[M&A事例]最善の選択をするために事業承継の選択肢は同時進行で準備するべき

株式会社秦商事 代表取締役社長 秦 治 様

譲受企業情報

  • 社名:
    株式会社秦商事(徳島県)
  • 事業内容:
    金属材料等卸売業
  • 従業員数:
    60名

※M&A実行当時の情報

 

株式会社秦商事は、2016年、愛媛県松山市の水道資材・住宅設備機器卸売業を営むタケダをM&Aで譲り受けられました。代表取締役社長の秦治様に、M&Aを実行された経緯や得られた効果についてお伺いしました。

左から 取締役 秦 千恵、代表取締役社長 秦 治 様、秦商事 代表取締役会長 秦 幸助 様

左から 取締役 秦 千恵、代表取締役社長 秦 治 様、秦商事 代表取締役会長 秦 幸助 様

四国トップクラスノ品揃えで、顧客のニーズに柔軟に応える営業物流体制を構築。現会長が早くから自社の後継者不在問題を意識し、良好な業績を保つ。

M&A後はグループとしての一体感を意識

日本M&Aセンター(以下MA)小森: M&Aを実施したきっかけは何でしょうか。

秦幸助様: お客様からの強い要望もあり、四国で最もマーケットの大きい愛媛県、特に松山市に営業拠点を置くことは当社にとって長年の経営課題の一つでした。今回、タケダ株式会社を譲り受けることで、その課題を解決できました。実はタイミングとしては高松支店の新築という大型投資の直後で、決して良いタイミングとは言えませんでした。しかし、この機会を逃すと愛媛県に拠点を設けるチャンスを逃す「買わないリスク」も検討したうえで、当時専務の娘婿(現社長)とともに買収する意向を固めました。

MA小森: M&A後の統合(PMI)はどのように取り組まれましたか。

秦治様: まず、最初に「人の交流」に取り組みました。徳島本社と高松支店の2拠点間でも交流は進めていましたが、松山を加えた3拠点になったことを機に、より意識して交流を促進していきました。まずはお互いを知ることから始め、拠点間プロジェクトや研修を行うことで、実務レベルでグループとしての一体感が生まれるようになってきています。秦商事とタケダは別々の会社でしたので、仕事のプロセスが違うことがたくさんあります。秦商事のプロセスにあわせるのではなく、実務担当者同士が頻繁に話をして、タケダの良いところを取り入れながら、プロセスの統合を図っていきました。
また、両社の垣根を取り払うために雇用条件を統一しました。結果としてタケダの従業員は以前より待遇が良くなりました。人件費は上昇しましたが、グループとしての「一体感」を重視すべきと考えました。また、タケダは後継者問題があったことから新たな投資が控えられていましたが、車両の更新、IT機器の導入、新倉庫の建築など設備投資をして、働く環境や業務効率の改善を積極的に進めました。
当初はタケダの社員も不安だったと思いますが、こういった取り組みにより安心して日々の仕事に取り組んでくれています。M&A時に秦商事にいた社員も、タケダにいた社員も、多くの人が一緒になってまだ2年しか経っていないのに、もっと前から一緒に働いていたような気がすると言ってくれますし、私自身もそう感じるので不思議な感覚です。

日本M&Aセンター 小森

日本M&Aセンター 小森

社長として会社を背負う「覚悟」を決めた

MA小森: M&Aと同時に秦社長は先代の娘婿としてグループの経営を引き継ぐことになりました。経営者として会社を担う立場になることに不安はなかったのでしょうか。

秦治様: 私の周りには娘婿が会社を継いだケースが多く、自分が稀なケースとは感じていません。前職時代も責任をもって仕事をしていましたが、社長ですので、責任はより重いと感じています。サラリーマンの方が楽と言われる方もいます。実際に前職の後輩に「先輩のように経営者という責任を負うのは自分には無理です」と言われたこともありました。けれども、妻と結婚したいという気持ちが強かったので、前職を辞めて経営者になる覚悟を決めました。
前職では転勤族で海外も含めて色々な環境で仕事をしてきたので、不思議と新しい仕事についての不安はありませんでした。大きな組織でしたので、初めての場所で初めて会う人と仕事をすることも良くありましたし、海外現地法人の外国人に動いてもらえるよう話をするということも多かったです。また、技術職として品質保証の仕事をしていたので、品質問題への対応も多く経験しました。問題がわかった時点での速やかな処置や、同じことが再発しないよう問題を深く掘り下げて解決していくことなど、現在の仕事でも役立っています。

秦千恵様: 主人とは会社の同期で昔からプライベートの話だけでなく仕事の話もよくしていました。仕事に対する考え方や姿勢は共感できると感じていました。ただ実家の会社を継ぐということは全く別の人生の選択となりますので、本当に大きな決断をしてくれたと思います。主人にも、反対することなく背中を押してくれた主人の両親にも感謝しています。

好調な財務内容を保てば売ることもできる

MA小森: 新たな親族(娘婿)を迎え入れ、経営の変化はありましたか。

秦幸助様: 私が社長の時代は各々が独立して仕事していましたが、それでは限界がきます。今の社長が入社してからはうまく組織営業に切り替えることができて、感謝しております。創業者の想いでもある、社員を大事にして社員が幸せを感じることで会社が成り立つ「大家族主義」という創業の精神を現況に合った形でうまく引き継いでくれています。2016年には創業70周年を迎えることができましたし、自分より優秀な人材が後継ぎになってくれてこれほど嬉しいことはありません。
後継者が決まったことで積極的な経営や今回のようなM&Aを実行することができましたが、決まっていない時点では自社をM&Aにより売却することもイメージとしては持っていました。何より会社が継続していくことが一番重要ですからね。したがって良い財務内容を保つようにしていたわけですが、そのおかげで社長には財務面での負担をかけずに済みました。

MA小森: これからのグループ経営の抱負をお聞かせください。

秦治様: M&Aによりグループ企業という箱はうまく組み立てることができましたが、箱の中身を充実させていくには「人材の育成」が必要です。ある方から人は育てるのではなく育つものだと教えて頂きました。私も含めて全員が育つことで、ボトムラインを上げながら、成長していきたいと考えています。人の育ちには時間がかかります。焦ることなく、目の前の課題をひとつずつ丁寧にクリアすることで、組織として一歩一歩、着実に成長してきたいと思います。

広報誌「next」 vol.10
next vol.10

M&A成功インタビューは、
日本M&Aセンター広報誌「next vol.10」にも掲載されています。

広報誌「next」バックナンバー

M&A実行年月
2015年12月31日
日本M&Aセンター担当者コメント

小森 健太郎

小森 健太郎
小森 健太郎

秦商事様自身もM&Aをご検討された経験から、譲渡される方のお気持ちを良く理解していただいておりました。タケダ様が従業員のことを心配されていたので、M&A後のイメージが具体的に出来るようにと事前に就業規則や評価制度の資料を見せるなどの配慮をされていました。M&A後も「一緒に成長していく」という意志のもと、積極的に様々なことに取り組んでいらっしゃるので、仲介者として嬉しく思っております。

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