持株会社(ホールディングス)とは?種類やメリット・デメリット、事業承継への活用を解説

経営・ビジネス
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持株会社は、企業グループの戦略的な運営を支える重要な役割を果たします。近年、経済環境の変化や競争の激化に伴い、企業は持株会社を通じて資源の最適化やリスク管理を図るようになっています。本コラムでは、持株会社の基本的な概念からその利点、さらには実例を交えながら、持株会社が企業経営に与える影響について探っていきます。

この記事のポイント

  • 持株会社を通じて事業承継を行うことで、 経営権の移譲や税負担の軽減が可能となり、スムーズな経営継続が実現できる。
  • 持株会社は、純粋持株会社、事業持株会社、金融持株会社の3種類があり、効率的な経営やリスク管理を促進する役割を持つ。
  • 持株会社を通じて事業承継を行うことで、経営権の移譲や税負担の軽減が可能となり、スムーズな経営継続が実現できる。

⽬次

持株会社とは?

持株会社とは、傘下にある会社の株式を保有し、企業グループ全体の支配・統治をおもな目的とする会社を指します。持株会社を表す言葉としてホールディングス、ホールディングカンパニーがあります。

持株会社の役割はグループ内の各会社の株式を保有し、株主としてグループ全体の頂点に君臨して経営戦略や意思決定を専門に行うことです。

傘下の企業は、経営と事業が分離されて経営方針の策定や重要な経営判断などは持株会社に委譲するため、効率よく事業に専念できます。

戦後「自由で公平な市場競争を妨げる」などの理由から持株会社の設立が禁止されていましたが、市場のグローバル化にともない、組織再編を促進して効率のよい経営を進める必要性から1997年に独占禁止法が改正され、持株会社の設立が認められるようになりました。上場企業では、株式会社大和証券グループ本社が持株会社第1号となり 、現在では600社以上の上場企業が持株会社制を導入しています 。

持株会社の種類

持株会社は目的や成り立ちによって以下の3つに分けられます。

純粋持株会社

純粋持株会社は、他の企業の株式を保有することを主な目的とし、直接的な事業活動を行わない会社です。子会社の経営管理や戦略策定に特化し、資源の配分や経営方針の決定などを行います。この形態は、グループ全体のシナジーを追求する際に有効です。
国内の純粋持株会社の例としては、ソフトバンクグループ株式会社などが挙げられます。

事業持株会社

事業持株会社とは、他の企業の株式を保有しながら、自らも特定の事業を展開する企業形態です。この形態では、持株会社が複数の子会社を管理し、各子会社は特定の市場や製品に特化して運営されます。経営の一元化を図り、資源の最適配分やシナジー効果を追求することで、全体の効率を高める役割を果たします。また、異なる事業を傘下に持つことでリスクを分散し、安定した収益基盤を築くことが可能です。
国内の事業持株会社の例としては、日本電信電話株式会社などが挙げられます。

金融持株会社

金融持株会社は、銀行、保険会社、証券会社などの金融機関の株式を保有し、これらの金融事業を統括することを目的とした持株会社です。金融グループ全体のリスク管理や資本の効率的な運用を行い、各金融機関の経営戦略を調整します。特に金融業界では、規模の経済やリスクの分散が重要視されるため、金融持株会社の役割は大きなものとなります。国内の金融持株会社の例としては、ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社などが挙げられます。

持株会社制のメリット


持株会社制で運営する主なメリットは、以下の通りです。

経営・事業の効率化につながる

持株会社化すると、子会社の経営方針の策定や判断は親会社である持株会社が行います。その結果、子会社は事業に専念できるため、業務全体が効率化します。
また、親会社はオーケストラの指揮者のような役割を果たすため、グループ全体を見渡し、その時々に最適な戦略をとれるようになるでしょう。したがって、持株会社化によるシナジーが期待できます。

経営リスクを分散できる

持株会社の傘下にある各企業は、それぞれが法人格を持ち、各企業同士が独立した関係を保っています。したがって、急激な業績悪化や経営の根幹にかかわるような損害賠償など、想定外のリスクが生じた場合でも、それがグループ内の他企業に波及することはありません。このように、各グループ企業は持株会社意外と資本関係を結んでいないため、万が一の場合の経営リスクを分散できます。

組織再編がしやすくなる

傘下の会社は独立性が保たれているため、新たに買収する場合も、そのままグループ会社として迎え入れることができ、M&Aをスムーズに進められます。反対に、グループの業績が悪化し有、経営リスクが生じた際に売却の検討をしやすくなります。

株式の集約で事業承継がしやすくなる

持株会社を新設し、既存の会社の株式を持株会社へ移すことにより、事業承継の対象となる企業(既存の会社)の株式は、持株会社の資産となります。したがって、当該企業の株式が相続財産の対象から外れます。

事業承継をスムーズに行うためには、次期経営者として事業を承継する人物に、承継する会社の株式を集中させなければ安定した経営を行えません。この株式が相続財産になってしまうと、承継者に株式を集中させたことにより遺留分の問題が発生する場合があります。しかし、持株会社に株式を移しておけば、このような問題を起こすことなく事業承継を進めやすくなります。

持株会社制のデメリット

持株会社制で運営する主なデメリットは、以下の通りです。

管理コストが増加する

持株会社制では、グループ内の企業数が増えれば増えるほど管理コストが増えてしまいます。持株会社の設立や運営には、法的手続きや管理コストがかかります。特に、持株会社の運営に必要な専門的な人材を確保するためのコストが発生することがあります。

グループ企業間の連携が困難になる可能性がある

持株会社のグループ内にある企業は、それぞれの責任で独立採算制を採っており、経営方針も会社ごとに裁量を持ちます。組織の編成上、独立性が高くなり過ぎてしまうと、グループ内での連携が困難になる可能性も考えられます。

持株会社制と事業部制カンパニー制、分社制の違い


企業の組織形態は事業戦略に応じて異なります。ここでは持株会社制以外の事業部制、カンパニー制、分社制についてご紹介します。

事業部制

事業部制は、企業が大きな事業を複数の事業部に分けて管理する形態です。一般的には、製品やサービスごとに事業部門が分けられ、それぞれ独立した組織に近い運営を行い、業績の管理などを行います。 各事業部は専門的な知識やスキルを活かすことができ、市場の変化に迅速に対応しやすく、競争力を維持できます。

事業部制もカンパニー制と同様に、疑似的に各事業部門を別法人のように扱っているに過ぎないため、内部に問題が生じた場合などは企業全体に波及するリスクを抱えます。

カンパニー制

カンパニー制は、事業部門ごとに独立採算制をとることで、分社化に近い体制を疑似的に行う社内分社制度です。迅速な意思決定やカンパニー間の競争促進により全体のパフォーマンス向上が期待できます。
カンパニー制はあくまで疑似的な分社であり、それぞれが法的に独立しているわけでないため、一事業部門の損失は企業全体の損失となります。

分社制

分社制は、企業が特定の事業や部門を独立した法人として分離する形態です。分社化された企業は、独自の経営権を持ち、独立して運営されます。各事業が独立して経営されるため、柔軟な戦略や方針が可能になります。また、特定の事業に特化することで、リソースを集中させることができ、競争力を高めることができます。

持株会社を事業承継に活用する流れ

最後に持株会社を用いて事業承継を行う場合の、主な流れをご紹介します。

①後継者が持株会社を設立する

事業を引き継ぐ後継者が100%の出資者となり、持株会社を設立します。この持株会社が承継する対象会社を子会社化することで、持株会社のオーナーである後継者は、間接的に対象会社の経営権を獲得することができます。

②金融機関から融資を受ける

引き継ぐ対象会社の株式取得には多額の資金が必要になるため、金融機関等から資金調達を行います。多額の借入には、取締役会の承認、もしくは過半数の同意が必要になります。

融資の返済は、承継した株式からの配当金を原資とするため、事業会社の業績が良好であれば融資を受けやすくなります。

資金を確保することにより、後継者は円滑に事業承継を進められ、経営の安定性を保てます。

③先代経営者から株式を取得する

調達した資金で、対象会社の株式を先代であるオーナーから取得し、対象会社を子会社化します。
これにより、後継者は持株会社を通して経営権を引き継ぐことができます。また、持株会社を活用することで、相続税や贈与税、法人税の節税効果を期待できます。

終わりに

以上、持株会社の概要についてご紹介しました。持株会社制は、企業の成長と持続可能な経営を支える強力な組織形態です。今後、持株会社の活用はますます重要性を増し、特にM&Aや事業承継の場面でその効果が期待されます。

企業が持株会社を適切に活用することで、競争力を強化し、変化する市場環境に柔軟に対応していくことが求められています。これからの企業戦略において、持株会社の役割はますます増大することでしょう。

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