「何も変えない」という条件で会社の安定した将来を手に入れたM&A
中村弘・眞理子ご夫妻。中村工芸のショールームにて

中村弘・眞理子ご夫妻。中村工芸のショールームにて

※M&A実行当時

譲渡企業

中村工芸株式会社

  • 所在地:
    大阪府東大阪市
  • 業務内容:
    特注家具の製造販売
  • 売上高:
    約2.6億円※
  • 従業員数:
    18名※

譲受け企業

株式会社リープテック

  • 所在地:大阪府大阪市
  • 業務内容:
    家具・建具卸売業
  • 売上高:
    約15億円※
  • 社員数:
    27名※
 

父親が創業し苦労して育ててきた会社を受け継ぎ、創業者の思いはそのままに時代に合わせて大きく事業を発展させてきた中村弘・眞理子ご夫妻。後継者問題に直面し、悩んだ末にM&Aを決断した際の譲渡条件は、「何も変えない」という事でした。この条件提示の背景にあった思いは、先代から受け継いだ大切な会社を、価値観や社風も含めて次代に受け継いでいかなければいけないという強い使命感。現在も経営の舵を取る中村ご夫妻に、ご決断の経緯と現在の心境を伺いました。

父が築いた確かな技術力を生かして
デザイン性の高い家具へとブランディングを図る

——初めに創業の経緯をお聞かせください。

中村ご夫妻: 父親が創業しました。酒井椅子という会社で修業したのち、1951年、38歳のときに結婚を機に中村椅子として独立したそうです。その後、1964年に中村工芸株式会社を設立しました。
私は大学卒業後、大手自動車販売会社に勤めていました。とにかく厳しい会社で、3週間休みなしもざら、結果を出さなければ意見も言えないような環境でした。随分と鍛えられましたが、3年ほどたったある日、父から連絡が入り、「戻ってこい」と……。そこで、26歳で家業を継ぐために中村工芸に入社しました。従業員からのスタートで、最初は営業として福井営業所に配属されました。
営業で取引先を訪ねる日々の中、私はある疑問を持ちます。それは、取引先がどこもご夫婦で経営しているような小さな家具店ばかりだったということ。父に、なぜうちは大型家具店と取引をしないのか尋ねると、「なら、お前が開拓してこい」と言われてしまいました。私、飛び込み営業をひたすらしましてね。兵庫から和歌山まで訪ね歩きました。その甲斐あって、売り上げは順調に伸びていきました。

——貴社の製品は先代から築いてきた確かな品質と高いデザイン性で、空港や高級分譲マンションのラウンジなどラグジュアリーな場所で採用されているほか、著名人にもファンが多いそうですね。

中村ご夫妻: ありがとうございます。1998年に社長に就任したあとは、「これからは家具店の時代じゃない」と、インテリアショップへと業態を変え、商業施設やマンションのモデルハウス向け商品に力を注いでいきました。中国などから安価な家具が入ってきていた時代です。差別化を図ろうと「Fiotto(フィオット)」というブランドを立ち上げ、デザイン性の高い高級家具カタログを作りました。これがニッチな市場のニーズをとらえ、爆発的にヒットしました。会社も有名になって、「御社で働きたい!」とデザイン学校の学生さんが電話をしてくるまでになりました。
大きな試練は先代である父が亡くなった翌年に起きたリーマン・ショックです。売り上げが低迷して、大幅な赤字が続きました。しかし、従業員の必死の営業と製造現場の努力で何とか持ちこたえ、業績を回復することができました。

一生ものの一品として愛用できる品質を保つため、張り地の断裁や縫製、ボタン絞りなど重要工程は職人の手仕事にこだわる

一生ものの一品として愛用できる品質を保つため、張り地の断裁や縫製、ボタン絞りなど重要工程は職人の手仕事にこだわる

自分たちが判断を見誤るわけにはいかない
M&Aは会社を乗っ取られるんじゃないかと思っていた

——事業承継についてはどんなお考えをお持ちでしたか。

中村ご夫妻: 後継者については課題を抱えていました。子供が3人いましたが、どの子もインテリアにあまり関心がありませんでした。親としても子どもの人生を優先してやりたいと思っていましたので、後継者問題はずっと抱えていました。ただ、考え始めた当時はまだ50代後半だったので、それほど切迫してはいませんでした。

——中村社長が弊社にご相談にこられた時は61歳でした。それまで、事業承継に関する情報収集はどのようにされていたのですか。

中村ご夫妻: 主にネットや、懇意にしている帝国データバンクの方から情報をいただいていました。M&Aに関してもセミナーに足を運んだこともありましたが、「うちには合わないかな」「M&Aは大丈夫だろうか」と不安な気持ちを持っていました。
実際に紹介を受けたこともあります。東京のM&A仲介会社から「御社とお話がしたいという会社が2社ある」と連絡をいただいたときには、お相手の1社が大手不動産業の会社でした。大手の傘下に入ったあとはどうなるのかと尋ねると、「まず相手先から執行役員が入ってきて、従業員がやめたらその都度、相手の会社から従業員が派遣されてきます」というのです。従業員との良好な関係をかき乱されるのではと感じました。ほかにも銀行から話をいただきましたが、いずれも不安が先行して話を進められませんでした。

——M&Aに対してどんなイメージをお持ちでしたか。

中村ご夫妻: 利用されるだけで会社を乗っ取られるんじゃないかと思っていました。先代が頑張ってここまで大きくした会社ですから、自分たちが判断を見誤るわけにはいきません。そして何より、会社を信じてついてきてくれている、頑張ってくれている従業員を裏切ることはできないという思いが強かったのです。

「この人に託したら大丈夫」
担当営業のきめ細かな対応がM&A決断の決め手に

——そうした中で、日本M&Aセンターを選んでいただいた理由は何でしょうか。

中村ご夫妻: 担当コンサルタントの縄田さんの存在が大きかったですね。いつもきめ細かく丁寧な対応で、何度も足を運んでくださったので、徐々に心が動かされました。ちょっと困った事が起きても、冷静な判断で的確に対応してくれ、これまでたくさんの案件を担当してきたことが伝わってきて、任せて安心だと思うようになりました。
縄田さんとお話をする中で、M&Aに対する意識も徐々に変わり、自社だけで変化の多い世の中に対応しながら従業員を守っていくより、どこか大きな船に引っ張ってもらい、協力しながら荒波を超えていくことが必要じゃないかと思うようになったんです。

——2020年9月に弊社と提携仲介契約を結び、実際にお相手探しが始まります。譲渡の条件として、どんな希望を出されましたか。

中村ご夫妻: 中村ご夫妻:出した条件は4つです。①従業員の継続雇用、②従業員への退職金制度の継続、③現商号の継続使用、④社長の連帯保証の解除です。これに加えて、私たちの役職と勤務の継続を希望しました。つまり、自社の体制は何も変えない、ということです。

——どんな想いで「何も変えない」という希望を出されたのですか。

中村ご夫妻: 中村工芸がこれまで大事にしてきた技術力、社風を大事にしたかったんです。そして何より従業員を不安にさせないためでした。

——通常、お相手探し(マッチング)には半年から1年ほどかかるのですが、約3か月で3社から手が挙がりました。そのうち2社とトップ面談をしていただき、1社が今回のお相手となったリープテック社でした。決め手はどこでしたか。

中村ご夫妻: リープテックさんに決めた理由は、第一印象が非常に良かったからです。会社を熱心に見学してくださって、特に工場を案内した際には工場長にたくさん質問をされていました。同じ製造業ですが取り扱うものが違うので、技術面での摩擦がないというのも良かったです。
また、リープテックの宮崎祐一社長は従業員さんをとても大事にされていて、社長になってから誰も退職していないというところも安心できました。

調印式での中村ご夫妻(前列右と中央)。後列右がご夫妻を支えた担当コンサルタントの縄田。前列左はリープテックの宮崎祐一社長

調印式での中村ご夫妻(前列右と中央)。後列右がご夫妻を支えた担当コンサルタントの縄田。前列左はリープテックの宮崎祐一社長

相談相手がいるという安心感
M&A後、会社の日常は変わらないがシナジーも

——お話は順調に進んでトップ面談から約2か月でM&Aが成立しました。従業員、取引先の方へはどのように発表をされましたか。

中村ご夫妻: 最終契約を締結し、決済を行ったその日の内に宮崎社長が当社に来てくださって、全従業員に挨拶をしてくださりスムーズに発表できました。工場の現場からは「今後どうなるのか」といった不安の声も上がりましたが、その後も朝礼の場などで丁寧に説明をして、できるだけ不安を取り除くように努めたことで、従業員も理解してくれました。

——現在の中村ご夫妻のお気持ち、会社の状況はいかがですか。

中村ご夫妻: 条件が条件でしたから、会社自体はこれまで通りの日常です。ただ、私たちの気持ちとしては大きな船に乗った気分で、肩の荷が降りて大分気が楽になりました。何かあった時に相談できる相手がいるという安心感もあります。
仕事面ではすでにシナジー効果が生まれています。リープテックさんから別注商品や現場張替えの仕事を受注してすでに納品しました。また、月初めの定例会議には営業従業員の方が参加してくれ、当社の営業と情報交換をしながらネットワークを活かした戦略を一緒に考えたりしています。

——最後に、ご自身の体験を踏まえて、譲渡をお考えの方へメッセージをお願いいたします。

中村ご夫妻: いい会社に巡り合えるかは運しだいです。だからこそ、まずは一度会ってみることが大事だと思います。また、話を進める時には互いに歩み寄ることも重要です。今回は、宮崎社長が思いやりのあるいい方だったということをはじめ、すべてにおいて非常に幸運だったと思います。こうした機会を得た事に心から感謝しています。

<日本M&Aセンター仲介担当者より>

戦略統括事業部 ダイレクトマーケティング部 上席課長 縄田 桂介 (中村工芸株式会社様担当)

戦略統括事業部 ダイレクトマーケティング部 上席課長 縄田 桂介
(中村工芸株式会社様担当)

M&Aと聞くと、社長も役員もガラッと変わって違う会社になってしまうイメージを持ってる方も少なくありませんが、中小企業のM&Aは人が命。社員や関係者がいかに混乱せずにスムーズなスタートを切れるかを慎重に検討して最適な方法をアドバイスするのも我々アドバイザーの重要な役目です。会社名も社長、役員もそのままで、いい所は残しつつ、営業面ですぐにシナジーが出せたという、先の見えない時代に相応しいパートナー戦略としてのM&Aだったと思います。両社の益々の発展をお祈りしています。

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