出せるように意識しました。
プログラミング、3Dデザインなどのアウトプットを子どもたちはオンライン・メタバース上でどんどん作っていきます。スクールでは、子どもの活動状況をダッシュボードで確認でき、感動される保護者の方もいます。

竹葉:現在の利用状況はいかがでしょうか。

小助川氏:習い事とスクール事業で約1,500名が利用しています。教える方はメンター・コーチと呼ばれていて、100名を超えています。副業として自分の得意なことや好きなことをテーマに子どもたちに教えてもらっています。


SOZOW PARKが提供する習い事コース(一部抜粋)

竹葉:多様なプログラムが用意されているんですね。

小助川氏:子どもたちは、好きなことを共通項として、学年や世代が違う友達と出会えます し、普段身の回りにいる大人の方とは 異なるバックグラウンドを持った大人とも接点を持つことができます。私が考える「自立」とは、ひとりで何でもできるようになることではなくて、色々な人とつながる中で自分を見つけていくことだと思っています。

竹葉:今後の展望や注力したいことについてお聞かせください。

小助川氏:これから力を入れていきたいのは、現在β版の「SOZOW SCHOOL」の正式リリース、「ボーダーのない自由な世界へ」というパーパス実現に向けた海外展開、そして現在進行している「SOZOW FES 2023 SUMMER withテレビ朝日」のような企業とのコラボ企画の推進です。
事業を通じて、子どもたちが未来に希望を持てるような社会づくりに貢献したいです。

竹葉:児童数の減少で学校の廃校も進んでいますが、オンラインだと都心と地方の教育格差なども埋められますし、多様な教育や交流の機会を得られますね。

小助川氏:先ほどお話した「SOZOW FES」のオンラインイベントは、親子は無料で参加でき、オンライン環境さえあれば地域格差や貧富の格差を飛び越えられます。今後は自治体などとコラボし拡大させていきたいですね。
日本はOECDの中でも幸福度ランキングで下位にあり、その原因のひとつに戦後の高度経済成長に築かれた資本主義や成功体験に基づいた「こうあるべき」と縛られるものが多いように感じます。今の豊かな社会は先人たちの努力もありますが、子どもを持つ親としては、自分らしく生きて幸せになって欲しいと思うものです。教育という社会的意義の高いものに携わっている以上、地域や貧富の格差を解消できるような事業も展開していきたいです。


日本M&Aセンター30周年記念ピッチで、ESG賞を獲得した小助川 将氏

インタビュアー

業種特化1部 チーフマネージャー IT業界専門グループ グループリーダー
竹葉 聖
公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、2016年に日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立上げメンバーとして7年間で1000社以上のIT企業の経営者と接触し、IT業界のM&A業務に注力している。18年には京セラコミュニケーションシステム(株)とAIベンチャーの(株)RistのM&A、21年には(株)SHIFTと(株)VISH、22年には(株)USEN-NEXTHOLDINGSと(株)バーチャルレストラン等を手掛ける。
IVS2022 LAUNCHPAD NAHA審査員。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

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