[M&A事例]M&Aセミナーに参加し、業界での自社の立ち位置に気づかされる。M&A決断で自社の成長を実現

株式会社高階誠心堂 代表取締役 高階 豊晴 様

譲渡企業情報

  • 社名:
    株式会社高階誠心堂(熊本県)
  • 事業内容:
    調剤薬局の経営
  • 売上高:
    約5億円
    従業員数:
    18名

※M&A実行当時の情報

 

株式会社高階誠心堂は、熊本県人吉市にて昭和7年に創業された薬局です。三代目の社長である高階豊晴様の代からは調剤事業も始められました。 2014年2月、当社がお手伝いをし、阪神調剤ホールディング株式会社と友好的M&Aを実施。 阪神調剤ホールディングは、全国295店舗(2016年8月20日現在)の調剤薬局を展開する大手調剤薬局グループの1つです。両社の相乗効果により地域の患者様へより質の高いサービスを提供できるようになり、高階様はM&A後代表者として引き続き経営にあたり、4店舗目としてドライブスルー型の調剤薬局を新規出店されました。 M&Aを決意された経緯や心境、現在の様子などを高階様にお聞きしました。

80年以上続く薬局の跡を継ぐ

創業の経緯とご自身が会社を継がれた際のことについて教えて下さい。

高階様: 昭和7年に薬剤師だった祖父が地元の総合病院を退職して、看護師だった祖母と現在の地に開局したのが始まりです。その時代に薬局は珍しく、薬局製剤やOTC医薬品の販売だけで経営が成り立っていたようです。父は、薬種商販売業の免許をとり祖父の跡を継いで、OTC医薬品と化粧品、雑貨、健康食品などを販売する薬屋(ドラッグストア)を経営し、私と弟を薬剤師にしてくれました。

父は私に「跡を継げ」とは一度も言わず「勝手にすれば」という感じでしたが、父が自由に楽しそうにしているように見えた私は、跡を継ごうと帰ってきました。楽観的な考えで継ぐことを決めた私ですから、我が家の経営は安定していると信じ込んでいました。ところが、父の友人だった税理士事務所の方と面談すると、借金があり赤字続きであることを知らされ、どうやって経営を立て直すか真剣に考えるように言われて非常にショックでした。それからは、決算書の読み方を勉強したりニューズレターを配信したりと出来ることを色々やりました。結果的には、調剤薬局を始めたおかげで「調剤バブル」にのって売上が伸びていきました。

息子・娘の自由を保障するために、M&Aで会社を手放そうと思った

M&Aをご検討されてから、ご決断するまでの経緯をお聞かせください。

高階様: 父は86歳で元気なのですが、いまだに私の事を心配しています。信用が無いのか、父子というのはそういうものなのかわかりませんが、私は年を取ってまでそんな心配をしたくありませんでした。ですから子供に跡継ぎなどと言ったことはないのですが、やはり周囲からはそういう目で見られます。周囲の刷り込みとはすごいもので、子どもたちも知らないうちにその気になってしまっている部分があるようでした。彼らの未来に自由を保障してあげるために、M&Aで会社を手放すことを選び、「もう帰ってくるところはない、自分で未来を切り拓くしかない」と話しました。“創業83年”と聞くと長い歴史があるようですが、三代とも事業のやり方は違っていました。跡を継ぐというほどの伝統ではなかったのかもしれません。

譲渡する側の気持ちになってみると、自分は会社を買う側ではないと気づいた

日本M&Aセンターとの最初の接点は、セミナーにご参加頂いたことでした。セミナーに参加された時の当時の心境は参加前と参加後では何か変化はありましたか?

高階様: セミナーに参加する前は、「ちょっと良い会社があったら譲り受けて事業拡大をしようか?」と考えていました。今思えば笑い種ですが、大真面目でそう思っていました。しかしセミナーで日本M&Aセンター渡部さんの講演を聴く中で、自分は会社を譲り受ける側ではなく、譲渡することを真剣に考えなければ生き残れない立場だということを痛感しました。当然です!自社を譲渡する側の気持ちになって考えれば、相手として売上数百億円の企業と熊本の田舎の企業のどちらを選ぶか?答えは決まっています。誰もわが社を選んでくれるはずなどありません。現に私は譲渡することを決めたとき、九州の名立たる調剤チェーンやドラッグストアの一部をご紹介いただきましたが、お断りさせていただきました。

高階誠心堂薬局 青井本店の様子

高階誠心堂薬局 青井本店の様子

会社を買いたいという人はとても多いのですが、高階様のおっしゃるとおり、譲渡企業オーナーから「選んでもらう」必要があるので、譲り受けるのは簡単なこととではありません。ある程度の株価を出すことや、社員を守っていくことは当然として、その後どのように発展させていくのかビジョンをしっかり提示できることが大切です。

他業界で進んでいる寡占化が、調剤薬局業界では起こらないと考えるのは不自然

セミナーに参加された後、実際にM&Aを検討しようと考えた理由を教えてください。

高階様: 一つは偶然ですが、渡部さんが成功例として紹介していた事例の中に私の友人の会社があり、彼から話を聞けたことによるものです。彼は私よりはるかに大きい会社を経営していましたが、「大手グループの一員として強者連合を作り、さらに会社を成長させたいから譲渡した」という話を聞いて納得しました。
もう一つは、日本M&Aセンターの担当の瀬谷さんから、これから厳しくなる調剤報酬改定のことや、予測される業界の寡占化進行について聞いたことによるものです。「ドラッグストアやコンビニ業界で進んでいる寡占化が、調剤薬局業界では起こらないと考えるのは不自然」というのは、その通りだと感じました。
それから、私の様な田舎の薬局経営者にさえも、丁寧に誠意をもって対応してもらったからでしょうか。
ただ、相談した際には、譲渡すると決めていたわけではありません。まずは私が30年かけて築いてきた会社の企業価値をみるために、企業評価をしてもらうだけで終わってもいいとは思っていました。

ここからは、M&Aを実際に進めたときの話についてお伺い致します。M&Aのお相手候補についてどのようなイメージをお持ちでしたか?またどのような条件をご希望でしたか?

高階様: 売却するなら絶対に大手企業と心に決めていました。ドラッグストアで起きている業界再編と同様に、中堅どころの企業がこれから一番きつくなるのではないでしょうか?究極の目的は社員の未来を守ることですから、経営が安定していることが絶対条件でした。もし大手で相手が見つからないのであれば、私がこのまま小さいなりに経営していっても、やれないことはないと思っていました。

全国からこんなに多くの会社が自分の会社に興味を持ってくれた

当社ではお相手を探す前に、譲渡企業の内容を正確に把握し、お相手候補企業に魅力的な提案を行うために企業評価、案件化を行います。企業評価の結果をご覧になって、どのようにお感じになりましたか?

高階様: 金額を聞いた時はショックでしたね。期待していたよりかなり低かったと記憶しています。それを聞いたあとの帰り道には、「この話はこれで終わりだな」と思い、家内にもそう話しました。しかし後日、日本M&Aセンターは相手候補先300社をリストアップし、さらにその中から厳選した20社を提案してくれました。全国からこんなに多くの会社が自分の会社に興味を持ってくれたことを嬉しく感じました。自分がこれまでやってきたことが認められたと思い、それで正式にM&Aの検討に入ることを決めました。

業界再編の波に乗れば、譲渡価額は大きく変わる

最終候補としてあがった阪神調剤ホールディングについて、面談前はどのような印象をお持ちでしたでしょうか?

高階様: 調べるとかなりの大手企業で、しかも良い金額を提示してくださっていましたので、「一体目的は何なのだろう?」とかえって疑ったりもしました。しかしそれも、瀬谷さんによれば「調剤薬局業界は業界再編のまっただ中で、業界再編のベストタイミングであれば、単純な株価の算定額からは考えられない条件が提示されることも大いにありうる」のだそうです。それで納得しました。

緊張したトップ面談。専務の人柄の良さに、うまくやっていけると直感

トップ面談の印象はいかがでしたか?

高階様: 阪神調剤ホールディングとは、日本M&Aセンターの東京本社の一室で初めてお会いしたのですが、一人で待っている間、自分の心臓の鼓動が早くなっていて、非常に緊張している自分に驚きました。阪神調剤ホールディングの岩崎裕昭専務にお会いし、対応に人柄の良さが表れており、「この方となら、うまくやっていける」と感じました。私は、「買われる側は見下された対応をされても仕方がない」と思っていましたが、杞憂でした。その後本社にも伺いましたが、会長・社長、取締役の皆様、社員の皆様の人柄の素晴らしさには驚きました。大きな会社だからドライだというイメージは見事に覆されました。

お互いがM&Aに前向きになると、金額などの条件を詰めていきます。大筋合意すると「基本合意」を締結し、買収監査を行います。その買収監査の様子はいかがでしたか?

高階様: 一番大変だったのが、この「買収監査」でした。両親にも従業員にも内緒でしたし、大量の書類を集めることは、とても一人ではできません。税理士にお願いして、税務署に出す書類ということで集めました。ダンボールで約30箱。これを全て見るはずはないと思っていたのですが、当日は公認会計士が5名ほど来て、なんとすべての資料について質問されました。周囲に隠して行動するのはストレスが溜まる上、公認会計士からの細かい質問もあって心が折れそうになりましたが、瀬谷さんはどんな小さなことでも話を聞いて真摯に対応してくれたので、どうにか乗り切ることができました。

監査が終わり、M&Aは最終契約へ向けて進んでいきます。この時期はどんなことを考えられましたか?

高階様: あれよあれよという感じですね。買収監査が12月15日、最終契約日が25日というタイトな予定で、私は考え直す暇もありませんでした。そんな中ですが、懇意にしている経営コンサルタントに相談もしました。「高階さんはM&A後の将来をどのように考えられていますか?」と質問されて、私の考えを説明すると「それが出来なかったらどうします?」と聞き返されました。「それはそれで仕方ないと思う。私の思い通りにならないこともある」と答えると、「その考え方なら大丈夫でしょう。会社を譲渡すれば、今後高階さんの思い通りにはならないことが出てくる可能性もありますが、失敗の可能性はない決断だと思います」と言われました。良い言葉だと思いませんか?経営をするということは、常に決断の連続です。失敗の可能性のない決断というのはほとんどありません。「失敗にはならない」と言われて私の覚悟が決まったような気がします。
本来、最終契約日と引き渡し日は同じなのでしょうが、私の場合、最終契約は12月25日、引き渡しは2月ということで、あまりピンと来ていなかったのか、現実感のないまま最終契約書にハンコを押しました。

教えてもらった通りの方法で開示すると、周囲は好意的に受け取ってくれた

従業員の方・ドクターへの“M&Aの開示”を行いますが、その際の反応はいかがでしたか?

高階様: 1月から、引き渡しの2月までの1カ月の間に、家族への説明、従業員への説明、処方元の医師への説明と予定はびっしりでした。最も大変な1カ月で、家内のサポートなくしては乗り切れませんでした。日本M&Aセンターの瀬谷さんが、家族、従業員、処方元の医師への説明方法を一つ一つ教えてくれたのですが、言われたとおりにやってみると、皆さんから好意的に受け取っていただくことに成功しました。見事なほどでした。

毎月の本社会議はワクワクする時間。M&Aをしたことで、新規出店も実現

M&A後の話をお聞かせ下さい。 M&Aの成約から後も代表者として継続経営されていらっしゃいますが、業務をする上でのメリットやデメリットはどう感じていますか?

高階様: M&A後は週休二日にして、少しは人間らしい生活をしようと考えていたのですが、全く変わらない生活をしています。処方元の医師も何もなかったようにお付き合いさせていただいています。阪神調剤ホールディングの皆さんからは、非常によくしてもらっていますし、社長としての自由度も高いと思っています。薬剤師数に余裕があるためか新人教育にかける思いが素晴らしく、我々で太刀打ち出来ることではありませんでした。やはり大手企業は全然違いますね。

毎月一回は、芦屋の本社での“社長会”という会議に参加しています。阪神調剤ホールディングの子会社の社長として経営を続けている数名の社長と、ホールディングの取締役とで行う報告会を兼ねた会議ですが、将来に向けたビジョンのスケールの大きさに、ワクワクし胸が躍ります。
阪神調剤ホールディングからの後押しもあり、新規に4店舗目を出店することもできました。これは自分だけでは踏み切れなかった投資ですので、良かったと思います。

阪神調剤ホールディングのサポートもあり、4店舗目を出店することができました

阪神調剤ホールディングのサポートもあり、4店舗目を出店することができました

仲介会社によって対応は全く違う。瀬谷さんの心配りと実行力に感謝している

M&Aセンターに依頼して良かったと思ったこと、悪かったと思うこと、またM&A全体を通してのご感想をお聞かせください。

高階様: 実は地域の薬剤師会の有志で経営していた調剤薬局のM&Aを経験したことがあるのですが、仲介会社によって対応が全く違うんですね。日本M&Aセンターの担当の瀬谷さんの、小さなところまで心配りのある対応には、感謝しています。私が気付かないことまで、細かくケアしていただきました。初めて瀬谷さんとお会いしたときが2013年の6月で、「12月ごろには最終契約の予定です」と言われて、「そんな簡単にいくわけがない」とタカをくくっていましたが、本当にその通りになりました。日本M&Aセンターの規模、人材によるものだと感じました。

2014年2月に引き渡しが終わり、口座にお金が振り込まれた通帳を家内とみた時に、初めて実感がわいてきました。今は、毎月の試算表がみるみる良くなっていくので、肩の荷が下りたような気持ちです。今回のM&Aを振り返ってみて、悪かったことは特にありません。もしなにか不満などがあれば、日本M&Aセンターのセミナー講師を引受けてはいないと思います。瀬谷さんへの、ちょっとした恩返しと思ってお引き受けしています。

M&Aとは、売る側と買う側に「利益相反が有る」と考えがちですが、私の場合はそれを感じる場面はありませんでした。いつも阪神調剤ホールディングの会議では「お互い協力して、win-winの関係を作っていきましょう」と言われます。これは阪神調剤ホールディングだからこそなのかもしれませんが、譲渡した側としては喜ばしいことです。

当社のセミナーで譲渡体験を講演いただきました

当社のセミナーで譲渡体験を講演いただきました

自分の会社の価値だけでもまずは知るべき

オーナー経営者の方へのアドバイスをお願いします。

高階様: 今、振り返るとM&Aをして本当に良かったなと感じています。経営面では、順調に新規出店ができ、個人としても、いつでも辞められる体制はでき安心して経営しています。社員にとっても、安心して働ける職場になったと感じています。日本M&Aセンターのセミナーで講師を何度かしていますが、その講演を聞いた調剤薬局を経営する友人が、同じく阪神調剤ホールディングとM&Aをする、という決断をしました。私の決断は間違っていなかったのだと感じます。

私は、30年かけて築いてきた会社の企業価値をみるために、企業評価をしてもらうだけで終わってもいいとは思って企業評価を依頼致しました。是非、譲り受けしてどんどん伸ばしてみたいという方も、譲渡されたいという方も、いったい自分の会社がどのくらいの価値があるのか一度「株価を評価」して頂くと良いと思います。

どんな業界でも、上位3社から5社のシェアが全体の60%~70%を超えるという方向に動いているのではないでしょうか。調剤薬局の様な単純業務の寡占化は益々進むと考えています。早晩、M&A市場でも、現在の売り手市場は終焉を迎え、否が応でも売却しなければならない状況の調剤薬局が増える、買い手市場に変わっていくと思っています。早くから会社の将来を考えておくにこしたことはありません。

M&A成功事例:株式会社高階誠心堂 代表取締役 高階 豊晴 様
M&A実行年月
2014年2月
日本M&Aセンター担当者コメント

日本M&Aセンターでは、M&Aの仲介に当たり譲渡企業担当者・譲受企業担当者・サポートする専門家(会計・法律・税務面)などで構成される3~5名のプロジェクト体制で、お客様のサポートを行っています。ご相談からお相手探し、スキーム構築、最終契約まで、すべての方のメリットをかんがみ、効果創出のための最大公約数を見つけ出す作業を行います。

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